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建築にはいくつかの祭式がありますが、中でも特に大切にされているのが地鎮祭(じちんさい)・上棟式・竣工式の三大祭式です。工事が無事に終わることや、その土地・建物で安心して暮らせることを願うのが主な目的であり、ビルや公共施設などの大規模建築物では今も重視されています。
一方、戸建て住宅のような小規模な建物では、祭式を簡略化するか、行わないこともあります。施主の意向によって対応は様々ですが、慣習を重んじたいという方も多いでしょう。そこで今回は、三大祭式のうちの地鎮祭について、準備や当日の流れなどを解説します。マイホームで地鎮祭を行うか迷っている方は、ぜひご覧になってください。
建築の三大祭式の1つ 地鎮祭とは?
はじめに、地鎮祭の概要について説明します。
地鎮祭とは
地鎮祭は建築の三大祭式の1つで、土地を守る神様にその土地を使う許しを得る意味があります。土地の神様に許可を得て、工事やその後の暮らしの安全を祈願します。
地鎮祭はしなくても良い?
地鎮祭は古くから続く祭式ですが、必ず行わないといけないものではありません。実際に実施するかは施主の判断によります。
地鎮祭には一般的な流れがありますが、具体的な内容は地域によって異なります。開催の有無も地域によって違いがあるため、風習を大切にしたい場合は地元の神社や施工会社に相談するとよいでしょう。
また、地鎮祭を行わない場合でも、工事関係者だけで略式の安全祈願をすることがあります。
地鎮祭を行うのに適した日は?

冠婚葬祭では六曜(ろくよう)の吉日が人気ですが、建築では古くから十二直(じゅうにちょく)と呼ばれる考え方が参考にされています。六曜と十二直における地鎮祭に適切な吉日をご紹介しますので、納得できる日を選びましょう。
・六曜で考える場合
六曜は冠婚葬祭でも参考にされるため、多くの方にとって馴染みのある風習です。大安、先勝の午前中、先負の午後が良いとされています。
・十二直で考える場合
十二直には建築に適した日があり、地鎮祭には建・満・平・定・成・開が良いとされています。インターネットなどで十二直カレンダーを確認してみましょう。
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2025.03.19
服装や費用目安は? 地鎮祭に向けた準備
次に、地鎮祭に向けた準備について解説します。前述のとおり地鎮祭には地域性があり、当日の流れやそのための準備は地域によって異なり、一律ではありません。地鎮祭を開催する場合の一般的な流れや準備を説明しますが、実際に地鎮祭の準備をする場合は神社や施工会社に事前に相談してください。
神社・施工会社への依頼
地鎮祭は神社や施工会社に依頼して開催するのが一般的です。地鎮祭の開催を決めたら、神社・施工会社に連絡し、その後の流れや準備を確認しましょう。当日の会場設営や進行は神主や施工会社が行ってくれるため、施主は必要な物を準備します。
祭式で使用する物と当日の服装

当日に向けて用意するのは、以下のような物が一般的です。施工会社などが準備するケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
・お供え物:米(1合)、酒(1升)、海の幸(魚・昆布など)3種、山の幸(果物)3種、野の幸(野菜)3種、塩(1合)、水(180ml~500ml)
・榊:5本程度
・半紙:20枚程度
服装はスーツやジャケットなどのフォーマルな装いが一般的ですが、カジュアルな服装で参加するケースも増えています。他の参列者に対して失礼にならないように清潔感のある服装を心がけましょう。
謝礼金やお供えなど費用の目安
地鎮祭に必要な費用の目安は以下のとおりです。
・玉串料(神職へのお礼):2~3万円程度
・お車代:5,000~1万円程度
・施工会社の準備費:1~5万円程度
・お供え物:1万円程度
・近隣の方への挨拶の粗品:2,000円/個程度
・お弁当:2,000円/個程度
参加人数によって費用が変わってきますが、10人前後を想定した場合は10~15万円程度が一般的です。
地鎮祭に出席するのは誰?
一般的に、地鎮祭に出席するのは次の方々です。
・施主
・神主
・施工会社の担当者
・工事関係者
・設計者
施主は1人でも問題ありませんが、思い出づくりとして家族全員で参加するケースもあります。お弁当などを用意する場合は、施工会社の担当者や工事関係者の参加人数を事前に確認しておきましょう。
地鎮祭当日の流れ

次に、一般的な地鎮祭の流れをご紹介します。地域によって実際の流れは異なるため施主の意向に合わせて調整できることもあります。施工会社や神社に確認してみましょう。
一般的な流れ
一般的な地鎮祭の流れは以下のとおりです。
・修祓の儀(しゅばつのぎ):祭壇・土地・参列者をお清めします。
・降神の儀(こうしんのぎ):神職が神様をお迎えします。
・献饌の儀(けんせんのぎ):神様にお供え物を捧げます。
・祝詞奏上(のりとそうじょう):神職が神様に祝詞を読み上げ、工事の安全を祈願します。
・四方祓い(しほうはらい):土地の四隅に神酒・米・塩を撒いて清めます。「清祓(きよはらい)」と呼ぶこともあります。
・地鎮の儀(じちんのぎ):草を刈る、土を起こす、土をならすなどの所作を行ったあと、鎮め物を埋めます。「鍬入れの儀(くわいれのぎ)」と呼ぶこともあります。
・玉串奉奠(たまぐしほうてん):参列者が神前に玉串を供えます。
・撤饌の儀(てっせんのぎ):神職がお供え物を下げます。
・昇神の儀(しょうじんのぎ):神様をお送りします。
・閉式の辞(へいしきのじ):閉会の挨拶を行います。
・神酒拝戴(しんしゅはいたい):参列者全員でお神酒をいただきます。
この中で、施主が関わるのは“地鎮の儀”と“玉串奉奠”です。地鎮祭が始まる前に神職に所作を確認しておきましょう。
所要時間
地鎮祭の所要時間は30分~1時間程度が一般的です。地域の風習によっては、地鎮祭の後に簡単なお食事会である直会(なおらい)をするケースもあり、その場合は90~120分ほどかかる場合もあります。
挨拶など施主がやること
“地鎮の儀”と“玉串奉奠”における所作のほか、祭式の最初や最後に挨拶を求められることもあります。事前に挨拶の有無を確認し、必要な場合は準備しておきましょう。
地鎮祭についての疑問
最後に、地鎮祭でよくある疑問をご紹介します。
雨が降った場合はどうなる?
雨天時は施工会社が用意したテントの中で地鎮祭を開催することが多いですが、台風などの悪天候の場合は日程を変更することもあります。事前に施工会社に確認しておきましょう。
地鎮祭後にやること
地鎮祭の片づけは施工会社が対応することが多いため、施主は近所への挨拶回りを行うのが一般的です。工事が始まると騒音や振動が発生するため、施工会社の方と一緒に挨拶しておくと安心です。挨拶の際は粗品を用意し、不在の場合は改めて訪問するとよいでしょう。
まとめ
地鎮祭は建築の三大祭式の1つですが、必ず行う必要ではなく施主の判断によります。負担に感じる場合は省略しても良いですし、マイホームの思い出づくりとして家族で参加するのもおすすめです。貴重な機会ですのでよく話し合って決めましょう。
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監修者
志鎌のり子(しかまのりこ)
一般社団法人日本模様替え協会 理事/COLLINO一級建築士事務所代表。日本女子大学住居学科卒業、五洋建設でマンション・ビルの設計監理/内装デザインを10年担当。その後、日本ERIにて住宅検査など10年担当、設計・検査・審査した住戸数は延べ5,000件以上にのぼる。現在は部屋を「機能による空間分け」「動線」「収納」の観点から模様替えする独自のメソッドにより、機能的な部屋づくり/仕組みづくりなどを提案。書籍「家具配置のルール」のほかSUUMO、AERAwithKids、建築知識ビルダーズ、住まいの設計など著書多数。
保有資格:模様替えアドバイザー 一級建築士 建築基準適合判定資格者 住宅性能評価員 建物耐震診断士 フラット35適合証明検査員 など
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