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自宅でゲームや楽器の演奏を楽しんだり、仕事でWEB会議などを行ったりするなど、周辺からの音や音漏れが気になるという方は多いのではないでしょうか。周囲の騒音を遮断して集中できる環境づくりとして、自宅に“防音室”の設置を検討してみるのもよいかもしれません。
今回は、目的に合わせた防音室の計画手順や、おすすめの防音対策方法について詳しくご紹介します。
部屋を「防音室」にしたい!

(※)写真のオトピタは2025年6月生産中止予定です。後継品は2025年6月発売予定のサウンドフィーユ・サウンドブランチをご検討ください。
近年、自宅の一室を防音室にしたいというニーズが増えているようです。その理由には、在宅勤務が普及したこと、家での時間を楽しむ人が多くなったことなどがあげられるでしょう。自宅でも周囲の騒音を遮断して集中できる環境が必要とされるため、防音室に興味を持つ方が増えているのではないかとみられています。
また、自宅で楽器演奏を楽しみたい人や動画配信をする方にとっても、音漏れを防ぐ対策は必要です。さらに、家族間で勤務時間やライフスタイルが異なる場合、例えばお子様のお友だちが遊びに来てはしゃいでいても気にせず在宅勤務ができる部屋を確保したい場合などにも、防音室は役立つでしょう。
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2025.03.19
防音室の目的を整理する

(※)写真のオトピタは2025年6月生産中止予定です。後継品は2025年6月発売予定のサウンドフィーユ・サウンドブランチをご検討ください。
防音室を作る計画を立てる際には、まず目的を整理しましょう。実際の防音室の使い方を想定しておくと、計画がスムーズにいきます。
楽器
楽器演奏用としての防音室を計画する際は、音漏れ対策と同時に室内での音の響きも考慮しましょう。
室内の音の響きを調整し、残響時間を適切に保つ吸音パネルを広さに合わせて適切に配置すると、快適な演奏環境をつくることができます。
また、ピアノは比較的大きな音が出るため壁や床、そして天井にも吸音・遮音材を設置しましょう。さらに音漏れさせたくない場合は、防音ドアや二重窓の導入も検討するとよいかもしれません。
近隣への配慮だけでなく、演奏しやすい音響空間を実現することで、より理想的な防音室が完成します。
ゲーム
ゲームのための防音室では、音漏れ対策に加えて没入感を高められる設計にできるかがポイントです。オンライン対戦ゲームではヘッドセットの使用が一般的ですが、スピーカーを使用してプレイを楽しみたい場合は壁やドアの遮音性を強化しましょう。
また、エコーや残響を抑えることで、ゲームの音がクリアに聴こえる環境が整います。部屋で長時間過ごす場合には通気性や室温管理も考慮し、防音と快適性のバランスを取るのも重要です。
映画・音楽鑑賞
映画や音楽など、鑑賞用の防音室は、臨場感の再現にこだわって音響の質を高めてみましょう。低音は響きやすく、その低音によって伝わる振動を抑えるためには壁や床の防振対策が必要になります。映画館のような臨場感を得るには、スピーカーの配置や吸音パネルの設置、外部の光を遮断して集中できる建具や内装の選択と、外部の騒音を遮断しつつ室内の音をクリアに響かせる音響設備の導入が必要です。できれば部屋のデザインにもこだわって、リラックスできる空間をつくってみてはいかがでしょうか。照明の調光機能をプラスすると、落ち着いた雰囲気を演出できます。
防音レベルを知る

(※)写真のオトピタは2025年6月生産中止予定です。後継品は2025年6月発売予定のサウンドフィーユ・サウンドブランチをご検討ください。
防音室の計画には、防音レベルの基準について知っておくことが必要です。2つの基準“遮音等級”と“グレード”について解説します。
遮音等級|(一社)日本建築学会
遮音等級とは、日本建築学会によって定められている建築基準の1つです。音の遮断性能は“D値(遮音等級)”で表され、一般的にはD-30~65の範囲で評価されます。例えばピアノの音を小さく聞こえるレベルにするには、D-50以上の遮音設計が必要です。
防音室を設計する際は目的に応じた適切な遮音等級を選び、壁材や窓の構造、ドアの気密性を考慮して計画しましょう。
参考:日本建築学会による建物・室用途別性能基準(建築物の遮音性能基準と設計指針)[第二版]日本建築学会編
グレード|各メーカーで設定
一方、“防音グレード”は、「どのくらい音を遮れるのか」という、メーカーごとに設定されている性能のことです。グレードはメーカーごとに異なるので、それぞれの仕様を比較し、目的に合った防音材や施工方法を選んで最適な防音環境を実現しましょう。
DAIKENでは、独自の基準で「スタンダード防音★★」(遮音性能目安40dB)、「プレミアム防音★★★」(遮音性能目安50dB)といったレベルを設けています。さらに吸音性能についても目的に合った2種類の音響タイプを用意しています。
楽器演奏やホームシアター用途なら、できるだけ高いグレードを選ぶと安心です。

ピアノ練習室ならどんな建材が必要?

具体的な防音対策として、プロの方のピアノ練習室におすすめしたいDAIKEN「PLAN04 ピアノ練習室(プロの方)」をご紹介します。
PLAN04は演奏音をしっかりと聴き分けられる本格的な楽器用の防音室で、グレードは「プレミアム防音★★★」と、室内の反射音をしっかり吸音する設備を整えたプランです。PLAN04には、次の使用材料例が想定されています。
天井
DAIKENの『オトテン ブロックシュガー』はタイル張りのようなポップでカジュアルな表情を持つ天井材です。高吸音タイプの『オトテン 19H』を組み合わせて最適な音響に調整します。
下地の空気層には遮音・吸音性に優れた『吸音ウール』「遮音パネル 12.5」などを使用します。
壁構成①
壁には、布クロス仕上げ専用の吸音・遮音下地材『オトカベS-3』を、さらにその内側には吸音・遮音性のある『吸音ウール』「遮音パネル 12.5」などを組み合わせます。
壁構成②(一部)
壁の一部には、インテリア性にすぐれた音響調整用壁材『オトカベL80』と、オトカベ専用の『オトカベボーダー』を組み合わせることで美しい壁面に仕上げるとともに、音のバランスを整えます。
床
床には、防音だけでなく振動対策も考慮した建材が必要です。アップライトピアノやグランドピアノは重量があるので、演奏時の振動が床を通じて伝わらないよう、防振性能の高い素材を選びましょう。フローリングの下に敷き込むだけで衝撃音を和らげる床防音用下地材『遮音マット S18』『吸音ウール』と合わせて音の伝わりをより防ぎます。
換気扇
防音室は密閉性が高くなるため、適切な換気が欠かせません。
「PLAN04」では大風量・低騒音設計の天井埋込タイプの防音換気システム『防音ダクト換気扇 32C型』を使用します。換気ダクトに防音材を使用したり、空気の流れを工夫したりすることで、換気効率を上げつつ静音性の確保も容易です。
防音室の設置でよくある疑問

防音室をつくる際、やはり気になるのは「費用はどのくらい?」「照明を付けると、その部分から音漏れしてしまうのでは?」などではないでしょうか。そんな防音室の気になる疑問について解説します。
値段はどの程度かかる?

防音室の設置費用は、部屋の広さや防音レベル、使用する建材によって異なります。例えば前述した「PLAN04 ピアノ練習室(プロの方)」の場合、木造8畳で約250万円です(※)。
(※)材料費は大建工業の防音建材のみの価格。価格はメーカー希望小売価格で消費税、施工費は含まれません。
簡易的な防音対策なら数万円程度の対策でも可能ですが、二重窓や防音ドアなども使用した本格的な防音室を設置したいとなると、数十万~数百万円の費用がかかるでしょう。
施工方法や目的に応じた適切なプランを選び、予算を検討しながら計画を立てましょう。
天井埋込照明のダウンライトは付けられる?
ダウンライトは天井埋込照明なので、穴開きの部分が音漏れの原因になることがあります。防音を重視するなら、直付けタイプがおすすめです。最近はダウンライトと同じくらいコンパクトでバリエーション豊富な“ダウンシーリング”という照明器具もあるので、ダウンライトの代替品として取り入れてみてはいかがでしょうか。
また、照射角度を自由に調整できるスポットライトもおすすめです。天井に穴を開けずに設置できるので、防音室に向いています。防音機能をキープしつつ、おしゃれな照明にこだわりたい場合は、ぜひ検討してみてください。
まとめ
防音室を設置することで、生活の幅は大きく広がります。周囲を気にせずにゲームや楽器演奏などを楽しむだけでなく、在宅勤務の集中力向上にもつながります。
簡易的な防音室はもちろん、本格的な防音室まで、適切な建材を選んで計画的に施工すれば、効果的な防音性能を持つ快適な空間が実現できます。
費用や設備を工夫して、予算と目的に応じた防音室を計画してみてはいかがでしょうか。
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監修者
淀川 美和(よどがわ みわ)
株式会社アートアーク一級建築士事務所代表。一級建築士、インテリアコーディネーター、2児のママ建築家。「ママをきれいにする空間づくり」 をミッションの一つに掲げ、住宅・店舗・ホテル等の設計、内装コーディネート、メディア出演等を行う。自身も仕事と家事と育児のバランスをとりながら、忙しいママがいかに快適に家族と暮らせるかに焦点をあてつつ「お部屋のコンシェルジュ」として皆さまのお役に立てるよう奮闘中。
保有資格:一級建築士、インテリアコーディネーター、建築士会インスペクター、健康住宅アドバイザー、整理収納アドバイザー2級、アロマ検定1級
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