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“長期優良住宅”という言葉を聞いたことはありますか?
長期優良住宅とは、2008年に制定された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」をもとに2009年に施行された、国の定めた基準を満たした住宅に与えられる認定制度です。
長期優良住宅は安全性や快適性に配慮されているほか、税制面の優遇を受けられる金銭面のメリットもあります。今回は長期優良住宅の概要やメリット・デメリットを詳しく解説しますので、マイホームの購入を検討している方はぜひご覧になってください。
長期優良住宅のメリット

まず、長期優良住宅のメリットをご紹介します。
住宅ローンの金利引き下げや税の特例措置について
長期優良住宅は、住宅ローンの金利引き下げや税の特例措置を受けられるのが大きなメリットです。
住宅ローンを固定金利で組むときに利用する方が多い「フラット35」では、長期優良住宅を購入する際に「【フラット35】S(金利Aプラン)」を利用できるケースがあります。これは年0.5%の金利引き下げを受けられるお得なプランで、返済負担が軽減できる点がメリットです(※金利引き下げ幅は、借入時期や条件によって異なります)。
また、税制面では固定資産税の減税や所得税の控除といった優遇措置が受けられます。適用要件が細かく設定されており更新されることもあるので、マイホームを購入する際は最新の情報を確認しましょう。
省エネ設計によるランニングコストの削減
長期優良住宅は断熱等性能等級及び一次エネルギー消費量等級の基準が定められています。
断熱性能が高いと外気の影響を受けにくくなり、暖房・冷房の負荷が軽減されます。また、一次エネルギー消費量とは冷暖房・給湯・換気・照明などの住宅内で消費するエネルギーの合計値で、住宅のエネルギー効率を示します。テレビなどの家電製品は含まれません。一次消費エネルギーが少ないということは、それだけ光熱費を削減できることを意味します。
ランニングコストの削減を図りながら快適な住環境を享受できるのは、長期優良住宅の大きな魅力です。
良好な居住環境や災害対策
長期優良住宅は、室内の良好な住環境を実現するだけでなく、地区計画や景観計画などによる地域の街づくりに調和することが求められています。そのため、家の内外において暮らしやすい環境で生活ができるでしょう。
また、災害発生リスクの高い地域においては、所管行政庁が定めた必要な措置を講じることが求められます。令和4年の法改正では、特に土砂災害、津波、洪水などの水害に対する対策が強化され、リスクの高い地域では特別な対策が義務付けられるようになりました。災害リスクが特に高いエリアは長期優良住宅の認定対象外となる場合もあります。
長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅のデメリットは以下のとおりです。
イニシャルコストが高くなる傾向がある
長期優良住宅は、耐震性・断熱性・維持管理のしやすさなど、一定の基準を満たす必要があるため、一般住宅に比べて建築費が高くなる傾向があります。これに対して、住宅ローンの金利引き下げや税制面での優遇措置を活用することで、長期的にはコストを抑えることができます。うまくこれらの優遇措置を活用し、住宅の価値を維持することで、次の世代へと引き継ぐことができます。
手続きが複雑
長期優良住宅の認定を受けるためには、申請書類の準備や審査が必要になります。施主もしくは建築会社が認定を受けることとされているため、認定を受けたい場合は事前に建築会社に手続きの流れを確認することが重要です。
定期的な点検・メンテナンスが必要
長期優良住宅は基準を満たす住宅をつくれば良いということではありません。完成後も30年間は定期的な点検・修繕・改良を行い、その記録を作成・保存することが求められています。具体的な点検頻度や内容は、維持保全計画に基づいて決定されます。
引き渡しの際は認定基準として定められている維持保全計画とあわせて家との付き合い方を建築会社に確認しておきましょう。適切なメンテナンスを実施することで家の寿命が長くなり、次世代まで快適に暮らせる家として愛されることでしょう。
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長期優良住宅の概要と条件

それでは長期優良住宅の概要を見ていきましょう。
長期優良住宅の概要
長期優良住宅は、国土交通省により「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」と定義されており、以下のような基準を満たす必要があります。
・住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
・住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
・地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
・維持保全計画が適切なものであること。
・自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。
出典:「長期優良住宅のページ」(国土交通省)
長期にわたり良好な状態で使用するため、メンテナンスや災害への配慮が重視されていることがポイントです。「古くなったら建て替える」といった従来の考え方を変え、住宅をストックとして次の世代に受け継いでいくことが意図されています。
認定基準・条件
長期優良住宅の認定基準は以下のとおりです。長期優良住宅の認定を取得している製品であればこれらの基準を満たしていることになります。

出典:「長期優良住宅の普及の促進に関する法律の長期優良住宅認定制度の概要について」(一般社団法人住宅性能評価・表示協会)
難しい表現が多いですが、わかりやすくすると以下のようなことを示しています。
・劣化対策:腐食やさびが発生しにくい。
・耐震性:地震後の継続利用を目的とした改修がしやすいよう損傷レベルを低減する。
・省エネルギー性:断熱性が高く、空調・照明などの負荷が少ない。
・維持管理・更新の容易性:柱・梁・床などに影響を及ぼすことなく配管などを補修できる。
・可変性:将来の間取り変更やリフォームに対応しやすいよう、十分な天井高が確保されているなど、構造上の工夫がされている。
・バリアフリー性:転倒・転落などの防止、車いす使用者が生活するための基本的な措置が取られている。
・居住環境:街並みなどとの調和が図られている。
・住戸面積:将来も使いやすい面積が確保されている。
・維持保全計画:住宅の長寿命化のための維持保全計画が定められている。
・災害配慮:想定される災害リスクに対して必要な措置が取られている。
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まとめ
長期優良住宅の目的は建物という資産を国民共通のストックとして次世代に受け継ぎ、長期間にわたり活用できるようにすることです。海外では子や孫の世代まで1つの家に住むのは珍しいことではなく、家は長く愛される資産として大切にされています。住宅ローンの金利引き下げや税の特例措置といった様々なメリットがある一方で、建築コストや維持管理の負担も考慮する必要があります。長く快適に住み続けるために、メリットとデメリットを理解し、ご自身に合った選択をすることが大切です。
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監修者
志鎌のり子(しかまのりこ)
一般社団法人日本模様替え協会 理事/COLLINO一級建築士事務所代表。日本女子大学住居学科卒業、五洋建設でマンション・ビルの設計監理/内装デザインを10年担当。その後、日本ERIにて住宅検査など10年担当、設計・検査・審査した住戸数は延べ5,000件以上にのぼる。現在は部屋を「機能による空間分け」「動線」「収納」の観点から模様替えする独自のメソッドにより、機能的な部屋づくり/仕組みづくりなどを提案。書籍「家具配置のルール」のほかSUUMO、AERAwithKids、建築知識ビルダーズ、住まいの設計など著書多数。
保有資格:模様替えアドバイザー 一級建築士 建築基準適合判定資格者 住宅性能評価員 建物耐震診断士 フラット35適合証明検査員 など
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