病院のドアに求められる機能は?場所別のドア選びのポイント

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
病院のエリアごとに適した機能を持つドアを選ぶことは、施設環境の質を高めるうえで欠かせません。特に、衛生面や防音性、バリアフリー性に優れたドアを採用することで、患者のプライバシーや出入りする際の安全性の確保、また医療従事者の業務効率の向上に大きく貢献します。
今回は、病院に求められるドアの機能や選び方のポイントについて、エリアごとに解説します。
病院のドアに求められる主な機能
病院のドアは、患者や医療従事者が日々使用するため、機能性と安全性が求められます。病院のドアに求められる具体的な機能と、それぞれの用途に応じた選び方のポイントについて解説します。
●衛生対策
感染症予防のため、病院では衛生面への配慮が重要視されます。特に、ドアやドアノブ、取っ手は不特定多数の人が直接触れるため、病気の感染経路とならないように、清潔さを維持しやすいドア選びが大切です。抗菌・抗ウイルス性能を備えた製品を採用することで、接触による病気の感染を抑制する効果が期待でき、病院内の衛生環境向上の一助となります。
●開け閉めのしやすさ
病院には、車椅子の利用者や高齢者、子どもを含め幅広い層の患者が訪れます。中には、取っ手を押したり引いたりして開閉するドアの使用が難しい人も少なくありません。そのため、弱い力でも簡単に開閉できる、バリアフリーに対応したドアを選ぶことが大切です。
さらに、開けたドアがゆっくり閉まる機能や指を挟みにくい設計がされているドアであれば、より安全に出入りできます。
あらゆる人や状況に対応できるドアを選ぶことは、患者に安心感を与えるだけでなく、医療機器や台車による移動もスムーズになるため、医療従事者にとっても大きなメリットとなるでしょう。
●高い防音性
診察室では、医師と患者の会話が外へ漏れないよう防音性能が求められます。診察中の会話が待合室にいる人に聞こえてしまうと、患者が安心して診察を受けられず、不安を感じる原因となりかねません。そのため、防音性能のある壁材や天井材を使用のうえ、さらに音漏れを抑制する防音ドアを採用することが、プライバシーを確保するために重要です。
診察室に防音対策を講じることは、患者の安心感を向上させ、病院全体の信頼性を高めることにつながります。また、医療従事者にとっては静かな環境が整うことで集中して医療に向き合えるため、より質の高い医療サービスの提供が可能になるでしょう。
【場所別】病院のドア選びのポイント
病院の各エリアでは、それぞれ異なる機能や仕様のドアが求められます。「待合室・診察室」「トイレ」「手術室」「放射線室」「入院部屋」の5つのエリアにおける、適切なドア選びのポイントを解説します。
●待合室・診察室
待合室や診察室では、患者の病気やケガについての会話内容を保護する「スピーチプライバシー」に配慮することが重要です。実際に、医療施設を利用したことのある方を対象にアンケートを実施したところ、病院・クリニックを選ぶ際に、騒音や音漏れを気にしている人が多いという結果が出ています。そのため、特に待合室や診察室においては、音環境への配慮が非常に重要と言えるでしょう。
⇒患者499名への調査で見えた“選ばれる医療施設”の姿 設計段階でできること
音環境の向上に役立つドアとして、DAIKENの『音配慮吊戸・片引』を紹介します。この製品は、診察室からの音漏れを軽減するように設計されており、一般的な吊戸と比較すると音漏れを約50%軽減します。優れた遮音性により、診察室での会話の内容が待合室や廊下に漏れるのを抑え、患者と医師の双方が診察に集中しやすい環境づくりに貢献します。

●トイレ
病院のトイレは、車椅子利用者や体が不自由な人が出入りしやすい、バリアフリー設計が求められます。開口部が十分に広く、軽い力でスムーズに開閉できる引戸が理想的です。
車椅子利用者が簡単に操作できるように、手が届きやすい位置に鍵を設置するのも大事なポイントです。自動式引戸の場合は、押しボタン式を採用することで、さらなる使いやすさを実現できます。抗菌・抗ウイルス性能を備えたドアを採用して衛生面を強化すれば、感染症予防にも役立ち利用者の安心感が高まるでしょう。
参考:「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(国土交通省)
●手術室
手術室は、病院の中でも特に厳しい環境管理が必要です。空気の清浄度を保つため、基本的に手術室内は特殊な換気システムが採用されており、外部からの空気の流入を完全に遮断しつつ、清潔な空気のみを内部に取り入れる仕組みが整えられています。また、手術室内の臭気や消毒臭などが外部に流出しないよう、ドアには高い気密性が求められます。さらに、手術中の音が室外に漏れるのを防ぎつつ、室外の音が手術室内に届くのを防ぐことも重要です。気密性と遮音性を兼ね備えたドアや二重ドアを採用すれば、目に見えないホコリや細菌などを防ぎつつ、手術室内外の環境を適切に保つことが可能です。
●放射線室
放射線室は、放射線(X線)が人体に与える影響を最小限に抑えるために、安全性を高める必要があります。特に、ドアやドア枠には放射線を吸収する特性を持つ鉛を使用し、放射線の透過や漏洩を防止することが重要です。また、ドアの開閉時に接合部の隙間から放射線が室外へ漏れるのを防ぐために、寸法や設計に高い精度が求められます。放射線室の遮蔽性を高めることは、放射線室の内外の安全性を向上させ、患者や医療従事者の健康の保護につながるため、ドア選びや設計には細心の注意を払いましょう。
●入院部屋
患者が入院する病室のドアは、頻繁に医療従事者が出入りし、ストレッチャーや車椅子を利用する患者の出入りもあるため、特別な配慮が必要です。少ない力で開けられるだけでなく、自動的に扉が閉まる自閉機能を備え、さらに頻繁な開閉にも耐えられる高い耐久性を持つドアが求められます。
DAIKENの『おもいやりドア』は、こうした入院部屋のニーズに対応できる製品です。自閉機能を備えたタイプは、ドアを全開にすればその状態を保持し、にぎりバー(取っ手)から手を放してもゆっくり扉が閉まるため安全に通行できます。また、優れた耐久性を持つため、頻繁に開け閉めをしても壊れにくいという特長もあります。加えて、抗ウイルス機能や耐薬品性能(消毒薬液でお手入れ可能)があるため、衛生的な状態を保ちやすい点も入院部屋におすすめのポイントと言えます。
病院のドアの施工事例
どのようなドアを選ぶかによって、患者や医療従事者の快適性・安全性が変わります。ここでは、診察室の音漏れに配慮してドア選びをした事例について紹介します。
●だて動物病院/岡山県

岡山県総社市にある、だて動物病院は、予防医療をはじめ、CT検査やMRI検査、外科手術など幅広い高度医療に対応しており、患者数の増加や最新医療機器の導入に伴い、増改築を重ねてきました。
2022年の増築の際は、飼い主と動物たち、医師が落ち着いて医療に向き合える環境を整えるため、診療室のドアに音漏れに配慮した引戸『音配慮吊戸』が選ばれました。
引戸の採用は、飼い主が動物を抱きかかえたまま出入りできるよう、広い開口寸法を確保したいという理由からでした。また、一般の引戸と比較して気密性・遮音性が高いことが採用の決め手になっています。
採用した後の実際の使い勝手や施工面のメリットについて気になる方は、以下の記事をぜひご覧ください。また記事では、実際に使用されている様子やインタビューを動画でもご紹介しています。
⇒診察時の音漏れ配慮で人も動物も落ち着ける動物病院を実現
「●だて動物病院/岡山県」の内容は、上記記事の要約です。
『音配慮吊戸』の詳しい遮音性能を確認したい方は、下記の動画も併せてチェックしてみてください。
ドア選びは病院の環境を左右する重要な選択
病院のドアは、患者に安心感を与えるとともに、医療従事者が働きやすい環境を整えるための重要な要素です。エリアごとに求められる機能を備えたドアを選ぶことで、衛生面の向上やバリアフリー対応、防音性の確保といった病院全体の質を大きく向上させることができます。適切なドアを選び、快適で信頼性の高い医療環境を実現しましょう。
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