病院建築の考え方やポイントは?必要な対策と実際の建築事例

病院建築

病院やクリニックの建築には、施設の規模や診療科の種類に応じた動線計画や、長期的な視点での設計が不可欠です。さまざまな年齢・健康状態の患者が利用するため、プライバシー性の確保やリラックスできる空間づくりも重要な要素となります。まずは、病院建築の基本となる考え方をしっかり押さえ、適切な対策を取りましょう。

本記事では、理想の病院建築を実現させるために、基本設計における大切なポイントをご紹介します。

病院建築の考え方と計画のポイント

病院建築では、まず患者目線に立ち、プライバシー性に配慮することが求められます。さらに、将来的な建物の老朽化や機能変更を見据え、改修や増築に対応しやすいよう想定しておくことが大切です。

●病院建築の考え方

病院建築でまず大事な考え方は、「患者の立場に立つ」ことです。病院やクリニック内ではデリケートな会話が多いため、患者のスピーチプライバシー(後述)をどのように守るかが重要な鍵となります。特に、待合室にいるときに診察室から医師と患者の声が聞こえてくる環境では、患者は安心して診察を受けられません。人に知られたくない病名・症状といった相談ごとや個人情報が外部に漏れないように設計することは、病院建築での重要なポイントです。

また、病院は病気やケガなどにより体が不自由な人が多く利用する場所なので、スムーズに移動できる動線計画も欠かせません。最短距離で必要な場所に着けるように移動経路を計画することで、ストレスなく病院を利用してもらえるようになります。

●病院建築の計画のポイント

病院建築は、長期的な視点で計画することが求められます。建物や設備の老朽化、大型の検査機器の導入、診療部門の縮小・拡大といった将来的な改修・増築などに対応できるように計画することで、病院の長期的な運営が可能になるのです。

さらに、診療科ごとの特性を考慮した計画も重要です。例えば、呼吸器内科では、他の患者への感染防止対策が特に必要なため、メインの診察室とは別に隔離待合室や処置室を設置する場合があります。心療内科では、患者のプライバシーを守るため、患者同士の視線が合わないように診察室への動線に配慮する必要があります。また、小児科は、子どもが出入りしやすく、ベビーカーでの来院にも配慮して段差を解消したり、入口を広く取ったりする必要があるでしょう。さらに、子ども用トイレや、授乳・おむつ替えができる多目的トイレを設置することで、より利用しやすい環境を提供できます。

病院建築で押さえたい注意点と対策

病院建築の設計において、特に重要なポイントとなるのは、「スピーチプライバシー」「安全性」「衛生面」の3点です。患者が安心して利用できる病院にするために、対策ポイントや注意点を押さえておきましょう。

●スピーチプライバシーの対策

スピーチプライバシーとは、患者の個人情報や会話が、第三者に聞かれないよう配慮することです。会話をかき消すためにBGMを大きくかける方法もありますが、院内全体が騒がしくなってしまいます。理想は、診療室やカウンセリングルームで行われた会話の内容が待合室や廊下で聞き取れないレベルに防音対策をすることです。さらに、診療室やカウンセリングルームにおいては、医師と患者それぞれの声が明瞭に聞こえる環境づくりも大切です。

スピーチプライバシー対策には、音を遮断するパーテーションや壁・天井材の使用や、遮音性の高いドアの導入などが効果的です。例えば、吊り戸タイプの室内ドア『音配慮吊戸』は、一般的な吊り戸よりも音漏れを約50%軽減できます。インセットタイプ・アウトセットタイプの2種類があり、新築時はもちろん、改修・増築時にも導入しやすい特徴があります。また吸音天井材『メディカルトーン』は、吸音性能に優れているだけでなく、高い消臭機能も備えています。

カウンセリングルーム仕様提案 スピーチプライバシーを守ろう!

●安全への対策

さまざまな年齢や健康状態の人が利用する病院では、バリアフリーやユニバーサルデザインが重要視されます。バリアフリーとは、主に高齢者や障がい者にとって生活の障害(バリア)となるものをなくしていこうとする考え方です。段差の解消や手すりの設置、滑りにくい床材の採用など、安全に過ごせるようにサポートします。一方、ユニバーサルデザインは、特定の人を対象とするのではなく、すべての人が使いやすいように配慮したデザイン手法です。
参考:「バリアフリーとユニバーサルデザイン」(総務省)

病院内は、患者や医療従事者の往来、医療機器やワゴンの移動があるため、あらゆる状況に対応できるように安全性を高めた計画が欠かせません。そこで有効なのが、『おもいやりドア』です。敷居がないためつまずきにくく、レバーを軽く引くだけで扉がゆっくり自動的に閉まる自閉機能を備えており、高齢者や車椅子の方もスムーズに出入りしやすくなります。また、扉が閉まっている間に人や障害物に当たると自動で全開するため、安全性をより向上できる点が特長です。

滑りに配慮した床材の採用も必要です。『おもいやりフロアV-VS』は、高齢者でも快適な歩行感を生み出す工夫が施されています。車椅子の走行傷や水・汚れにも配慮し、お手入れしやすいので長く快適に使えるでしょう。

ユニバーサルデザインが医療施設に求められる理由 バリアフリーとの違いとその概念

●衛生面の対策

病院内では、多くの人がドアノブや手すりに直接触れるため、日頃から消毒などによる衛生対策が欠かせません。手が触れる部分に「抗ウイルス」「抗菌」「消毒可能(耐薬品)」といった機能を備えた、にぎりバー・レバーハンドルを取り入れて、病院全体の衛生環境を向上させましょう。物を置くカウンターやスタッフが利用するバックヤードの収納など、頻繁に接触する場所にも同様の仕様を導入すると、より衛生的な環境を保てます。さらに、壁を支えにして歩くこともある廊下には、抗菌・消毒可能(耐薬品)機能を備えた壁材を使用するのもおすすめです。

「抗ウイルス」「抗菌」「消毒可能(耐薬品)」でつくる施設空間

病院建築の実例

スピーチプライバシー対策を重視した、岡山県の「だて動物病院」の実例をご紹介します。DAIKENの『音配慮吊戸』の採用により、動物も飼い主もリラックスでき、さらに医師も落ち着いて医療に向き合える環境を整えることができました。

病院建築の実例

動物病院は、ケガや病気を抱えた動物たちも飼い主さんも緊張しやすいため、できるだけ緊張を和らげる空間づくりが必要です。そこで、開放的な空間づくりに加え、音の面でもリラックスできるように、遮音性に配慮しました。診療室のドアには、DAIKENの『音配慮吊戸』を採用。診療室内での会話音などが、待合室に漏れなくなったことで、動物たちも飼い主さんもリラックスできるようになり、医師も落ち着いて医療に専念できるようになりました。

また、動物病院は飼い主さんが動物を抱えて出入りするため、開口寸法が十分にあり、開閉作業がスムーズな引き戸が求められます。採用したドアは楽に開閉でき遮音性も高く、診療室に入るととても静かです。声の大きい大型犬や興奮している猫もリラックスでき、飼い主さんともじっくり話ができる環境が実現しました。

設計の工夫や重視したポイント等をさらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
診察時の音漏れ配慮で人も動物も落ち着ける動物病院を実現
「病院建築の実例」の内容は、上記記事の要約です。

病院のプライバシー性を高め、落ち着いて過ごせる快適な環境を実現しよう

病院建築において、「スピーチプライバシー」「安全性」「衛生面」という3つの観点は欠かせない要素です。さらに、長期的な視点で設計を行うことで、将来にわたって快適性や機能性を維持できる病院空間を実現できます。下記のカタログでは、病院の新築時や改修時に役立つヒントをまとめていますので、ぜひご覧ください。
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