【第3回】クリニック経営者108名に聞いた「開業時に選んだ床・壁・天井材」

クリニック 内装

居心地の良い待合室に求めるのは、デザイン性・耐久性・特殊加工など

医院・クリニック・診療所(以下、クリニック)において、患者さんは待合室で長い時間を過ごすことも多いことから、居心地の良いデザイン・空間づくりは集患面においても大切です。また、クリニックは不特定多数の方が利用する他、杖や車椅子を使う患者さんが来院されることもあり、感染症対策や素材の耐久性などにも配慮が求められます。

そこでDAIKENでは、クリニック経営者108名へ待合室で採用した床・壁・天井材について独自調査を行いました。

クリニックの待合室で選んだ床材について

まずは、クリニックの待合室ではどのような床材が選ばれているのかについてご紹介します。

クリニック 内装

今回のアンケートで最も多かった回答はフローリングで約3割、塩ビタイル・長尺シートやクッションフロアもそれぞれ約2割いました。 クリニックならではの特徴としては、モルタルを選んだ方が2.8%と少ないこと。他の業態でモルタルを選んだ割合を見てみると、飲食店は15.4%、ヘアサロンは8.3%でした。

床材を選んだ主な理由は「耐久性」と「清掃性」

その床材を選んだ理由についての回答は次の通りです。

クリニック 内装

クリニックの床材選びでは、耐久性・清掃性といったメンテナンス面を重視した方が最も多く、どちらも約半数を占めました。また、清潔な空間を維持しやすい床材が支持を集めています。

ヘアサロンや飲食店の場合、床材の選定基準で最も高いのは「デザイン性」でしたが、クリニックでは約3割という結果でした。

その床材を使ってみた感想

次に、床材の素材別に使ってみた感想を紹介します。見た目の印象や耐久性についてのコメントが寄せられました。

<フローリング>
・掃除しやすく、清潔感あり
・閉塞感が無く明るい空間になった
・木の質感は良いが耐久性に問題があった

<塩ビタイル・クッションシート>
・開業から36年問題なく使っている
・本物の素材が良かったが、予算面で選定した
・耐久性があって良い。汚れも拭けばキレイになる。

<クッションフロア>
・子供が転んでも、大きなけがはしない。足音やものを落としたときに大きな音がしない。
・患者さんの転倒などの安全性
・椅子の重みで破れてくる

クリニックの待合室で選ばれている壁材について

続いて、待合室の壁材選びについて見ていきましょう。まずは、クリニック経営者が選んだ壁材について紹介します。

クリニック 内装

半数以上の方がクロスを選択しています。他の業態では人気の高い木材の使用率が低いのも特徴的と言えるでしょう。木材を選んだ割合は飲食店では26.0%、ヘアサロンは17.6%ですが、クリニックでは1割未満(9.3%)です。

壁材ではデザイン性が重視されている

床材で重視されたのは耐久性や清掃性でしたが、壁材ではどうだったのでしょうか。壁材を選んだ理由は以下の通りです。

クリニック 内装

最も多い理由はデザイン性で、43.3%の方がその壁材を選んだ理由として挙げていました。この、壁紙を選ぶ際にデザイン性を重視する傾向は、飲食店やヘアサロンと共通しています。ただし飲食店は60.8%、ヘアサロンは51.1%の回答率であったことから、クリニックの壁材選びでは価格やメンテナンス性など他条件も重要視されていることが分かります。

その壁材を使ってみた感想

アンケートから、その壁材を使ってみた感想をピックアップしました。

<クロス>
・清潔感があり選択してよかったと思います。
・ぬれた雑巾で拭くことができるので手垢や汚れがついてもきれいにできる。ルビスタで拭くことができる。デザインが豊富。
・汚れ、傷が目立つことが難点。

<塗り壁>
・高級感と耐久性がいいと思った。
・安価だったが、全体的なデザインにマッチしていた

<木材>
・落ち着く感じ
・原状復帰も楽そうで満足です
・汚れに強い

クリニックの待合室で選ばれている天井材について

床・壁に続いて、最後は天井材についてのアンケート回答を紹介します。

クリニック 内装

飲食店やヘアサロン同様に、一番人気が高い天井材はクロスです。そしてここでもクリニックならではの特徴が表れています。2番人気の岩綿吸音板は、他の業態ではあまり選ばれない素材です。飲食店やヘアサロンで岩綿吸音板を選ぶケースは、いずれも1割にも届きませんでした。

天井材選びではデザイン性、価格、吸音性が重視されている

次に、天井材を選んだ理由についての回答を見ていきましょう。

クリニック 内装

約4割の方が「デザイン性」と回答しています。続いて「価格」が約3割、「吸音性」が約2割という結果になりました。歯科クリニックでは歯を削る音などの治療音が響くことがあり、診察室や処置室へ吸音材を使用するケースがあります。待合室においても、吸音性能の需要は一定数あるようです。

その天井材を使ってみた感想

クロス、岩綿吸音板、塗り天井を使ってみた感想をそれぞれ紹介します。

<クロス>
・明るい感じで仕事中も疲労感が少ないです。
・耐久性が高い
・照明によって日焼けする

<岩綿吸音板>
・反響音が抑えられて話しやすい
・静かな環境を確保できて満足しています

<塗り天井>
・待合室も高級感が漂って良かったと思う

クリニックでは清掃性や安全性、吸音性に配慮した素材が選ばれる傾向に

クリニックの床・壁・天井材選びでは、飲食店やヘアサロンと比べて安全性が重視され、天井材に関しては他業種よりも吸音性で選ぶ方の比率が高いことが分かりました。一般的な店舗の内装では「居心地の良さ」がポイントになりますが、クリニックは「体調が悪いときに来ることが多い場所」であるがゆえに、清潔感や静かさへも配慮することが求められます。

建築士や内装工事業者は予算に配慮しつつ、清掃性や安全性、吸音性に優れた素材を提案することで、クリニック経営者も納得の施設設計が行えるのではないでしょうか。

recomended item

おすすめ製品