オフィスの音環境を考える~防音のポイント

防音

オフィスなどの公共施設においては、遮音対策だけでなく、「吸音(調音)」、つまり、その空間の用途に合わせて音の「響きの長さ」を調節することが肝心です。今回のセミナー動画では、入社以来40年にわたり音響の研究を重ねてきた当社 サウンドセンター の井上 直人が施設の音環境の中から「オフィスの防音」を取り上げ、事務所、会議室、応接室、社長室など、その用途ごとに求められる吸音性能やDAIKEN独自の遮音プランについてご説明します。

  • お話を聞いた方

  • 井上 直人
  • 大建工業株式会社
    音響製品部
    井上 直人

「音」を単位でつかむ、体感する

DAIKENのサウンドセンターでは、長年にわたり音響の研究を重ねています。そのセンター長である井上から、まずは「音」というものを共通認識するために「単位を使って表す」ことについて改めて紹介しています。

・音の大きさの単位は 「dB(デシベル)」で表す
・人間の感覚では、10dB大きくなると、音量が倍の大きさになったと感じる

こうした事例を、実際にサンプル音を聴いていただきながら体感いただきます。

防音

建築においては、音漏れとして許容されるのは50dB程度が目安とされています。
この「dB」は「音の大きい・小さい」を表しますが、それに対して「音の高い・低い」を表す単位が「Hz(ヘルツ)」です。この単位は、1秒間に空気が何回震えるかを表す単位で、数値が大きいほど高い音であり、数値が低い場合は震えが少なく、低い音ということになります。
動画では、この「Hz」についてもサンプル音にて体感いただきます。
人間の耳は「人の声」に対して敏感にできており、ちょうど男性の声にあたる500Hzのあたりから1000Hzまでの周波数をうるさく感じます。
建築においては、この500Hzを基準と捉え、「最も聴こえやすく、かつ小さくしづらい周波数」と考えます。

吸音率とは

近年、ガラスパーティションなどを使用して明るく視認性の高い会議室が好まれる傾向にあります。しかしデザイン重視で設計を行うため、従来使われていた反響を抑えるための吸音天井材やタイルカーペットが無くなり、反響の多い会議室が増加しています。音が反響すると人の声が聞き取りにくく不快に感じてしまいます。
この部屋の中の響きを吸収する単位を「吸音率」と呼んでいます。

吸音率については「平均吸音率」という言葉でも表すことが多いです。
音を全く吸わない状態を0率とし、最も吸収される率を1と考え、0と1の間で、どれぐらいの率であるかを表す単位になります。
例えば吸音率0.25となった時は、125m³の体積の場合、約0.4秒ぐらいの響きになります。0.4秒は、手を叩いて音が消えるまでの時間「残響時間」としてイメージします。この残響が短いのか長いのかは、その空間の用途によって評価が変わります。

例えばカラオケルームの場合は、音が響く方が気持ちよく歌えます。ところが、今回のウェビナーのように、誰かの解説を視聴する場合は、音声が響かない方が聞き取りやすいということになります。つまり、残響時間が重要ではなく、その空間の用途に沿った適度な響きを実現できているかどうかが重要になります。
その適度な響きの量を吸音率と言い、いかに工夫して調整していくか、ということになります。

防音

空間・用途で静けさの目標数値は変わる

DAIKENに寄せられる、オフィスに関するお問い合わせの多くが、事務所内、会議室、応接室・社長室の3カ所についてのご相談です。

事務所については外部騒音。例えば空調、外からの音、道路の音など。もう一つは大勢が電話を取ると響きすぎて聞き取りにくい、結果、業務に支障が出ているという状況です。
会議室で多いのは、「響きすぎて聞き取りにくい」というご相談。また、深刻な会議などが周りに聞こえてないか、音漏れに対する不安も寄せられます。
応接室の場合は、音漏れをなくして静かな空間にしたい、とのご要望です。会議室の場合は外に対しての音漏れですが、応接室や社長室の場合は、中に対しての静けさに関するご相談。中で話す際の音の響きも落ち着いたものにしたいといった声を多くいただきます。

動画では、日本建築学会による「各種用途における室内騒音の許容値」の資料と共に、求められる静けさの要望の値「NC」を意識しながら、小会議室と大会議室、応接室、一般事務室など、それぞれの空間に求められる静けさの目標数値をご覧いただきます。

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井上 直人

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