病院の天井選びが重要な理由は?場所別の天井を選ぶポイント

病院 天井

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

病院の天井は、衛生面や音環境、さらには安全性を向上させる重要な役割を担っています。適切に天井を設計することで、患者が安心して過ごせる環境を整えるとともに、医療従事者の業務効率の向上やストレスの軽減にもつながります。特に、「消臭・防音・防火」の3つの性能を高めることは、清潔で快適な院内環境づくりに欠かせません。

この記事では、病院における天井選びの重要性や適切な天井を選ぶポイントについて解説します。

病院の天井選びが重要な理由

病院の天井は、一般的な施設や住宅とは求められる性能が大きく異なります。患者や医療従事者が快適に過ごせる環境をつくるためには、衛生面やプライバシーへの配慮に加え、不特定多数の人々が利用する施設としての安全性も重要です。

特に、「消臭性能・防音性能・防火性能」を備えた天井材を選ぶことは、より質の高い医療環境の提供につながります。病院に適した天井にすることで、患者は安心して診察や治療を受けられるようになり、医療従事者にとっては、より業務をしやすい環境が整うのです。その結果として、患者と医療従事者の双方の満足度が向上し、充実した医療サービスを提供できるようになるでしょう。

やさしく質の高い医療環境を実現する理想の天井材

病院の天井選びで気をつけるポイント

病院の天井は、患者や医療従事者の快適性と安全性を向上させるために、特別な配慮が必要です。具体的には、「消臭・防音・防火」の3つの性能を重視して計画することで、質の高い医療環境を整えられるでしょう。

●消臭対策

病院内は、消毒液などの薬剤や患者の体臭・病臭(病気特有の臭い)、さらには排泄物などが原因で悪臭が発生しやすい環境です。臭いが強くなると、患者や医療従事者に不快感を与えてしまい、不満やクレームにつながる場合があります。さらには、悪臭が医療従事者の業務効率や集中力低下を引き起こすことも懸念されます。

そこで、消臭効果のある天井材を選べば、悪臭を軽減し空気環境を改善する効果が期待できます。ただし、天井材だけ消臭効果のある建材を使用すれば良いわけではなく、空間全体で消臭対策を考えることが重要です。具体的には、天井材だけではなく、壁材や床材なども含めて消臭効果を得られる建材を採用することで、消臭対策の効果が高まり、病院全体の空気環境の向上につながります。空間全体で対策することで、患者や医療従事者が感じる不快な臭いが減り、より清潔で健康的な医療環境を実現できるでしょう。

●防音対策

病院の診察室や待合室では、患者のプライバシー保護や安心して受診できる環境づくりのために、音への対策が重要な課題となります。診察室での会話が廊下や待合室に漏れてしまうと、「自分の症状について知られてしまうのでは……」と患者が不安を抱える可能性があるからです。そういった環境では、診察や治療に対する信頼感が損なわれてしまうおそれがあるでしょう。

実際に、医療機関を訪れたことがある方を対象に行ったアンケート調査では、半数以上の方が病院を選ぶ際に「施設の雰囲気・居心地の良さ」を重要視すると回答しており、具体的には「待合室の騒音」「診察時の会話の音漏れ」が気になる方が特に多いという結果が出ています。

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この調査からもわかるように、患者の不安を取り除き、信頼性の高い院内環境をつくるには、会話が外へ漏れないように「遮音対策」を施すことが大切です。また、診察室内での会話が明瞭に聞こえるように、「吸音対策」も重要です。防音性を高めることで、患者と医師がお互いににコミュニケーションを取りやすい、静かで落ち着いた環境が整います。

ただし、天井材だけでは必要な防音レベルに達しない場合があります。遮音・吸音性能のある壁材や床材、ドアの導入も併せて検討しましょう。空間全体で防音性能の向上を図ることにより、患者のプライバシーを守り、快適で安心できる環境を提供することができます。医療従事者にとっても、快適でストレスの少ない環境につながるでしょう。

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●防火対策

不特定多数の人が出入りする病院は、万が一の火災発生時に、迅速かつ安全な避難が求められます。火災による延焼被害を最小限に抑え、避難時間を確保するためには、建物内で使用する建材の防火性能が非常に重要です。

病床のない診療所を除いて、病院は建築基準法第35条の2等の規定に基づき、内装制限の適用対象となる可能性があります。内装制限を受ける場合は、防火材料の使用が義務づけられるため、事前に確認しておきましょう。
参考:「建築基準法第三十五条の二」(e-gov 法令検索)

【内装制限を受ける病院の構造と規模】

耐火建築物

準耐火建築物

その他の建築物

3階以上の部分が300m²以上

2階部分が300m²以上

合計が200m²以上

 

【天井に関する内装制限の内容】

居室

難燃以上の材料の使用
※3階以上に居室がある場合は準不燃以上

通路

準不燃以上の材料の使用

参考:
 「建築基準法第百二十八条の四」(e-gov 法令検索)
 「建築基準法第百二十八条の五」(e-gov 法令検索)

規定に基づいた防火対策を講じることで、火災時の被害を最小限に抑え、安全で迅速な避難が可能になります。病院の安全性が向上することで、患者や医療従事者が不安なく過ごせる環境を実現できるでしょう。

建築基準法における内装制限とは?対象となる建築物や緩和の要件

【病院内の場所別】天井選びのポイント

病院には、待合室や診察室、病室、キッズスペースなど使用目的が異なるスペースがいくつかあります。それぞれの空間に適した性能を持つ天井材を選び、病院全体の快適性や安全性を向上させましょう。

●待合室

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厚生労働省の調査によると、令和5年時点で外来患者の約40%が診察等まで30分以上待たされているとわかっています。緊張したまま待合室で待機する方も多いため、できるだけストレスの少ない快適な空間づくりが求められます。特に、病院特有の尿や排泄物・薬品臭などの不快な臭いや、患者同士の話し声の反響を抑制する天井材選びが重要です。

DAIKENの『メディカルトーン』は、医療施設や福祉施設向けの天井材で、優れた吸音性能と消臭性能を備えています。話し声の反響を抑制し、気になる臭いも軽減するため、待合室の環境向上に役立ちます。
参考:「令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況」(厚生労働省)

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●診察室

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診察室は患者のプライバシーを守り、会話しやすい環境をつくることが重視されます。音が漏れやすい環境下では患者が不安を感じてしまい、悩みや症状を医師に伝えられない、相談しにくいといった状況に陥ることがあるので注意が必要です。また、音が反響する空間では診察に集中しにくく、医師が話した内容を患者がきちんと聞き取れないケースも発生し得ます。このような理由から、診察室の天井には吸音効果のある天井材の採用が推奨されます。

先ほども紹介した『メディカルトーン』は、表面に数多くの穴を持つ構造をしており、音が穴に入り込んで内部の細かい繊維と摩擦を起こすことで、音を減衰・吸収します。これにより声が響きにくくなり、音の反射が抑えられて会話がクリアに聞き取れるようになるのです。音環境が改善することで、患者は安心して医師とコミュニケーションがとれるようになり、診察の効率も向上するでしょう。

ただし、患者のプライバシー保護という観点では吸音による対処では不十分で、物理的に音漏れを防ぐ遮音対策を併せて取り入れる必要があります。遮音対策としては、『音配慮吊戸』のような、音漏れを軽減する性能を持ったドアを採用する方法が考えられます。

●病室

病室は患者が入院中に長い時間を過ごす空間です。横になった体勢で過ごす患者が多く、天井が視界に入る機会も増えるため、天井の柄選びには配慮が必要です。たとえば、穴が無数に開いているように見える柄は、人によって虫食いや虫のように見えてしまい、不快に感じることがあります。特に精神科の病棟では、精神が不安定になりがちな患者にとって、さらなる不安を与えかねません。また、鮮やかすぎる色や派手なデザインは興奮を引き起こす可能性があります。病室の天井には、できるだけ柄が目立たないシンプルなデザインや穏やかな色を選びましょう。

●キッズスペース

病院のキッズスペースは、待ち時間の不安や緊張を和らげ、子どもたちが楽しく過ごせる環境づくりが大切です。しかし、子どもたちの元気な声は、他の患者にとっての騒音となる可能性があります。そのため、キッズスペースには吸音効果のある天井材を取り入れると良いでしょう。赤ちゃんや小さな子どもの泣き声が響くのも抑制でき、周囲に配慮した環境をつくれます。

また、天井の色にも配慮することで子どもたちの心を落ち着かせる効果が期待できます。色彩心理学によると、パステルカラーには心を穏やかにする効果があるとされているため、キッズスペースや小児科の天井材に取り入れるのもおすすめです。

DAIKENの天井材『パステルトーン』は、幼稚園や保育園にも採用されることのある天井材で、病院のキッズスペースにも適しています。赤ちゃんや小さな子どもの泣き声を吸収して残響音を抑えるため、うるさく響きにくい穏やかな環境を実現できます。ピンクやイエロー、ブルーといったやさしいカラー展開により、無機質になりがちな病院をあたたかく居心地の良い空間に彩ってくれるでしょう。

適切な天井材を選んで快適な病院内の環境を

病院の天井は、医療環境の質を左右する重要な要素です。診察室や待合室、病室やキッズスペースなど、それぞれの部屋に適した天井材を選ぶことで、患者と医療従事者の双方にとって、快適で安全な医療環境を提供できます。病院の設計の際は、天井材選びにもこだわって、より良い病院づくりに貢献しましょう。

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