オフィスエントランスの重要性とは?設計ポイントや注意点、施工事例

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
目次
オフィスのエントランスは、訪れる人が最初に目にする「企業の顔」です。そのため、企業イメージやブランド価値を伝える重要な役割を果たします。また、従業員のモチベーションや働きやすさにも密接に関わっており、設計の工夫次第で社内外に良い影響をもたらすことが期待できます。
本記事では、オフィスエントランスの設計におけるポイントや注意点、施工事例をもとに、建築士や設計関係者が押さえておきたい視点を解説します。
オフィスのエントランスが重視される理由
オフィスのエントランスは、来訪者や従業員に良い印象を与え、企業価値を高めるための重要な空間です。オフィス空間の中でエントランスが特に重視される理由を、具体的に見ていきましょう。
●企業の第一印象に影響するため
エントランスは来訪者の受付対応を行うという機能だけでなく、企業の第一印象を左右する空間です。会議室や応接室に向かう来訪者が最初に接する場所として、エントランスでの印象は企業全体の評価に影響するでしょう。明るく清潔感のある空間は安心感や信頼感を与え、来訪者に好意的な印象を残す要因となります。一方で、雑然とした環境では不安や不信感を抱かれる可能性があります。
意匠性の高いオフィスデザインを採用すると、企業独自の価値観やセンスを効果的に表現でき、競合との差別化を図ることも可能です。
●企業のブランドイメージを表現するため
オフィスのエントランスは、企業のブランドイメージを具体的に表現する場でもあります。エントランスで企業理念やビジョンを表すことで、訪れた人に「どのような会社か」を視覚的・感覚的に伝える効果が期待できます。
例えば、先進技術を強みとする企業であれば、無人受付システムやタッチパネル、デジタルサイネージなどを導入し、ハイテク感を演出することが考えられます。また、環境配慮を重視する企業であれば、再生素材を使用した家具や壁面の緑化、自然光を取り込んだ開放的な設計などによって企業の価値観を表現できます。
オフィスブランディングについて、詳しくは下記で解説していますので、併せてご確認ください。
⇒「オフィスブランディングはなぜ重要?基本の考え方と設計のポイント」
●従業員の満足度を高めるため
見落とされがちなのが、従業員に対する心理的効果です。来訪者へのイメージづくりだけでなく、毎日その空間を通る従業員にとっても、エントランスの設計は大きな意味を持ちます。
例として、おしゃれで明るく清潔な雰囲気や、自然光の取り込み、快適な温熱環境、適切な音環境などは、出勤時や退勤時の精神面に影響を与えるでしょう。さらに、その企業らしさが感じられる空間であることは、働くことへの誇りや帰属意識を育む要素にもなり、日々の業務に対するモチベーションの向上が期待できます。
オフィスエントランスを設計する際のポイント
ここでは、オフィスのエントランスを設計する際に考慮したいポイントについて解説します。企業の世界観を視覚化し、来訪者と従業員の双方に訴求する空間設計が求められます。
●コンセプトの一貫性を保つ
エントランスの設計では、まず空間の「コンセプト」を明確にすることが重要です。これは単に、装飾やレイアウトを決めるという意味ではなく、空間を通じて企業がどのようなメッセージを発信したいかを定義することを指します。
コンセプトを設定する際には、企業の理念やミッション、事業内容、そして働く従業員の文化や価値観を丁寧に言語化し、それを空間に落とし込む必要があります。建築主側ですでにコンセプトが明確化されていればそれをもとに設計し、固まっていなければヒアリングを通して、言語化を進めていく必要があります。
コンセプトを基調とした設計は、空間に一貫性を持たせ、全体に統一感を与えるとともに、企業の世界観を強く印象づけることが期待できます。
●ロゴやシンボルを効果的に配置する
企業のロゴやシンボルマークは、エントランスにおける企業の顔とも言える重要な要素です。視認性の高い場所に戦略的に配置すると、来訪者に対して企業の存在感や信頼感を強くイメージづけることが可能です。受付の背面や入口正面の壁面など、自然と目線が集まる位置を選ぶと、その効果は一層高まるでしょう。
ただし、ロゴやシンボルマークが単体で浮かないよう、空間全体との調和も考慮する必要があります。背景の色味や素材感、照明とのバランスをとることで、洗練された一体感のある演出が可能です。例えば、木目調のパネルやガラス、金属素材と組み合わせると、企業の雰囲気に合わせた表現ができるでしょう。
また、動線上にロゴを配置すれば、無意識のうちに記憶に残るブランディング効果も期待できます。立体感や陰影のある質感、照明による演出を加えることで、視覚的な印象をさらに強化し、上品で印象的な空間に仕上がります。
●コーポレートカラーを戦略的に取り入れる
エントランスを企業ブランディングに役立てるには、コーポレートカラーの活用も有効な手です。企業の印象を強くイメージづける色彩を空間に取り入れると、ブランドの統一感や存在感を高め、イメージアップへつなげられるでしょう。
カーペットや壁面、受付カウンターなど、視界に入りやすい要素に配色のアクセントを加えると、視覚的な統一感とともに、ブランドアイデンティティを印象づけることが可能です。
例えば、壁面や什器などにコーポレートカラーを使用すると、企業イメージを空間全体に浸透させることができるでしょう。サインや案内表示などに活用すれば、色によって動線やゾーニングを明確にする効果も期待できます。
●来訪者への「歓迎」の意図をデザインに込める
来訪者へのホスピタリティをエントランスの設計に組み込むことも意識しましょう。エントランスは会議室や応接室までの通過点ではなく、企業の「おもてなし」の精神を体現する場でもあります。
快適なソファや美しく配置された観葉植物、木目のカウンターなどを取り入れると、温もりや安心感を伝えることが期待できます。さらに、自然光を効果的に取り入れることで明るく開放感のある雰囲気を演出でき、朝や夕方など時間帯による変化も空間の魅力を高めてくれるでしょう。
香りの演出もまた、印象を左右する重要な要素です。例えば、アロマディフューザーを用いて自然な香りを漂わせると、来訪者の緊張を和らげることができます。
このような五感に訴える工夫を丁寧に設計に反映させれば、企業の姿勢やホスピタリティの深さを伝え、訪れた人々に好印象を与えることができるでしょう。
●照明計画で空間の印象を演出する
空間演出の印象を決める要素として、照明計画は非常に重要です。照明は単に明るさを確保するための設備ではなく、空間の雰囲気や品格を左右する要素でもあります。例えば、時間帯に応じた調光機能を備えると、朝と夕方の印象を柔軟に変化させ、空間にリズムをもたらすことが可能です。
色温度の選定によっても印象は大きく変わります。温かみのある電球色はリラックス感や親しみやすさを演出し、昼白色は清潔感や知的な印象を与えるなど、設計の意図に沿った演出が求められます。また、スポット照明を活用すれば、木目や金属、布といった素材の質感を引き立てることも可能です。
照明の配置や照度のバランスも重要で、空間に陰影を生み出すことで立体感を強調したり、エントランスに奥行きを感じさせたりする効果も期待できます。空間の印象をより豊かに演出するためには、デザイン性だけでなく光の持つ心理的効果にも配慮した照明計画が必要です。
オフィスエントランスを設計する際の注意点
オフィスのエントランスを設計する際には、快適さと安全性、運用効率を考慮しつつ多目的に対応できる空間設計が重要となります。
●機能性やセキュリティ面を考慮する
エントランス空間では、デザイン性を高めると同時に、使いやすさとセキュリティも重視する必要があります。来訪者が迷わないよう、受付周辺の動線を整理し、案内サインや表示を明確にすることが大切です。多くの人が行き交うため、アクセスの管理や情報漏洩の防止対策は設計時に計画しておきましょう。
セキュリティ対策としては、ICカードによる入退室管理や、来訪者を効率的に受付できるシステムの導入が有効です。近年は衛生面への配慮から、非接触型の受付システムを取り入れる企業も増えています。
また、ワークスペースとの間に視線を遮るためのパーテーションを設置したり、オフィス内からの音漏れを防ぐ工夫を取り入れたりすることで、プライバシーと快適性を保ちつつ、安心感のある空間を実現できます。
●従業員にとって使いやすい空間にする
従業員が働きやすい動線の確保も欠かせません。毎日の出勤・退勤や昼休みの移動など、日常的に利用される場所だからこそ、快適で効率的な動線計画が求められます。
受付付近での人の交差や滞留は、業務に支障をきたす原因になりやすいため、スムーズな移動を促す空間設計が重要です。
来訪者と従業員の動線を分離すると、混雑を防ぎつつ相互のストレスを軽減できます。例えば、従業員専用の出入口や通路を設けると、業務上の移動が円滑に行えて業務効率も向上します。
こうした工夫により、従業員にとってストレスの少ない働きやすい環境を実現しましょう。
オフィスエントランスの施工実例
ここでは、オフィスエントランスの施工実例を紹介します。実際の事例から、オフィスエントランスの設計におけるヒントを得ることができるでしょう。
※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。
●株式会社アヴェントハウス/東京都

【使用製品】
壁材:グラビオエッジ カルセ<アイボリー柄>
壁材:グラビオエッジ カルセ<ライトグレー柄>
壁材:グラビオエッジ カーヴァ<ネイビーブルー柄>
●神姫バス不動産株式会社 事務所/兵庫県

【使用製品】
壁造作材:グラビオルーバーUB 直付式〈ティーブラウン柄〉
※グラビオルーバーは床面から50mm離して施工してください。
●野田瀬戸物流センターA棟/千葉県

【使用製品】
壁造作材:グラビオルーバーUB 直付式<ティーブラウン柄>
壁造作材:グラビオルーバーUB 直付式<UB30(ウォールナット柄)>
壁造作材:グラビオルーバーUB 直付式<UB73(樺桜柄)>
※グラビオルーバーは床面から50mm離して施工してください。
施主:株式会社エルマックス
オフィスエントランスの設計は企業価値の向上につながる
オフィスのエントランスは企業の顔であり、ブランディングや印象形成、働きやすさといった多面的な役割を持つ空間です。デザイン性や機能性、セキュリティ、快適性などの要素をバランス良く設計に組み込むことで、企業のビジョンを具現化しながら、社内外からの信頼を高めることができます。
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