部屋を快適な湿度にするには何%が適正? 高齢者には湿度が高い、低い どちらが良い?

快適な湿度

快適な室内環境をつくりだす要素としては、暑い寒いといった温度のほかに、「湿度」も重要な要素です。多くの高齢者が暮らす介護施設などでは、室内環境を快適にするためにどのような湿度設定にするのがよいでしょうか。最適な湿度は季節によって違いますし、気温とも深く関係しているため一概にこの湿度がよい、というものではありません。本記事では、高齢者ならではの身体感覚の特徴や、高齢者施設での適正な温度設定、温度と湿度の関係、湿度管理がいかに高齢者にとって重要かをお伝えします。あわせて、快適な室内環境を整えるためのポイントもご紹介します。

最適な湿度は季節によって違う

快適な湿度

快適さの基準として、私たちは気温を目安にすることが多いのではないでしょうか。しかし、温度計が示す気温が同じでも、湿度が違うと体感温度は大きく異なります。

湿度が低いと涼しく快適に感じられる反面、肌や喉が乾燥しやすくなります。
湿度が高いと乾燥はしにくくなりますが、温度以上に暑く感じたり、カビやダニが繁殖しやすい環境になります。

介護の現場で適切な温度は、17~28℃、快適な湿度は40~70%とされています。
(出典:東京都福祉保健局「社会福祉施設管理者のための環境衛生設備自主管理マニュアル」)
しかし、この範囲にあればよいというものではありません。どのくらいの湿度を快適と感じるかは温度によって相対的に異なります。 気温が高いときには湿度を低くすると、同じ温度でも涼しく快適に感じられ、気温が低いときには湿度を上げると暖かく感じやすいのです。夏は冷房とともに除湿するなどして湿度は低く抑え、冬は暖房とともに加湿器などを利用して上手に湿度をコントロールすることで、より快適に過ごすことができます。

温度・湿度はエアコンの設定温度に頼らず、温湿度計を使って実測しましょう。温湿度計は設置する場所にも注意が必要です。直射日光やエアコンの風が当たる場所、除湿器・加湿器の近くや結露しやすい窓際などを避け、床面からおよそ1.1mの高さに設置すると正確に計測しやすくなります。

夏場は特に温度との関係に注意

夏の暑さも冬の寒さも、ますます厳しくなる昨今。夏になると気をつけなければならない熱中症ですが、その約40%は住居で起きているのです。(出典:消防庁「熱中症による救急搬送状況」2022年6月)
エアコンで室内の温度をコントロールすることは重要です。高齢者のなかにはエアコン=贅沢品と考えてしまう方も多く「このくらいの暑さなら我慢できる」と自宅でのエアコン使用を控えて熱中症に陥る事故が、毎年一定数発生しています。加齢により温度の感じ方にも変化がみられ、高齢者は若齢者に比べると温度差を感じにくく、自分の体温変化からの体調の変化にも気づきにくい傾向があります。喉が渇いたという感覚や発汗機能が低下したり、排泄にともなう困難から飲み物を控えたりしてしまう傾向もみられます。
高齢者施設では特に、高齢者のそのような身体的特徴もふまえて室内環境を整える必要があります。
温度・湿度をあわせて考えることが重要だと先述しましたが、高齢者は熱中症になりやすい反面、寒がりの人も多いものです。上手に湿度をコントロールして快適な環境を整えましょう。

熱中症予防には、気温が28℃・湿度60%が目安と考えて、それ以上になると危険性が増していくと考えましょう。その場合は湿度を50%に下げると体表からの汗の蒸散を促すので、体温を下げることができます。気温を変えずに体感温度を下げて快適な環境を整えるため、湿度が重要な役割を果たすという好例です。

なお、汗をかいた後で何もしないと、水分と塩分が足りなくなり、脱水症状になる可能性がでてきます。これも熱中症を起こす原因のひとつですので、こまめな水分補給が重要となります。

気温、湿度とともに空気の流れも重要です。体感温度には風速も一役買っており、直接あたるエアコンの風は苦手でも、わずかな空気の流れがあるだけで心地よさは変わってきます。エアコンだけに頼らず、扇風機や換気扇、サーキュレーターなどを活用して風の通り道を作ることも意識しましょう。

冬場の注意点 隠れ脱水とは?

快適な湿度

熱中症や脱水症状は夏だけ注意すれば良いと思われがちですが、実は冬の寒い時期にも脱水症状は発生します。特に、もともと体内の水分量が少ない高齢者は要注意で、一見問題なさそうでも脱水症状が発生する一歩手前の「隠れ脱水」と呼ばれる状態になっている場合があります。

●隠れ脱水の症状とは
隠れ脱水では唇や皮膚が乾燥する、喉が渇く、集中力が低下するといった症状がでる場合があります。しかし本人が自覚することは難しく、周りが気づくのも容易ではありません。そのため、隠れ脱水になっていたとしても、すぐに有効な対策を打てずに脱水症状がでるまで気づかないこともあります。

●脱水の初期症状とは
初期の脱水では脳や筋肉、消化器に症状がでます。例えば、めまいや食欲の低下、頭痛、足がつるといった具合です。
これらの初期症状がでても放置していると、さらに血液内の水分が減少します。すると血栓ができやすくなり、重大な症状を引き起こす可能性もでてきます。そのため、事前に隠れ脱水を防ぐ対策が必要となります。

冬の隠れ脱水の原因は?

脱水症状といえば、汗をかけば体内の水分を失うのは理解できます。それでは、汗をかかない冬の隠れ脱水は、どのように引き起こされるのでしょうか。 高齢者が冬に隠れ脱水となる原因は以下の3つが挙げられます。

●乾燥によって水分が蒸発するため
冬は乾燥する季節です。乾燥していると、汗をかいていない状態でも皮膚から水分が蒸発します。この蒸発によって、気づかないうちに体内の水分を失うのが冬の隠れ脱水の原因です。

また暖房を使用して部屋を暖めると、さらに湿度が下がります。加えて尿として排出する水分もありますので、汗をかかなくても水分は失われているのです。

●喉が渇きにくく水分補給を忘れがちなため
冬は汗をかかないため喉が渇きにくく、水分補給を忘れがちです。また、水分をとるとトイレが近くなるため、水分補給を意図的に減らしている方もいるでしょう。十分な水分補給をしなければ、どんどんと体内の水分は失われていきます。

●65歳以上の高齢者では体内の水分が少ないため
高齢者が冬の隠れ脱水になりやすい原因は、そもそも高齢者の体内には水分が少ないためです。成人は体重の60%が水分ですが、65歳以上となると体重の50%にまで減少します。もともと少ない状態から上記の2つの理由で減ってしまうので、隠れ脱水を引き起こしやすくなるのです。

部屋の温度・湿度を適正にして、高齢者の隠れ脱水を予防

快適な湿度

高齢者の隠れ脱水の基本的な予防方法は、「こまめな水分補給をすること」と「部屋の温度・湿度を保つこと」です。

水分補給をする際のポイントは、1日1.5リットルを目安に、時間を決めて飲み物をとることです。一度に何杯もとるのではなく、こまめに回数を分けましょう。また睡眠時や入浴時は、汗をかくため体内の水分を多く失います。起床時や就寝前、入浴前後にも水分補給することが大切です。

次に部屋の乾燥を防ぐポイントは、室内を40~60%の適正湿度に保つことです。湿度を調整するには加湿器を使ったり、濡らしたタオルを干したりする方法があります。 このように、「こまめな水分補給」と「部屋の湿度調整」を行うことで、高齢者の隠れ脱水を防ぎましょう。

体にやさしい快適な環境づくりを

快適な湿度

隠れ脱水を予防するだけではなく、高齢者が健康的で快適な生活をおくるには、湿度を適正に保つことが大切です。
昔ながらの木造家屋では、木や土壁などの天然素材が自然に呼吸をして湿度を調整してくれていました。しかしながら、現代の建物は気密性が高く、快適な環境を作るにはエアコンが欠かせません。しかしエアコンの風はじかにあたると、冷えすぎや過度の乾燥など体調不良の原因となるため注意が必要です。風向きに注意し、送風口に調整ファンをつけるなどの工夫をしましょう。
また、エアコンで温度を調整するならば、あわせて湿度も調整するようにしましょう。その際、エアコンの設定に頼らず、温湿度計を使って実測することをおすすめします。

湿度に関しては除湿器・加湿器の利用も効果的ですが、天然素材が担っていたような調質機能を備えた建材を採用することも検討してみましょう。調質機能だけでなく、化学物質や気になるにおいを吸着する機能も併せもった壁材や天井材もありますので、是非チェックしてみてください。

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