環境に優しい建築材料にはどんなものがある? 木材利用による炭素貯蔵、未利用資源、エコ建材、バイオフィリアなどにも注目

環境に優しい建築材料

現在、世界中で環境保全や森林保護の必要性が指摘され、様々な業界で環境に優しい産業活動が求められています。
環境に優しい取り組みとして建築業界ができることのひとつに、環境に優しい建築材料や製品を活用することがあげられており、近年では、国産天然木を使ったものからエコ建材まで、多数の製品が登場しています。
本記事では、環境に優しい建材を使うべき理由と、環境に優しい建材とはどのような製品があるのかをご紹介します。そして、森林保護につながる地域産材の活用についてもお話しします。

なぜ、環境に優しい建築材料・製品を使うべきなのか

環境に優しい建築材料

これまでの社会は「大量生産・大量消費・大量廃棄」型でしたが、現在「資源・エネルギー消費の増大」「廃棄物の大量発生」「天然資源の枯渇」「自然破壊」などによって、地球規模で環境の危機にさらされています。
今後も持続的に発展していくためには、循環型の社会を目指すことが必要なのです。

こうしたことから、製品の原材料調達から製造・使用・廃棄までを一つのサイクルと捉え、その間に発生した環境負荷を数字化し、低減させることが求められています。 将来の地球を守るためにも、環境に優しい(環境負荷の少ない)材料や製品の使用を検討してみてはいかがでしょうか。

環境に優しい建築材料とは? どんなものがある?

環境に優しい建築材料

一口に環境に優しい建築材料といっても建材にはいくつか条件がありますが、一般的に環境に優しい建材=エコ建材とも呼ばれています。

●環境に優しい建材の条件

・寿命が長い
・リユース(再使用)、リサイクル(再生)しやすい
・製造時に化石燃料の消費が少なく、CO2排出量が少ない
・環境に負担をかけずに廃棄できる

環境に優しい建材とは、長持ちで再生可能、そして製品製造の過程でCO2排出量が抑えられており、廃棄時に有毒な臭いや汚染がなく、環境に負担をかけないことが条件となります。

●環境に優しい建材の具体例

自然素材
天然木の無垢材、漆喰・珪藻土、タイルなど
リユース・リサイクル
古材、コーヒーかすなどを利用した内装ボード、製鉄時の副産物を使った不燃吸音材など
省エネ・省資源・建物の長寿命化につながるもの
太陽光発電パネル、燃料電池、火山灰ガラスなどの未利用資源を原材料にした不燃壁材など

環境に優しい建材を定義するのであれば、自然界に存在する物を利用することが思い浮かぶでしょう。
天然木や珪藻土などは古来より存在している建築資材です。
耐水性が高いことから浴室やキッチンで使用されているタイルは原材料が粘土なので、役目を終えて廃棄する際にも粉砕することで自然に戻すことが可能なのです。

また、リユース・リサイクル材料の使用は廃棄物量を抑えるので、地球環境に貢献するといえます。ほかにも、朽ちてしまう可能性のある古木を建物の壁材やインテリアに活用することも、環境負荷削減につながります。

コーヒーかすを利用した内装ボードなども、本来、廃棄するしかなかったコーヒーの副産物である搾りかすを使用した、画期的なアイデアのひとつといえるでしょう。

このほかにも、省エネや建物の長寿命化に貢献できる太陽光パネル、蓄電池、不燃壁材などの製品や材料も、地球環境保護の一翼を担っているといえます。

木材とはなにか その定義と種類は?

環境に優しい建築材料

木材とは、建築や工作などの材料として用いる木を指します。材木は「建築物や家具」などをつくる材料とする木のことで、一般的に板や角材に製材されたものをいいます。

木材には針葉樹と広葉樹があり、それぞれ細胞構造が異なります。

・針葉樹
育成地:寒冷地
特徴:柔らかく、加工しやすいことから軟材(ソフトウッド)と呼ばれる
代表的な木:スギ、ヒノキ、カラマツ、イチョウ

・広葉樹
育成地:暖かい地域
特徴:重硬であることから(ハードウッド)と呼ばれる
代表的な木種:ブナ、ケヤキ、カエデ、タモ

●木材の種類
世界中の木の種類は6万種以上、そのうち木材として実用されているものは1000~2000種で、日本の造林木の木材蓄積の約98%が針葉樹、2%が広葉樹です。日本の針葉樹の生産量でもっとも多いのがスギ、次いでヒノキです。

木造住宅に適しているのは、構造用木材(柱や梁など)に使用される針葉樹が圧倒的に多く使われています。広葉樹はフローリングなど、床材に使用されることが多くなっています。

※参考:公益社団法人 森林・自然環境技術教育研究センター「木造住宅に使う木の種類と性質に関する質問

日本で一番生産されている木材は
1.スギ:60%
2.ヒノキ:13%
3.カラマツ:9%
これらの生産量は、製材用、合板用、木材チップ用を合計したものです。

※参考:農林水産省「日本で一番多く生産されている木材は何ですか。

地球に優しい建材の代表としての木材

環境に優しい建築材料

木材は人の手によって唯一、再生・循環させられる資源です。
そして木材は環境に優しいだけではなく、人間の健康にも大きく貢献してくれる建材なのです。

●間伐材の活用を

環境保護に欠かせない木材ですが、密集することで日光を遮り、適切に育たない木が乱立してしまうことは好ましくありません。森林を健全に保つには、植林から伐採までのサイクルで適度な間伐も必要なのです。
間伐された木材を放置することなく有効活用できれば、自然の好循環が可能になります。

●建築材の炭素貯蔵について

環境に優しい建築材料

地球温暖化は大気中に二酸化炭素を放出することにより、温室効果ガス濃度が上昇してしまうことが原因になります。現在、世界規模で「温室ガス濃度」の上昇を抑えるため、国家レベルで様々な地球温暖化防止に取り組んでいます。

「木」は空気中の二酸化炭素(CO2)を取り込み、燃焼することで空気中に二酸化炭素を排出することになります。しかし、木を燃やさない限り炭素(C)として留まります。木材として住宅などに長期間使用することが炭素貯蔵効果となり、地球温暖化防止につながるのです。

木材を扱う建材メーカーは環境貢献度の「見える化」の一環とし、材料ごとに炭素貯蔵量表示を開始しています。
木造住宅を建築するにあたり、地球温暖化防止を念頭に「炭素貯蔵」について理解を深めていくことが大切といえるでしょう。

※参考:林野庁「地球温暖化防止に向けて」「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」について」

●人にも優しい木材の「バイオフィリア」効果

公共空間やオフィスの内装に天然木材を取り入れることで、自然との触れ合いからストレスが軽減される「バイオフィリア効果」が期待できます。環境保護だけでなく、心身が癒される効果があるため、個人として仕事の質の向上も期待でき、会社全体の業績アップにもつながるのではないでしょうか。

バイオフィリックデザインとは? バイオフィリアについて考える

環境に優しい建築材料

バイオフィリアとは、自然とつながりたいという人間の本能的欲求という概念で「バイオ(生物・自然・生命)+フィリア(愛着)」からなる造語のことです。そして、現在注目されているのがバイオフィリアの概念を空間デザインに反映させた手法「バイオフィリックデザイン」。バイオフィリックデザインが注目される背景は、生活空間で植物、水、匂いなど自然を視覚・聴覚・嗅覚・触覚で感じられるよう、住宅やオフィスなどの空間に取り入れ、モチベーションや幸福感の向上を目的として考えているからです。

●バイオフィリックデザインに期待できること
・イノベーション創出や生産性向上が期待できる
働き方の多様化により、スタッフの体や心の健康を維持できる快適な空間作りが重要になっています。オフィス空間に取り入れることで、スタッフの健康に考慮し、仕事効率のアップと、さらなる会社全体の業績向上へつなげることに期待できます。

・持続可能で回復力のある都市空間の創出が期待できる
バイオフィリックデザインを都市空間に導入することで、化学的・物理的・社会的・経済的な効果が生まれ、さらに、自然環境再生により持続可能な空間創出も期待できます。
オフィス作りの新しいスタイルとして「バイオフィリア」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、関連した内容として、下記記事にてバイオフィリアについて詳しくまとめていますので、ぜひご参照ください。
⇒「バイオフィリアとは? オフィスで自然を感じられるバイオフィリックデザインの魅力

天然木を活用して環境と人に優しい空間づくりを

日本には地域が育てた豊かな森が多く存在しています。しかし、現状はまだまだ有効活用されているとはいえません。環境に優しく、豊かな自然を維持していくためにも、地域産材などの国産材を積極的に有効活用していくことが必要です。また、環境への配慮を意識づけるには、私たち一人ひとりが幼少期から木にふれあい、地域の森林環境への理解を深めることも大切です。現在、各地で木育の考え方や取り組みが広がりつつあります。木育については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
⇒「木育を保育園・幼稚園からはじめよう! 地産地消の木のおもちゃで五感を磨き、SDGsにも貢献

また、具体的な有効活用の例として、多くの人が利用する公共空間の床に、地域産材を使用するのもおすすめです。スギなどの材料は柔らかいため傷つきにくい加工がされているとよいでしょう。
国産の天然木を活用して、環境と人に優しい空間づくりをしていきましょう。

公開日:2023.07.24 最終更新日:2024.02.27

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