シェアオフィスの木質化による効果を検証
~内装木質化の価値を探る~

2022.7.15

シェアオフィスの木質化による効果を検証~内装木質化の価値を探る~

林野庁補助事業の令和3年度 内装木質化等促進のための環境整備に向けた取組支援事業の「内装木質化等の効果実証事業」にて、大建工業は『シェアオフィスの内装木質化による生産性向上効果等の実証』を実施しました。

東京都千代田区にあるコワーキングスペース「point 0 marunouchi」の協力を得て、営業中のシェアオフィスの個室一部を内装木質化して、利用者に被験者となっていただく形で実証実験を行いました。

木材の効果を科学的に検証して、利用促進の足掛かりに

大建工業が内装木質化実証実験を実施するに至った経緯を教えてください。

栢野

2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(現:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)」が制定されました。非住宅建築物に木材活用することがとても重要になっており、建築物の内装の木質化もとても注目されています。
また、大学や研究機関などで、木材を空間に用いることによるストレス軽減や生産性向上など人への良い効果を検証するための研究が活発に行われており、今後も木材を使った空間は広がっていくと考えています。

2020年度から林野庁の補助事業として、内装木質化等の効果実証事業が開始され、昨年度の報告会を拝見しました。多くの事業者が、心理・身体面への影響や経済性といった様々な観点で評価検証をされており、DAIKENの木質内装建材でも同様に検証できるのではないかと非常に興味を持ちました。

シェアオフィスの木質化による効果を検証~内装木質化の価値を探る~

シェアオフィスでの内装木質化実証実験をどういった目的で実施したのでしょうか?

栢野

先述の通り内装木質化による、心理的・身体的な効果や生産性向上等の効果などの研究結果が報告されています。木質空間は漠然と「良い」と感じていたところを、事例や科学的な根拠をもってその良さを説明できることで、より納得感を持って木材を使っていただけるのではないかと思います。

DAIKENでは木質内装建材を扱い、空間づくりにご活用いただく提案をしています。木質化した空間で効果検証をすることで、より良いご提案を行っていくとともに、木材利用の促進に貢献できればと考えています。

こうした中、2021年4月より実証実験に取り組むことができる場として、共創型コワーキングスペース「point 0 marunouchi」に参画を開始したこともあり、今回シェアオフィスにおける木質化の効果検証の取り組みをさせていただくこととなりました。

オフィスの内装を木質化することにはどのような利点があると考えていますか?

栢野

リモートワークの浸透やウェルネス配慮など、働き方が多様化し、オフィスの在り方が変化していることに注目しています。
木質化によって、快適性や作業成績が向上したと言う事例があります。もし、ワーカーにも同じ効果があると言えた場合、ワーカー個人だけではなく、自社オフィスであれば企業の健康経営として、シェアオフィスであれば運営する企業が顧客獲得する際の訴求として、強みになると思います。これにより、内装を木質化することによって、ワーカー個人だけではなくオフィスに関わる企業にとっても複合的に様々なメリットを与えられる可能性があると考えています。

また、脱炭素社会の実現の観点からも、今まで木材をあまり使用しなかったところを木質化していくことは意義があることだと考えております。DAIKENでは、地域産材を活用した床材や壁材等を販売していますので、国産材の利用促進にも貢献したいと思っております。

また、木質資源の有効活用や働く環境の快適性向上はSDGsの考え方にもつながるものと考えています。

今回の内装木質化実証実験は東京大学大学院農学生命科学研究科恒次祐子教授との共同研究と伺っています。

栢野

そうですね。DAIKENは今回の補助事業の実施主体として取り組んでいますが、恒次祐子教授に実験の設計や効果を分析する方法の検討、データ分析、一部の実験実施など、主に学術的な面からのサポートをご協力いただきました。

シェアオフィスにおいて木質化による作業生産性への影響などを検証

今回の実証実験を実施した際の方法について教えてください。

栢野

コワーキングスペース「point 0 marunouchi」にある個人作業用の「personal room」を一部木質化し、各個室の中で一連の作業を行う被験者実験を行いました。一連の作業の成績や質問紙への回答、心拍や脳血流を測定し、木質化による作業生産性や心理的影響を検証しました。また、個室を木質化したことによる個室の利用率への影響の検証や利用者アンケートを実施しました。

シェアオフィスの木質化による効果を検証~内装木質化の価値を探る~

左:「非木質化」の個室
中央:「オーク」の突板化粧の床と壁で木質化した個室
右「ウォールナット」の突板化粧の床と壁で木質化した個室

今回の実証実験は「非木質化」の個室と「オーク」または「ウォールナット」を用いて床と壁を木質化した個室の計3つの個室を比較し、木質化に用いる樹種の違いによる効果の差を検証しました。
詳しくは「【実証実験】シェアオフィスの個室ブースの内装木質化」をご参照ください。

この実験の結果はいかがでしたか?

栢野

木質化した個室は非木質化個室よりも「あたたかい」「自然な」といった印象が高くなり、樹種によって、それぞれ被験者が受ける印象が異なる結果になりました。
例えば、オークは「賑やかな」「アイデアがわく」、ウォールナットは「高級な」「フォーマルな」「静かな」といった印象が高くなるという結果となり、同じ木質化でもだいぶ差があるということが示されたのは興味深いところだと思います。さらに、ウォールナットの個室は非木質化個室に比べて「だるさ感」や「ぼやけ感」などの疲労感が低い傾向だったり、解釈は慎重におこなっていますが、脳血流量にも差が認められたことが印象的でした。

実証実験で得られた情報を空間提案に生かす

栢野

今回、木質化の効果として樹種の差も示されましたが、例えばこのような結果から、空間の用途やもたらしたい印象に合わせた木質化のご提案につなげられればと思っております。更なる検証の蓄積や、製品面からもアプローチできればと思っています。

シェアオフィスの木質化による効果を検証~内装木質化の価値を探る~

内装木質化実験担当 栢野 旭代:大建工業株式会社 商品企画部 イノベーション課

天然木を使った商品を通じて業界の活性化へ

今回の実証実験の結果を踏まえ、現在、DAIKENで販売している商品で、今後、特におすすめしたい商品はありますか?

栢野

今回の実証実験では壁材に『グラビオUS』、床材は『コミュニケーションタフFW』という商品を使いました。いずれも天然木の突板を使用しています。壁材についても不燃性能を持った製品ですので、オフィスや公共・商業施設でもお使いいただけます。同じような突板製品では『グラビオルーバーUS』という商品もあります。これらは地域産材での製造にも対応していますし、様々な樹種が揃っているので、是非、非住宅建築での内装の木質素材を取り入れた空間づくりにご活用いただきたいです。

シェアオフィスの木質化による効果を検証~内装木質化の価値を探る~

左)壁材:グラビオUS〈 US13(オーク)〉天井材:グラビオルーバーUS〈US13(オーク)〉
右)床材:コミュニケーションタフFW(幅広タイプ)〈ハードメープル〉

今回の内装木質化実証実験を踏まえて、今後、DAIKENとしてどのように活かしていくのか、方向性などを教えてください。

栢野

木質化をすることによって、無機質な空間からあたたかみのある空間を作り出せます。また、そのような空間で過ごすことで、快適性や生産性を向上できる可能性があることから、これまではあまり木質化を用いられてはいなかったような空間にも、積極的に木質化をしていただけるような、商品の企画、ご提案ができればと思っています。

今後の検証等についてはまだ検討中ですが、これまで検証してきたようなことの深堀や、新しい検証等も取り組みたいと考えています。

創業当初から木質材料を提案しているDAIKENは、今後も木材利用の促進に貢献できるような取り組みを行っていきたいと考えます。

DAIKENの突板製品について詳しくはこちらから

グラビオルーバーUS

グラビオルーバーUS

グラビオUS

グラビオUS

コミュニケーションタフFW(幅広タイプ)

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