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目次
広いスペースや高価な機器を必要とせず、自宅で楽しめるビオトープに興味がある方もいることでしょう。ところで、ビオトープは水槽でメダカを飼う場合とはどう違うのでしょうか。
今回は、ビオトープの意味やその魅力、さらに家庭でビオトープをつくる方法について詳しく解説します。初心者にもおすすめの植物や水生生物もご紹介します。自分好みのビオトープをつくって育て、見て癒される“自分だけの小さな自然空間”を楽しみましょう。
ビオトープとは?

ビオトープ(biotope)はドイツ語のBiotopをカタカナ表記したもので、語源そのものはギリシャ語のbios(生命)+topos(場所)に由来します。日本ではビオトープというと、小さな池や、メダカや水草が入った鉢をイメージしがちですが、本来は自然・人工を問わず、“生き物の棲み処”や“命ある場所”を指します。この中には、身近にある公園や街路樹、森林などもビオトープに含まれており、私たちが生活していくうえで欠かせない存在です。
現在、世界各国の公的機関や民間団体などが、生物多様性の保全や生態系の復元を目的としてビオトープの管理・運営に取り組んでいます。日本でも、自然環境への理解を深められるよう、家庭でのビオトープづくりが環境省によって推奨されています。
都市部では自然が減っているため、ビオトープは子どもの自然教育として役立ちます。ビオトープの手入れをしながら生態を学ぶことで、感受性や自然を大切にする心を育むでしょう。
近年はサステナビリティの重要性が高まる中、環境に配慮した行動を意識する人も増えてきました。そのような中で、ビオトープはエコロジカルな取り組みの一環としても注目を集めています。ビオトープという小さな自然と共生することで、エコロジーの大切さを再認識することができるでしょう。
また、小さな庭で可能なガーデニングについて下記の記事でまとめていますので、興味がある方はそちらもご参照ください。
関連記事⇒「初心者が小さいお庭でガーデニングを楽しむための基礎知識」
ビオトープで必要なものとつくり方

日本においてイメージされることが多いビオトープは、“湿地帯ビオトープ”と呼ばれるものです。睡蓮鉢やコンテナなどを使って自宅で水生植物や魚が生息できる環境をつくってみましょう。
ビオトープを家庭で楽しむには、何を用意すればよいでしょうか。庭に穴を掘って池をつくるという方法もありますが、今回は飼育容器を使い、簡単にはじめられるビオトープをご紹介します。
関連記事⇒「植栽とは? おすすめの庭木で外構をおしゃれに!」
用意するもの
ビオトープをつくる場合、必要なものは以下のとおりです。
飼育容器 | 睡蓮鉢、コンテナなど、深さ20cm以上ある容器がおすすめ |
植木鉢 | 飼育容器の縁より高さが低いもの。エコトーン作成用 |
水 | 水道水の場合はカルキ抜きが必要。汲み置きによる方法がおすすめ |
底砂・砂利・土 | 植物や生き物に合わせた砂、土を選ぶ |
水生生物 | メダカ・エビ・タニシなど |
植物 | 浮き草・水草など |
水は市販のカルキ抜き剤を使うこともできますが、汲み置きしてカルキ抜きをすることで、より自然に近い水環境を再現できます。
また、植物の根付き方や水生生物が好む環境によって適切な底砂・砂利は異なります。園芸店やアクアショップなどのスタッフや専門家のアドバイスを参考にしながら、自分がつくりたいビオトープに適した砂を選びましょう。できるだけ自然の生態系を意識して、植物・水生生物が暮らしやすい広さ、水環境、砂などを整えることが重要です。
エコトーンとは
ビオトープをつくる際には“エコトーン”も再現しましょう。
エコトーンとは“移行帯”という意味で、異なる2つの環境がゆるやかに変化しながら接する場所です。陸域と水域のどちらともいえない湿地の部分であるエコトーンをビオトープに再現することで、その空間の生物多様性が高くなります。
ビオトープのつくり方

必要なものが用意できたら、以下の手順でビオトープをつくりましょう。
【ビオトープをつくる手順】
①日当たり・風通しのよい場所に飼育容器を設置する(夏場は日陰がつくれる場所にする)
②飼育容器内にエコトーン用の植木鉢を置き、その中に土と植物を入れる
③飼育容器内に底砂・砂利を敷き、植物を配置する
④カルキ抜きした水を静かに注ぐ(植木鉢が陸地になるように上端ぎりぎりぐらいまで)
⑤水温を合わせてから、水合わせ(下記)が済んだ水生生物を入れる
ビオトープを設置するには、適度な日当たりがあり、風通しのよい場所が適しています。植物や水生生物が日光を浴びて気持ちよく暮らすことができますし、急激な水温変化も少なく、湿気が溜まるのを防ぐことができます。
水生生物を入れるときは適切な水温になっていることを確認し、水合わせをしてから入れます。水合わせとは、水生生物を新しい環境に慣れさせるために必要な工程です。手順は以下の通りです。
【水合わせの手順】
①水生生物が入った袋を飼育容器に浮かべて水温を合わせる
②飼育容器の水をゆっくり袋の水に混ぜる
③水生生物を飼育容器に入れる
便利な水合わせキットも販売されているので、初めてビオトープづくりにチャレンジする場合は、市販品を使用するとよいかもしれません。
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ビオトープにおすすめの植物・水生生物

ビオトープは、中で暮らす植物や水生生物によって雰囲気が大きく変わります。初心者の場合は、できるだけ育てやすい植物や水生生物を選びましょう。比較的育てやすい、おすすめの生き物たちをご紹介します。
おすすめの植物
・水生植物(水草)
アナカリス | 環境適応能力が高く、屋外でも育成可能 |
ホテイアオイ | 水に浮かべておくだけで育つが、暗所や低温は苦手 |
カボンバ | 耐陰性があり寒さにも強いが、28℃以上の高温環境は苦手 |
・陸生植物
セダム | 乾燥に強く繁殖力が高い |
アイビー | ツル性植物で垂れ下がるように配置すると立体感が生まれる |
おすすめの水生生物
メダカ | 環境変化に強く、水温などが変わりやすいビオトープ向き |
ミナミヌマエビ | 飼育が容易で、コケやメダカの食べ残しを食べてくれる |
タニシ | 温和でメダカと相性がよく、水を浄化する作用がある |
ビオトープを管理する際のポイント

ビオトープは小さな自然のため過剰な手入れをする必要はありません。しかし、適切なメンテナンスを行うことで、生態系のバランスを維持することができ、美しさも持続します。不安がある場合は、園芸店やアクアショップなどで相談することもできます。生命を育てていることを忘れずに、プロのアドバイスなどを参考にしながら適切な管理を行いましょう。
水質管理
水温は、植物や水生生物が快適に暮らすうえで非常に重要なポイントです。基本的にビオトープは屋外に設置するため、適度な日当たりと風通しが確保されていることを確認しましょう。夏場の猛暑対策、冬場の防寒対策も意識し、必要ならすだれをかけたり飼育容器を移動させたりするなどの対策が必要です。
水生生物によっては、3~4週間に1回程度の水換えが推奨されます。水換えが必要か、それとも差し水で十分かは水生生物の種類次第です。どのような水生生物を選ぶか、最初によく考えておく必要があります。
水質を維持するためにフィルターを使用する場合は、定期的にフィルターを洗浄し、目詰まりを防ぎましょう。
安全管理
ビオトープは虫にとってもすごしやすい環境です。虫の発生が気になる場合は防虫対策を施しましょう。ボウフラなどが大量に発生してしまうと、成長した虫が近隣に迷惑をかけてしまうこともあります。
さらに近所に猫や鳥がたくさんいる場合や、小さなお子様やペットがいる場合は、ビオトープにネットや囲いなどを設置しておくと安心です。
植物・水生生物の管理 放流・投棄は絶対にしないこと!
植物や魚は生き物ですから、病気になる場合もあります。こまめに様子を観察し、異常がないかを確認しましょう。
また、植物・水生生物が増えすぎると水中の酸素が不足しやすくなります。増えすぎた水草はトリミングし、想定外に増えたメダカは引き取り手を探す、別の容器に移す、自然淘汰に任せるなどの方法で適正数に保つ必要があります。
絶対にしてはいけないのが、増えたからといって川や草むらなどに放流・投棄する行為です。特に外来種を放流・投棄してしまった場合、生態系に甚大な被害を与えてしまうこともあります。
生態系に悪影響を与えないよう、飼育容器のサイズに適した飼育数を念頭に置き、責任を持って維持管理を行いましょう。
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ビオトープで必要な道具を収納 DAIKEN『ieria(イエリア)玄関収納 開き戸ユニット』

自宅でビオトープをつくる際は、バケツやスコップ、底砂・砂利、すだれなど、ビオトープの管理に必要な道具をしまえる玄関収納があると便利です。
DAIKEN 『ieria(イエリア) 玄関収納 開き戸ユニット』は、洗練された空間演出と多彩な収納力が魅力の収納ユニットです。
様々な使い方ができるように多彩なユニットが用意されており、トランクユニットを選択すれば収納物にあわせてフレキシブルに使用できます。玄関収納ユニットを活用して、癒しの自然空間を楽しんでください。
まとめ
ビオトープは、庭やベランダでも手軽に自然と触れ合える空間です。自然に近い状態で育つ植物や生き物と過ごす時間は、日々の生活に癒やしを与えてくれるでしょう。もちろん生き物を育てるわけですから、必要な道具を揃え、生育環境への配慮や日々のメンテナンスも欠かせません。プロのアドバイスなどを参考にしながら、自然との共生を楽しみましょう。
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監修者
志鎌のり子(しかまのりこ)
一般社団法人日本模様替え協会 理事/COLLINO一級建築士事務所代表。日本女子大学住居学科卒業、五洋建設でマンション・ビルの設計監理/内装デザインを10年担当。その後、日本ERIにて住宅検査など10年担当、設計・検査・審査した住戸数は延べ5,000件以上にのぼる。現在は部屋を「機能による空間分け」「動線」「収納」の観点から模様替えする独自のメソッドにより、機能的な部屋づくり/仕組みづくりなどを提案。書籍「家具配置のルール」のほかSUUMO、AERAwithKids、建築知識ビルダーズ、住まいの設計など著書多数。
保有資格:模様替えアドバイザー 一級建築士 建築基準適合判定資格者 住宅性能評価員 建物耐震診断士 フラット35適合証明検査員 など
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