動線と導線の違いとは  家事動線や作業動線は「動線」、百貨店では「導線」!?

動線

引っ越しをする際、家を新築する際などに、「ここで作業をするために近くに収納家具を配置して、使う道具を収納しておこう」、「次の作業に移るときには、ここを通って移動すればスムーズだな」などと思いめぐらすのは楽しいものです。家の間取り図を見るのが趣味という方もおられますし、間取り図を見ながら、空間でどのように過ごすかをイメージすると、「どのように動くか」が図面の上に線となって見えてくる方もおられることでしょう。

人やものの移動を表わすこの線を「動線」といい、プランニングする際には欠かすことのできない要素ですが、「導線」と表記されることもあります。そこで、動線と導線のそれぞれの意味や違いと、商業施設における動線計画のポイントをご紹介します。

動線とは? 動線にも種類がある?

動線

動線とは文字通り「動きを線で表したもの」です。人やものの移動を図面上に線で描いてみることで、どのようにプランニングすれば効率よく快適に、安全にその空間を利用できるかが見えてきます。例を挙げると、車で移動する人が利用することを想定した施設ならば、人が歩いて通るルートと車が走行するエリアはなるべく分けて計画するのが、安全かつ合理的でしょう。このような検討を動線計画といい、プランニングのベースとなるものです。

例えば住宅においては、次の3種類が主な動線として挙げられます。

家事動線:炊事、洗濯、掃除などをする人の動線
生活動線:各自の寝室やリビングなどの居室からトイレ、洗面、浴室などへの動線
来客動線:暮らす人ではなく訪問者の動線

この種類を分けているのは、主体となる「人」です。主に家事を担う人にとっては効率よく家事をすすめられる家事動線が重要ですし、お風呂あがりのようなリラックスした服装で来客と鉢合わせするのはなるべく避けたいものです。
つまり、動線計画の基本的な考え方としては、来客動線と他の動線ができるだけ交差しないよう計画するのが、合理的な空間づくりのために重要といえます。

導線とは? 動線とはどう違う?

動線

さて、もう一つの言葉「導線」は、先にあげた「動線」とはどう違い、どう使い分けるのでしょうか。

本来「導線」とは電線を意味しますが、百貨店業界では「売場でお客様を導く」という意味合いで「動線」とほぼ同義に使われてきました。建物を計画するときに「人やものがどう動くか」を表すのが「動線」、お客様を対象として「どう動かす(導く)か」に特定した表現が「導線」だといえるでしょう。
お客様が売場でスムーズに目当ての商品やサービスを見つけ、購入につなげていただくよう導くために、導線計画は商業施設のレイアウトを構成する重要な要素なのです。

商業空間における動線計画のポイントは

動線

商業施設全般に共通する、導線も含めた動線計画のポイントとしては、まず売場の死角をつくる障害物をできるだけなくすことです。障害物が多いと心理的に圧迫感を覚え、その空間を狭いと感じてしまいますし、お客様の望む商品やサービスにたどり着けず満足いただけない可能性があります。売場にいるスタッフの動線も切断されたり、迂回を余儀なくされるなど作業効率を低下させます。

お客様には開放感があり、回遊性が高い導線を計画しましょう。入口付近には店内奥へ誘うための魅力的な売場演出をし、店の奥に目玉スポットを配置するなど、お客様を「導く」レイアウトで店内を一周していただくように計画します。

また、お客様が目的の商品やサービスにスムーズにたどり着けることは大切ですが、目的を果たせば良いというものではありません。その空間に快適さ、心地よさがあればゆったりと回遊でき、さらに楽しさが加われば滞在時間が長くなり、別の購買行動に結びつく可能性も高く、再来店を促すことにもなり得るでしょう。あわせて、滞在時間を長くしていただきつつも、その長さを感じさせないよう、好感度の高い空間づくりも重要なのです。そのためにも、リズミカルな変化や落ち着きある陰影をもたらす意匠性の高い内装材も、状況に応じてレイアウトとともに検討していきましょう。

対してスタッフの動線は短く無駄なく、効率のよい動線計画が必要になります。住宅における動線の種類で紹介したように、お客様への導線とスタッフの動線は、互いに交差しないように計画することが重要です。
また、多数のお客様やスタッフが滞在するのですから、災害発生時の避難動線を確保することも検討しておかなくてはなりません。どの施設にも共通していえることですが、動線計画には効率性、快適性とともに、安全性が大切です。

例えば、病院やクリニックにおいても様々な視点からの動線計画が求められます。ぜひ下記の記事もチェックしてみてください。

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