診療科にあわせたクリニック・医院・診療所の内装設計 診察室や待合室をおしゃれで落ち着く色に

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クリニックや医院、診療所は、健康にトラブルのある人が最初に訪れる場所です。地域医療の入口である「かかりつけ医」としては信頼が最も重要といえるでしょう。安心して訪れることができて心配なことを相談できるクリニックや医院、診療所にするには、安心できる環境づくりが必要です。

安心できる環境にするには、医療情報のアップデートを欠かさず、医療技術への信頼性を担保することはもちろん、清潔で居心地の良さを感じさせる空間の演出も患者様の不安な心理を和らげるために欠かせない要素といえるでしょう。

では、患者様の不安な心理を和らげる空間の演出とはどのようなものなのでしょうか。この記事では、患者様の不安感を減らして好印象を与え、再来につながるクリニックの内装設計に関する基本と診療科ごとのヒント、そして色彩系統による色の使い方についてご紹介します。

クリニック・医院・診療所の内装デザインの基本

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クリニックや医院、診療所を訪れる患者様は、健康上における何らかの不安を抱えた人です。体のどこかに不調を抱えて苦しんでいたり、あるいは健康診断の結果が思わしくなく、心配したりしている人もいるでしょう。患者様には治療だけでなく、やすらぎや安心を提供することも必要です。こうした“癒し”を提供することができれば、患者様にとって来院のストレスが軽減されることになるので、再来につながってくるでしょう。

では、再来につながる“癒し”、すなわち安心感と快適さを与える空間をつくるには、内装をどのような設計にすればよいのでしょうか。 その基本を以下の4つにまとめました。

①清潔感の演出

院内を清潔に保つには、こまめな片付けや清掃が必要です。しかし、毎日の忙しい診療に明け暮れる中で、こまめな片付けや清掃を実践するのは中々困難です。 そのためにはできるだけ片付けやすく、清掃しやすい素材や設計にしておくことが重要です。衛生対策としてドアノブやカウンターに、抗ウイルスや抗菌素材を用いるなどの工夫も効果的でしょう。

②明るいイメージづくり

待合室や診察室、処置室など、心配を抱えた患者様が入る場所は、明るいイメージとなるよう採光などに配慮しましょう。適切な広さと明るさ、また換気がしやすい造りにしておくことは、衛生上必要なだけでなく、患者様に安心感を与える重要な要素です。待っている時に不安を覚えない雰囲気が、再来の大きな動機となります。

③配慮された動線

院内は患者様の動きとスタッフの動きをよく考えた造りにしておきます。診察・処置中の姿や音が他の患者様に見えない、聞こえないようにすることはもちろん、スタッフ同士がぶつかりやすいような動線を作るのは避けるべきでしょう。よく考えらえた動線は患者様のプライバシー保護への配慮も感じられ、安心感を演出する方法の一つとなるのです。

④配慮された色彩

いすやテーブルなどの家具・調度品、壁材・天井材などの色彩はとても重要です。院内の雰囲気を生成する大きな部分ですし、自院の目指す治療や理念を表現する手段にもなります。色彩に配慮された室内は、不安を抱えた患者様の心を癒すでしょう。

内装デザインにおける病院とクリニックの違いと注意点

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病院やクリニックの内装を設計する際は、単に美しい空間を作り出すだけでなく、法規制に沿った安全で機能的な環境を整える必要があります。特に、建築基準法で定義されている病床数による基準の違いは大きなポイントです。「病院」とは病床数が20以上のものをいい、それ以下は「診療所」(クリニック・医院)とされています。

診療所(クリニック・医院)の場合、病床数が0ならば一般建築物扱いですが、1床でも病床がある場合は「特殊建築物」になります。特殊建築物は建物構造や設備、内装等に関して、一般の建築物より厳しい基準が設けられており、所有者や管理者に定期的な点検と報告が義務づけられるなど、設計や運営の自由度に影響を与えています。

医療法では診察室や待合室の広さ、廊下との区分など、医療行為に基づいた細かな規定が設けられています。また、バリアフリー法で病院・診療所は特別特定建築物に指定されており、同法による建物移動等円滑化基準(出入口や廊下・トイレ等で車いすが利用しやすいようにするなどの基準)への適合が義務付けられています。

また、病院・診療所には建築基準法第12条の定期報告制度によって、定期的な建物や施設の調査を行政に報告する必要があると定められています。これらの規制には自治体ごとの条例も関係しているため、建築士や官庁などの専門家と連携しながら設計を進めることが重要です。

総合病院などのように診療科の多い医療施設では、ユニバーサルデザインの採用が求められます。これはバリアフリー法による基本的なアクセス性を超え、あらゆる人にとって使いやすい設計を意味します。
医療施設におけるユニバーサルデザインについては、下記でご紹介していますので、こちらもご確認ください。
⇒「ユニバーサルデザインが医療施設に求められる理由 バリアフリーとの違いとその概念

また、患者やスタッフの動線に関する計画は、医療施設設計におけるもう一つの重要な側面です。患者様とスタッフがスムーズに移動できるよう、効率的で直感的なレイアウトが求められます。患者のプライバシーを守りつつ、スタッフの働きやすさも考慮した動線計画は、快適な医療環境の基盤となります。
患者動線やスタッフ動線・裏動線など様々な配慮が必要な医療施設の動線については、下記でご紹介していますので、こちらもご確認ください。
⇒「病院・クリニックのレイアウト計画には動線・裏動線が重要! スタッフの働きやすさも考慮した動線計画を

これらは病院やクリニックの内装設計を進める際の重要なポイントでもあります。安全性、機能性、快適性を兼ね備えた医療施設を実現するためには、法規制の理解や、患者様とスタッフのニーズを満たすデザインに対する配慮が必要です。

デザインのポイントを診療科ごとに紹介

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ここでは安心できる室内づくりに重要なポイントを、診療科別に解説していきます。

・内科

内科はあらゆる診療科の中で最も患者の層が広い診療科です。自院の立地条件による患者層の特徴も考慮したうえで、特定の年齢層や性別にこだわらず、不特定多数に好まれやすいシンプルなデザインや、自然なカラーリングがおすすめです。

・外科、整形外科

外科や整形外科を訪れる患者様の多くは車いすや杖を使っています。エントランスから受付・待合までの動線や、通路の広さとトイレの造りにも、できる限りバリアフリーを意識した設計が必要です。

・小児科

子どもたちが不安を感じないような内装にする工夫が必要です。パステル調・ピンク系の色使いや、動物のモチーフなどで楽しい空間を演出しましょう。おもちゃや簡単な遊具、アニメのビデオを流すなども良いでしょう。

・歯科

「歯医者が嫌い」という人は残念ながら一定数いらっしゃいます。患者様の不安を和らげるには「リラックスできる」「安心できる」ことを念頭に置いて受付から待合室、処置室のデザインを考えていく必要があります。
歯科では治療の際に患者様が天井を見ることになるので、天井の素材やデザイン、そして照明には特に気配りが必要でしょう。センスが良く、上質な壁材や天井にすることで、患者様に安心感を与えることができます。
また、多くの患者様を同時に診ることがある歯科においては、不都合が出ないよう動線に気を配る必要があります。

色彩にも配慮を 色による印象の違いを知っておこう

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ここでは、クリニックの内装デザインに取り入れたい色彩のテクニックを色別にいくつか紹介していきます。
色系統別にどのような特徴があるのか知っておくことは、患者様の不安を取り除くデザインを考える上での参考になります。

・ホワイト系

白は清潔感を与える色です。ほとんどの病院・クリニックで取り入れられていることはご存知の通りですが、同時に病院を象徴したり連想させたりする色でもあります。アイボリー系やベージュ系寄りの白にすることで、柔らかさを演出して安心感のある色使いにする方法もあります。

・ブルー系

青は安全を象徴し、安心感と信頼感を与えられる色で、集中力を高める効果もあるといいます。しかし、すべてをブルー系で揃えると冷たい印象を与えることにもなります。場所を選んで要所に用いるのが良いでしょう。

・グリーン系

緑は植物の色であり、自然を象徴する色でもあります。新緑のような明るいグリーンを用いることで、リラックスできる空間を演出できます。

・ピンク系

優しさ、暖かさ、親しみやすさを象徴する色です。淡いピンクは安心感を与えるので、子どもや女性向けの施設によく用いられます。

・ブラウン系

茶系はぬくもりや安心感、リラックスした雰囲気を演出します。元々木材の色でもあるので、自然な感じになります。明るいブラウンは優しい印象を与え、暗いブラウンは落ち着いたリラックス感を表現できます。

・グレー系

落ち着いていて真面目で正確というイメージを与えます。会計を行う場所などに使うことで、信頼度を演出できます。彩度がない色なので、アクセントとして別の色を効果的に使うのも良いでしょう。

ご紹介した各色の特徴を考慮した上で、機能別にうまく色彩を組み合わせます。例えば、婦人科や産婦人科の受付や待合室は清潔感のあるホワイトを基調に、華やかで安心感のある淡いピンクをアクセントとして入れるなどの工夫をします。上手に組み合わせることができれば安全で安心、リラックスできる院内を演出することができるでしょう。

リラックスできる色に関しては、下記の記事でもご紹介していますのでチェックしてみてください。
「リラックスできる色はどんな色? 緊張しがちな病院を心が落ち着ける空間に」

まとめ

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院内の内装デザインに配慮することは、患者様の不安を取り除くことにつながります。診療科やその部屋の機能別に色彩を考えて、壁材や天井材を変えてみても効果があるのではないでしょうか。

メインとなる壁面を一面だけ変えるだけでも、ずいぶん雰囲気が変わってくるものです。
患者様に再来してもらえるクリニックをつくるためにも、ぜひ一度検討してみてださい。

公開日:2023.11.20 最終更新日:2024.04.22

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