個人情報を守るために抑えておきたいプライバシーへの配慮

プライバシーの侵害

病院やクリニックに行った時、診察室から医師と患者の会話が聞こえてきて気になった経験はありませんか? 医療施設で交わされる会話は他人に知られたくない内容が多く、外部に漏れることは患者のプライバシーに関わる重大な問題です。

個人情報やプライバシーに関する大切な情報をしっかりと守ることができない医療施設では、患者は安心して診察を受けられません。そこで今、医療施設に求められているのが、デジタルデータや紙による情報の流出防止対策に加え、診察室の環境を整えることで情報の安全性を高めるスピーチプライバシー対策です。

近年、重要性が高まっているスピーチプライバシーについて、病院やクリニックで取るべき対策や効果的な建材を紹介します。

医療施設におけるプライバシーの侵害について考える

スピーチプライバシーとは、個人情報や他人に聞かれたくない重要な会話のことで、これが第三者に漏洩することによって生じるプライバシーの侵害を防ぐことが、医療機関に強く求められるようになってきました。
医療機関の診察室では、会話の内容がデリケートになりがちです。にもかかわらず、多くの病院やクリニックの間取りは待合室から診察室へ直接出入りできるようになっており、薄いドアや壁で仕切られているだけの状態です。
そのため、待合室にいる他の患者に、診察中の患者に対する病状の説明や治療法、患者の悩みごとなど、繊細な会話の内容を聞かれてしまう心配があります。

DAIKENが2019年に医師と患者の双方に対して行ったアンケート調査によると、患者の76%が「診察室の会話が漏れないように対策を行ってほしい」と考えている一方で、医師の69%が「自身の病院(もしくはお勤めの病院)は会話漏れ対策を行っていない」と回答しています。このように、会話漏れ防止が求められているにもかかわらず、十分な対策は取られていないのが現状です。

●質問:診察室の会話が漏れないように、対策を行ってほしいですか?

スピーチプライバシー

●質問:ご自身の病院(もしくはお勤めの病院)で会話漏れ対策を行っていますか?

スピーチプライバシー

※参考記事:「医師と看護師に関わる守秘義務の話 会話漏れを防ぐ音対策で選ばれる病院へ

このような環境下では、患者が診察中に不安を感じやすいので、正直に自分の症状や悩みを医師に伝えられず、相談をためらってしまうことも考えられます。
そのため、診察室内での会話が待合室や廊下にいる他の患者に聞かれないように対策を講じることは、プライバシーの保護だけでなく、医療機関の信頼性を高めることにもつながるのです。

また、音が待合室に漏れないように配慮するのと同時に、診察室内で医師と患者がお互いの声をしっかり聞き取れるように環境を整えることも、診察や治療をスムーズに進めるための重要なポイントとなります。

個人情報を守るために抑えておきたいプライバシーへの配慮

プライバシーの侵害

個人情報というのは、氏名、住所、顔写真など、特定の個人を識別できる情報のことです。また、プライバシーは、他人に知られたくない個人の私事や私生活を指します。個人情報もプライバシーの一種といえるため、これらの概念は同一視されることが多いといえます。

特に医療機関では、必要性があって患者の個人情報やプライバシーに立ち入るため、また病歴は「要配慮個人情報」にあたるため取り扱いには細心の注意が必要となります。個人情報やプライバシーへの配慮が実感できるように整備された環境は、患者に安心感を与えて信頼を得るための第一歩でもあります。

医師が病状や治療方針について説明し、患者・家族が説明を理解したうえで同意や選択をするインフォームドコンセントの重要性など、患者と医療提供者の間で信頼関係の構築が必要であることは今もこれからも変わりません。診察室の内部に静寂性が感じられ、会話が外に漏れないことを実感できれば、患者は安心して医師に相談でき、治療を受けられます。患者がよりオープンに自身の状態を話せる環境は、信頼関係の構築にも寄与するでしょう。

会話の音漏れを防いで個人情報の漏洩やプライバシーに配慮するためには、具体的に以下のような施策が挙げられます。

・他の患者への電話対応の声が聞こえないようにする
・名前による患者呼び出しを避ける
・待合室の椅子を患者同士の目線が合わないように配置する
・診察室のドアや壁材、天井材などに防音効果の高い素材を使う

このように、ソフト(人的対応)とハード(施設・設備)の両面から配慮することが求められます。

診察室におけるスピーチプライバシー対策

プライバシーの侵害

診察室での会話が待合室で待機している患者さんに聞こえにくくする方法のひとつとして、BGMを流す方法があります。こちらは手軽にできますが、大きな音で他の音をかき消そうとすると、院内が騒々しく落ち着きのない環境になってしまいます。逆に、患者さんが不快に感じてしまうかもしれません。

大切なのは、診察室から漏れている音を完全に消すのではなく、待合室にいる患者さんに話している内容が聞き取りにくくなる程度にまで音量を下げることです。
そこでおすすめなのが、内装に遮音対策をする方法です。診察室の壁や天井に、遮音パネルや吸音ウールや遮音シートを設置し、部屋の外に音が漏れるのを防ぎます。こうした遮音対策によって、機密情報やプライバシーの漏洩を防ぐことに繋がります。
さらに、吸音性能のある天井材や壁材を使用することも効果的です。室内の声の響きが和らぎ、診察中の医師や患者の声もお互いに聞き取りやすくなります。

出入口からの音漏れにも注意

プライバシーの侵害

診察室には、お年寄りや車椅子の患者、さらに話を聞くために家族も一緒に入る場合があります。そのため、出入口はできるだけ間口を広く確保でき、安全に開閉しやすく、バリアフリーにも対応した引き戸・吊り戸タイプが最適です。
しかし、一般的な引き戸・吊り戸を使用している診察室の場合、ドアの隙間から音が漏れやすい傾向にあり、診察室の壁や天井を遮音しても不十分な可能性があります。

そのため、スピーチプライバシー保護に優れた医療施設にするには、ドアの遮音性を高めることも重要なポイントとなります。現在、吊り戸に音漏れ対策がされている製品もあるため、そのようなドアを採用することで患者のプライバシーや個人情報に配慮した診察室がつくれます。

スタッフルームからの音漏れにも配慮

スタッフルームの位置が患者の往来する通路や待合室に面している場合は、診察室と同様に、内装に遮音対策をしましょう。万が一、スタッフ同士の会話に患者の情報が含まれる場合は、プライバシーの侵害となってしまうため、会話が外に漏れないように配慮することが大切です。

病院における顧客満足度「患者満足度」の向上にもつながる

プライバシーの侵害

患近年の医療業界が、患者側が評価した病院の顧客満足度「患者満足度」を重視するようになってきたのは、ご承知の通りです。患者満足度は最新の治療が受けられたり、充実した設備を備えたりしているということだけでなく、ホスピタリティや居心地の良さ、待ち時間といったサービスの質的問題にも左右されます。

患このサービスの質を決める要素として、患者のプライバシーに配慮されているかが重要な位置を占めます。

患厚生労働省が令和2年に実施した受療行動調査の「項目別満足度」では、外来における「診察時のプライバシー保護の対応」という項目で「満足」と答えた人の割合が57.0%でした。平成26年の同調査では50.9%だったので改善傾向にあるものの、まだ全体の6割にも達していません。

患患者満足度を高めるには医師やスタッフとのコミュニケーションを改善することや、プライバシーに対する徹底した配慮が必要だと思われます。そのためには人財教育と並行した「患者満足度を高める環境」づくりが必要となるでしょう。

患患者満足度を高める環境とは、会話が漏れないことがはっきりとわかる静寂な診察室、優しい色合いと正常な空気でリラックスできる待合室の環境、それにホスピタリティ溢れるスタッフの対応ではないでしょうか。

医療機関の信頼性を高めるために適切な防音対策を

患者は適切な治療を受けるために、他人に知られたくない内容だとしても、気になる箇所などについて正直に伝える必要があります。しかし、来院した際に診察室の外に会話が漏れていることに気づいたらどう感じるでしょうか。
音漏れ対策をしっかり講じることは、患者のプライバシーを守り、医療機関の信頼性を高めるためにとても重要なのです。患者のスピーチプライバシーを守り、信頼度の高いクリニック・医院・診療所にしましょう。

公開日:2023.10.23 最終更新日:2024.02.27

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