音響透過損失とは?遮音や吸音の基礎知識と防音建材について

音響透過損失とは?遮音や吸音の基礎知識と防音建材について

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

建築音響の設計においては、空間全体の評価だけでなく、構成要素ごとの性能把握が求められます。特に壁や床、建具といった部材単位の遮音性能を定量的に理解することは、設計精度の向上につながります。

「音響透過損失」は、その基礎となる重要な指標の一つです。遮音等級や室内音環境の評価と併せて理解することで、設計意図に応じた合理的な仕様(材料)選定が可能になります。

この記事では、音響透過損失の基礎や音環境の設計に関わる「質量則」、遮音・吸音の設計アプローチを解説します。また、DAIKENの音環境への取り組みについても紹介します。

音響透過損失とは?

音響透過損失は、建築部材単体の遮音性能を把握するための基本指標です。まずは定義と役割を整理します。

●音響透過損失の概要

音響透過損失とは、壁や床、扉、窓などの部材や構造体がどれだけ空気音を遮断できるかを数値で示した指標です。英語では「Transmission Loss」と呼ばれ、略して「TL」と表記されることもあります。

音響透過損失の単位は「デシベル(dB)」で表され、数値が大きいほど音を通しにくい、すなわち遮音性能が高いことを意味します。

この指標は周波数ごとに評価されるため、125Hzなどの低音域から4,000Hzなどの高音域までの遮音特性をグラフや表から把握することが可能です。そのため、用途に応じてどの周波数帯域の遮音性能を重視するかを判断する際の基礎資料となります。

●音響透過損失と遮音等級D値(Dr値)の違い

音響透過損失は、建築部材単体の遮音性能を示す指標です。一方で遮音等級D値(Dr値)は、室間の音環境を評価するための、空間全体の性能指標となります。

D値(Dr値)は壁だけでなく、床や天井、隙間、開口部などを含めた総合的な音の伝搬を評価します。そのため同じ材料を用いても、施工精度や納まりによって結果が変わることがあります。

つまり、音響透過損失は「部材性能」、D値(Dr値)は「空間性能」と整理することで、遮音性能の把握がしやすくなります。

●音響透過損失の把握が必要な理由

遮音等級D値(Dr値)は、建物が完成するまで正確に把握することができません。先述したように、実際のD値(Dr値)は、壁や床、天井、建具など各部位の性能に加え、施工精度や納まりの影響も受けるためです。

そのため、設計段階では各部材の音響透過損失を個別に確認し、目標とする遮音性能を満たせるか検討する必要があります。音響透過損失は、部屋の大きさや現場条件に左右されず、純粋な性能比較が可能です。

また、D値(Dr値)は、性能の低い部位に大きく左右されます。したがって、各部材のTL値を確認し、遮音上の弱点となる部分がないかを事前に確認することが重要です。

音響透過損失は周波数ごとの性能特性も確認できるため、防ぎたい音の種類に応じた材料選定にも役立ちます。各部材の音響透過損失を基準に性能を積み上げることで、設計段階から音環境のリスクを低減し、施工後の性能不足や手戻りの防止につながります。

音環境設計の「質量則」について

音響透過損失と共に、遮音設計の基本となる質量則は、材料の選定や構成検討の出発点となる重要な考え方です。質量則の基本を整理し、実務における遮音設計への適用方法を解説します。

●質量則と面密度の関係

質量則とは、材料が重いほど音を遮りやすく、さらに同一材料であれば周波数が高い音ほど遮音性能が高くなるという基本原則です。ここで重要となるのが面密度であり、単位面積あたりの質量が大きいほど、透過損失は増加します。例えば、同じ厚みであっても比重の大きい材料のほうが、遮音性能は高くなります。

この関係は単一素材で構成された均質な材料において成立し、遮音設計の初期検討において有効です。実務では、石膏ボードの重ね張りやコンクリート厚の検討など、面密度を増加させる手法が基本となります。

この考え方を理解することで、合理的に材料選定を行えるようになります。

●質量則だけでは解決できないケース

質量則は有効な考え方である一方、騒音などすべての音問題を解決できるわけではありません。特に、コインシデンス効果と低音域への対応には注意が必要です。

コインシデンス効果とは、特定の周波数において材料の振動と音波が一致して遮音性能が急激に低下する現象です。この影響により、特定の帯域で透過損失が落ち込む場合があります。

また、低音域は波長が長く構造体を振動させやすいため、質量則の考え方だけでは十分な遮音性能を確保しにくい傾向があります。

そのため実務では、音源の特性に応じて異なる材料の組み合わせや二重壁構造、空気層の活用など、多層的な設計が求められます。単純な重量増加だけでなく、構造的な分離や減衰機構を取り入れることが重要です。

【特集】 音を知る

音響透過損失から考える遮音・吸音の設計アプローチ

ここでは、音響透過損失を踏まえてどのように音環境を設計するのか、具体的なアプローチを解説します。

●遮音材と二重構造の活用

遮音設計の基本は、音の透過を抑えるために、透過損失の高い材料を適切に配置することです。壁や床の構成層に遮音材や制振材を組み込むことで、空気伝搬音や振動の伝達を低減できます。

さらに高い遮音性能が求められる場合は、二重壁や防振ゴムを用いた浮構造など、構造体を物理的に分離する工法が有効です。

二重壁構造は、特に中高音域の遮音性能向上に効果的であり、スタジオや音楽室などで広く採用されています。一方で、壁間の空気層が共鳴する「太鼓現象」により、特定の低音域では遮音性能が低下する場合があります。そのため、空気層に吸音材を充填したり、壁間距離を適切に確保したりすることで、共鳴を抑える対策が求められます。

また、低音域は構造体を振動させて固体音として伝わりやすいため、防振ゴムによる浮構造など、振動そのものを遮断する方法が効果的とされています。

●吸音との組み合わせ

遮音性能を高めるだけでは、適切な音環境が構築できないケースもあります。反射音や残響への対策を行わないと、音の明瞭性が低下するためです。音環境を整えるためには、遮音性能を高めたうえで、吸音材を適切に配置し、室内の音エネルギーを制御することが重要です。

例えば、天井や壁に吸音性能のある仕上材を張ることで、残響時間を適正化できます。遮音と吸音をバランス良く設計することで、外部への音漏れ防止と内部の音環境の最適化が実現します。

このような複合的なアプローチが、実務における音環境設計の基本となります。

防音建材・音響製品選びの基礎知識

DAIKENの音環境への取り組み

音響性能の裏付けには建材の実測評価が不可欠です。ここでは、DAIKENが実施している音環境への取り組みを紹介します。

●DAIKENの音響評価施設『音ラボ』

音ラボ

DAIKENの『音ラボ』は、音響透過損失や残響室法吸音率(材料の吸音性能)などを測定できる専門の実験施設です。建築材料や構造の基本的な音響性能を測定する「残響室」や「無響室」「箱型実験室」などを備えており、音に関する様々な性能評価や実験ができます。さらに、音環境の可視化やシミュレーション技術の向上など、さらなる音の技術開発にも取り組んでいます。

こうした研究開発基盤により、実務に適用可能な建築音響製品の提供が実現されています。

R&Dセンター 音環境ラボラトリー 『音ラボ』

●おすすめの防音建材

DAIKENでは、適切な音環境の構築に役立つ製品を多数揃えています。ここでは、その一部製品を紹介します。

遮音パネル

遮音パネル』は、遮音性能が高い壁・天井用遮音下地材です。コインシデンス効果が起こりにくく、特に高音域での性能低下がほとんど起こらないという特長があります。10mm厚、12.5mm厚、18.5mm厚の3種類を用意しており、18.5mm厚の製品は不燃材料の認定を取得しています。

壁・天井用遮音下地材 遮音パネル

防音ドア[SF(スチール・不燃)タイプ]

防音ドア[SF(スチール・不燃)タイプ]』は、開口部からの音漏れを抑制するために設計された高性能防音ドアです。大型気密パッキンを用いた気密性とグラスウールを詰めた構造等により高い遮音性能を確保し、不燃仕様にも対応しています。

35~40dB/500Hz程度の遮音性能を持つ「G40」と、より性能の高い「G45」(遮音性能40~45dB/500Hz)の2種類から選択できます。

高性能防音ドア 防音ドア[SF(スチール・不燃)タイプ]

音響透過損失を踏まえた建材選定を

音響透過損失は、建築音響設計における出発点となる重要な指標です。壁や床、扉、窓などの部材や構造体の性能を正確に把握することで、空間全体の遮音性能を合理的に組み立てられます。

実務においては、質量則を理解した上で、二重構造や吸音材の併用など多層的な設計を行うことが不可欠です。単一の対策ではなく、構造や材料、納まりを統合的に検討する視点が求められます。

実務に直結する遮音・吸音設計のポイントや製品仕様をより詳しく確認したい場合は、ぜひ下記のカタログをご請求ください。また、音環境の設計にお悩みの方は、各地ショールームで開催している「防音相談会」にて、お気軽にご相談ください。

※防音相談会は事前予約制です。
※防音相談会当日は、DAIKENサウンドセンターの各担当者が対応いたします。

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