【実証実験】シェアオフィスの個室ブースの内装木質化

木質化の効果を検証し、
木材利用促進や新しい価値を
生み出す空間提案につなげたい。
昨今、社会全体で働き方改革が推進され、業務効率化やワーカーの健康配慮が重要視されています。また、働き方の多様化によりシェアオフィス等の需要も増加しています。働く環境を見直す動きから、近年の研究では、空間に木材を使うことで、リラックス効果やストレス軽減、生産性の向上等がもたらされる可能性が示されています。
DAIKENは、木材の特長を活かした快適な空間づくりを追及しており、内装木質化の効果を検証しています。今回、実際に運営しているシェアオフィスを活用した実証実験を行い、分析を進めました。
実証実験概要
林野庁補助事業の令和 3 年度 内装木質化等促進のための環境整備に向けた取組支援事業の「内装木質化等の効果実証事業」にて、大建工業は『シェアオフィスの内装木質化による生産性向上効果等の実証』を実施しました。
被験者

都内オフィスに勤務する20代~50代 男女22名を対象に実験を行いました。
実験の流れ
被験者はランダムな順番で3つの個室に入室し作業を行いました。

非木質化
- 壁材
- 白色クロス
- 床材
- 緑色カーペット

木質化(オーク)
- 壁材
- オーク突板仕上げ
(不燃壁材『グラビオUS』使用)
- 床材
- オーク突板仕上げ
(土足用床材『コミュニケーションタフ FW』使用)

木質化(ウォールナット)
- 壁材
- ウォールナット突板仕上げ
(不燃壁材『グラビオUS』使用)
- 床材
- ウォールナット突板仕上げ
(土足用床材『コミュニケーションタフ FW』使用)
STEP
入室
STEP
安静
STEP
PC作業
15分間PCで集中を要するPC作業をおこないます。

STEP
安静
STEP
マインドマップ作業
5分間思考のプロセスを反映させるマインドマップという作業をおこないます。

STEP
アンケート回答
最後に、心理評価の質問紙に回答します。

STEP
退室
計測項目

実験の様子
心理的な評価と生理的な応答を計測しました。
<心理評価>
- 自覚症しらべ(産業疲労研究会)…作業に伴う疲労状況の経時的変化をとらえる手法
- 気分プロフィール検査(金子書房)…気分状態を7つの種類に分けて評価することができる手法
- 印象評価…対となる形容詞(「あたたかいーつめたい」など)を複数用意し,調査対象の印象を評価する手法
<生理応答>
- 脳血流量…近赤外線を使って脳組織内の血流量を測定する手法。脳の活動状況を評価するために測定
- 心拍数,心拍変動性…作業によるストレス等を評価するために測定
実験結果
実際のシェアオフィスの個室を用いて内装木質化による効果を検証した結果、木質化した個室の方が好まれる傾向があること、用いる樹種によっても受ける印象や、そこで過ごす人の疲労感への影響が異なる可能性が示されました。
内製木質化で個室利用意欲の向上に
無機質な非木質化の個室に比べ、木質化した個室の方が好まれる傾向がみられました。
また世代別では、40代がウォールナットの個室を好む傾向も。木質化が個室の利用意欲の向上につながる可能性が示唆されました。


オークとウォールナットの内装では印象が異なる結果に
各個室にどのような印象をもつか評価したところ、木質化することで印象が変わる可能性が示されました。また、その内装に用いた樹種(オーク・ウォールナット)で印象が異なりました。
●非木質化個室と比べて、木質化した個室は「あたたかい」「自然な」等の印象の得点が高くなりました。

●オークの個室では「カジュアルな」、ウォールナットの個室では「高級な」印象の得点が高くなりました。

●オークの個室では「アイディアがわきやすい」印象の得点が高くなった一方で、「集中する-気が散る」の項目では3つの個室で差はみられませんでした。

ウォールナットを用いた個室で作業した方が、疲労感が軽減?
個室で同じ作業をした後の「だるさ感」や「ぼやけ感」について、非木質化個室とウォールナットの個室を比較すると、ウォールナットでは得点が低い傾向があり、作業をした際の疲労感が低くなる可能性が示唆されました。
※得点が高いほど「だるさ感」「ぼやけ感」が強いことを示しています。

自覚症しらべとは?

右のようなアンケートに回答し、作業に伴う疲労状況の経時的変化を見るものです
日本産業衛生学会産業疲労研究会,2002年
脳活動が落ち着いた状態で作業が可能に?
今回は、3つの個室間で作業の成績には差がありませんでした。
しかし一部のデータでは、集中を要するPC作業の際に、ウォールナットの個室では脳血流量が低くなる傾向が見られました。
作業の成績には差は無かったため、ウォールナットの個室では、他の個室と比べ、落ち着いた状態で作業ができた可能性も考えられますが、慎重な解釈が必要です。

担当者に聞きました

大建工業 栢野氏
DAIKENではさまざまな木質内装材料を扱っています。
実証実験で得られた結果を活かして、空間へ木質材料をより効果的にお使いいただくようなご提案や、木材利用の促進にも繋がればと考えています。

東京大学 恒次氏
\共同研究者の恒次氏に聞きました/
今回は、実際に稼働しているシェアオフィスを実証の場とし,オフィスワーカーの方々に被験者としてご協力をいただいて測定を行うことができました。
このような研究事例は数が少なく,貴重なデータを得ることができたと考えています。このような実証を通して,人の健康や地球環境などに配慮したエビデンスに基づく材料開発,デザインが広まることを期待しています。
更なる検討が必要ですが、例えば空間の目的や与えたい印象に合せた木質化を行うことによって、よりワーカーが働きやすく、生産性や快適性が向上する空間作りに繋がるかもしれません。今後もDAIKENは内装木質化の効果を検証していきます!
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