
マンションで壁面収納にしたいときのポイント 間仕切り壁、界壁(戸境壁)、共用壁って何?
※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
目次
空間をスッキリと整理できる壁面収納は、“見せる収納”としても重宝されている収納です。しかしマンション住まいの場合は管理規約があり、壁面収納を設置する際にいくつかの注意点を守らなければなりません。今回は、マンションに壁面収納を設置する際の注意点やおすすめの設置場所について解説し、マンションで設置できるDAIKENの壁面収納製品をご紹介します。
マンション特有の壁の種類と内部構造 リフォームできる? できない?
マンション特有の壁の種類・内部構造について解説します。一口に“壁”といっても役割が異なり、特にマンションにおいてはリフォームや壁面収納の設置可否に大きく関わります。
●共用壁・外壁
共用壁とはマンション全体の構造に関わる壁で、外壁や隣戸との仕切りの一部も含まれます。共用壁は区分所有者の所有する“専有部分”ではなくマンションの“共用部分”であり、穴開けなどの加工をするのは原則禁止されています。耐震性や防音性能に直結する重要な構造部分のため、居住者個人の希望によるリフォームはできません。
●界壁(戸境壁)
界壁(かいへき)は、戸境壁(こざかいかべ・こざかいへき)とも呼ばれる住戸同士の間にある壁です。音や火災の広がりを防ぐために遮音性・耐火性が求められます。構造上、ビス打ちや穴開けなどの加工はマンションの管理規約で制限されており、リフォームや収納家具の固定は原則としてできません。
●間仕切り壁
間仕切り壁とは住戸内の部屋と部屋の間にある壁で、多くは木や軽量鉄骨の下地組みに石膏ボードなどを下地材として張り、壁紙で仕上げています。これらは専有部分であり、管理規約に反しない範囲であればリフォームや壁面収納の設置が可能です。
ただし石膏ボードの耐荷重や強度不足によっては補強が必要です。大きなものを設置する際には専門家に相談しましょう。
壁面収納を設置したい マンションにある管理規約の問題とは
「賃貸や分譲マンションでは制約があって壁面収納を設置できないのでは?」と思われるかもしれません。壁面収納の設置を考える場合に、必ず確認しなければならないのが賃貸契約書や管理規約です。
賃貸の場合、故意や過失による損耗については、退去の際に借主(入居者)が復旧する“原状回復義務”があります。画鋲やピンなどの穴については通常の生活で発生すると考えられ使用可能とされているケースもありますが、通常の使用を超えるような、壁へのビスで固定する壁面収納はできないと考える方が無難です(※)。
(※)参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料(国土交通省)
(※)賃貸借契約書や、賃貸借契約書の“特約事項”の記載をご確認ください
一方、分譲マンションも制約があります。個人所有の範囲となる“専有部分”であっても、施工には制限があり、工事の可能な範囲が管理規約で定められているためです。
マンションで広い面積の壁を確保しようとすると、各住戸を区切る界壁(戸境壁)であるケースがありますが、界壁はマンションの構造に関わるため工事を禁止されていることがほとんどです。
壁に穴を開けずに棚を固定できる壁面収納もあるので、まずは製品の取り付け方法や賃貸契約書、管理規約などを確認し、必要に応じて貸主や管理組合に相談しましょう。
壁面収納を設置 計画段階でチェックしたいポイントとは
では、壁面収納の設置を検討する際にチェックしておきたいポイントについて解説します。
●設置したい壁が構造を支える壁かどうかを確認する
前述したように、共用壁や耐力壁といった建物を支える壁は、耐震性や遮音性の低下につながるおそれから穴開けやビス留めが原則禁止となっています。壁面収納の計画時には、設置したい部分が構造壁に該当しないか確認しましょう。
耐力壁についてはこちらの記事もぜひご覧ください。
関連記事⇒「住みながら耐力壁(耐震壁)が作れる“耐震リフォーム”! 省施工&省コストの耐震壁を設置」
●下地を確認する
室内の間仕切り壁は、石膏ボードに壁紙(クロス)などを張って仕上げるのが一般的です。石膏ボードの壁は、ネジやボルトで留めても棚を保持できないため、石膏ボードを支える下地の“間柱”を探してビス留めをする必要があります。下地補強があらかじめしてある場所なら施工できるので、壁面収納を設置する際には施工会社に間柱や下地補強について調べてもらいましょう。
下地補強は、壁面収納や壁掛けテレビのような大きなものだけでなく、ロールスクリーンやタオル掛け、飾り棚などを設置する際にも必要です。リフォームをするタイミングで下地補強を入れておくと、棚の増設など後からDIYをする際にも便利です。
●収納物に合わせて耐荷重を検討する
壁面収納を設置する壁には、棚や収納するモノの重さに応じた耐荷重が必要です。
本や食器など重いものを収納する場合は、壁自体の強度だけでなく、収納棚や取り付け金具の耐荷重もチェックする必要があります。
壁面収納を設置したい おすすめの場所
広い壁が少ないマンションでは、壁の寸法に合わせられるタイプの収納が便利です。壁面収納を設置するのにおすすめの場所をご紹介します。
●リビング
家族のモノが集まりやすいリビングでは、大容量の壁面収納が活躍します。テレビ周りに収納棚を組み合わせる“テレビボード一体型”もおすすめです。
オープンシェルフ型なら壁面を活かして収納と装飾を両立し、見せる収納としてリビングに素敵な彩りを添えるでしょう。
扉付きの壁面収納であれば、書類や生活雑貨、お子様のおもちゃなどをスッキリ収納し、生活感を抑えた空間づくりに活用できます。
●洗面所
収納スペースが不足しがちな洗面所に壁面収納の設置はおすすめです。
洗濯機上の壁や洗面台の横など、限られたスペースでも高さを活かせば、タオルや洗剤、ストック用品を整理できます。
通気性の良い素材の棚や、施工が簡単に行える収納を選ぶとよいでしょう。
●キッチン
キッチンには、調味料や調理器具、食品ストックといった多くのアイテムを収納する場所が必要です。冷蔵庫横やダイニング横、キッチンカウンター横などのスペースを活用しましょう。食器など重い物を収納する場合は、下地の位置や耐荷重に注意が必要です。

●子ども部屋・仕事部屋
子ども部屋や在宅ワーク用の仕事部屋にも、壁面収納がおすすめです。お子様が片付け習慣を身に付けやすいよう、本や学用品・文具をまとめて整理できる収納を机の近くに設置するとよいでしょう。
簡易式? 固定式? 壁面を使う収納のアイデア
壁面収納には“簡易式”と“固定式”があります。お部屋のスペースや壁の状態、ご予算に応じて適したタイプを選んでみてください。
【簡易式】
●突っ張り棒
壁や天井に穴を開けずに設置できる突っ張り棒タイプの壁面収納は、賃貸マンションで気軽に使える定番の収納アイテムです。スリムなウォールラックにS字フックでバッグや帽子を掛けたり、ウォールシェルフタイプの棚を設置して見せる収納にしたりと幅広い用途で使えます。
玄関や洗面所、クローゼット内など、コンパクトな空間の活用にも適しています。
●ピクチャーレール+フック
賃貸物件や分譲マンションでも採用されるピクチャーレールは、壁に傷を付けずに写真やアートを飾れるだけでなく、取り付けたフックに帽子や小物を吊るせます。耐荷重はさほど大きくないため、軽いものを飾りながら収納するインテリア性の高いアイテムとして活用しましょう。
●カラーボックス
カラーボックスは、比較的安価なうえ、サイズや色柄バリエーションも豊富な収納です。縦置き・横置きどちらにも対応でき、連結や積み重ねも可能なので便利に使えます。
転倒防止の突っ張り棒やL字金具を使えば、簡易的な固定もでき、収納力と手軽さのバランスが魅力です。
●デスク一体型収納
省スペースで多機能な収納を実現するなら、デスク一体型収納もおすすめです。壁に寄せて設置するだけで作業スペースと収納を一体化でき、子ども部屋や在宅ワークの空間にぴったりです。組立式や完成品など様々な製品があり、壁への固定が不要なタイプもあります。
【固定式】
●システム収納
壁面の広さや用途に合わせて自由に組み合わせできるシステム収納は、収納力とデザイン性を両立でき、ビスでしっかり固定するので安定感があります。
しかし、取り付けには下地の確認や工事が必要となり、分譲マンションの場合は管理規約の範囲内で施工計画を立てなければなりません。ビスが使えない壁面に設置したい場合は、壁に穴を開けなくても固定できるタイプを検討してみてください。
●壁厚収納
“壁厚収納”とは、壁の内部の空間(厚み)を利用してスッキリとした見た目の棚などを埋め込む収納方法です。柱と柱の間に収納棚や収納ボックスを埋め込むことが多く、小物や日用品の整理に使うと便利です。しかし、リフォームの場合は間柱の間のスペースを活用するため、幅や奥行きがコンパクトなスペースしか確保できません。また、設置には配管や配線の有無など壁内部の構造を確認することが必要ですので、施工会社に相談してください。
『オンボード工法』で設置しやすい壁面収納 DAIKENのシステム収納『フィットシェルフ』

マンションで収納スペースを増やすのは難しく、たとえ広い壁があっても戸境壁や共用壁だった場合、穴開けが制限されてしまいます。そのような状況でも活用しやすいのが、DAIKENの『オンボード工法』です。

『オンボード工法』では、穴を開けることのできない壁や木下地のない部分に桟を専用接着剤で固定し、その桟に収納を固定します。

システム収納『フィットシェルフ』も、『オンボード工法』に対応しており、今まで施工が困難だったマンションでも壁面収納が設置できます。ミリ単位で調整ができ、無駄なくピッタリ壁の幅に納まるプランニングが可能です。ぜひご検討ください。
まとめ
特にマンションの場合、壁面収納の設置には、壁の種類や管理規約を理解することが重要です。壁面収納は、専有部分の中にある間仕切り壁への設置であれば比較的自由度が高いものの、共用壁や界壁への設置の場合は、取り付け方を工夫する必要があります。
壁を傷付けずに設置できる製品を利用し、限られたスペースを有効に活かす収納計画を立ててみてください。
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監修者
志鎌のり子(しかまのりこ)
一般社団法人日本模様替え協会 理事/COLLINO一級建築士事務所代表。日本女子大学住居学科卒業、五洋建設でマンション・ビルの設計監理/内装デザインを10年担当。その後、日本ERIにて住宅検査など10年担当、設計・検査・審査した住戸数は延べ5,000件以上にのぼる。現在は部屋を「機能による空間分け」「動線」「収納」の観点から模様替えする独自のメソッドにより、機能的な部屋づくり/仕組みづくりなどを提案。書籍「家具配置のルール」のほかSUUMO、AERAwithKids、建築知識ビルダーズ、住まいの設計など著書多数。
保有資格:模様替えアドバイザー 一級建築士 建築基準適合判定資格者 住宅性能評価員 建物耐震診断士 フラット35適合証明検査員 など