ホテルでの防音対策|対処すべき音の種類と設計時のポイント

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
ホテルの設計では、宿泊客の快適性を高めるために「防音対策」が重要になります。防音対策が不足していると、宿泊客の満足度低下につながり、長期的にはホテルの経営面にマイナスの影響を及ぼすおそれがあります。
本記事ではホテルの設計で防音対策が必要な理由や配慮したい音、その対策について解説します。
ホテルにおける防音対策の必要性
ここでは、ホテルの設計における防音対策の必要性について整理します。プライバシーに配慮することで、より快適なホテルを実現しましょう。
●宿泊客が快適に過ごせるようにするため
ホテルの設計において、防音対策は宿泊客の快適さを守る上で欠かせない要素の一つです。例えば上階からの足音や隣室の話し声、廊下の騒音などが客室内で聞こえると、滞在する宿泊客は落ち着いて過ごしにくくなってしまいます。
場合によっては眠りにくくなったり、室内での会話に集中できなかったりと、滞在中の満足度が大きく損なわれるおそれがあります。こういった事情から、静かで安心できる空間を提供するために、防音への配慮が非常に重要です。
●ホテルのリピーターや新規顧客の獲得のため
防音対策が不十分なホテルは「うるさくて眠れなかった」「会話が筒抜け」といった不満を抱かせる可能性があり、口コミなどを通じて悪い印象が広まりやすくなります。その結果、リピーターが減少したり、ネガティブな評価を見た新規顧客が利用を回避したりするかもしれません。
顧客満足度が低下して集客に影響が出れば、経営面にもダメージを与えることになるため、防音対策はホテルの収益面からも重要な施策と言えます。
ホテルで対策すべき音の種類
ここでは、ホテルの設計時に対策すべき音の種類について解説します。ホテルの設計において事前の対処が必要な音は、主に「外からの騒音」「廊下の音」「客室の音」の3つです。
●外からの騒音
ホテルは駅や繁華街、空港の近くなど利便性の高い立地にあることが多く、周囲の騒音の影響を受けやすい環境です。そのため、電車や車、飛行機といった交通機関の音や、外を歩く人の話し声や笑い声などが窓や建物の隙間から室内に入り込むことで、宿泊者の快適性を損なうおそれがあります。
●廊下の音
廊下は宿泊者の往来が頻繁にあり、出入りの際のドアの開閉音や足音、話し声、キャリーケースのキャスター音などが室内に侵入することがあります。こういった音は特に深夜や早朝には不快に感じられやすく、宿泊客の安眠を妨げる原因となります。また、階下へ足音が響くこともあり、上下階への配慮も欠かせません。
●客室の音
テレビの音や会話、シャワーやトイレの水音など、客室内で発生する音が隣室や下の階に伝わるケースは少なくありません。また、出張時に利用するようなビジネスホテルでは、客室内で仕事の電話やオンライン会議などをした際に、機密情報が外部に漏れてしまう懸念があります。加えて、室内で発生した音が反響し、会話が聞き取りにくくなったり、耳障りに感じたりするおそれもあります。
ホテルの防音性を高める対策
ここでは、ホテルの防音性を高める対策を取り上げます。立地や周辺環境等に応じて、設計時に適切な対策を講じましょう。
●外からの騒音への対策
外からの騒音の多くは窓を通して客室内に侵入します。特に、ガラス面やサッシの隙間から音が漏れがちです。
対策としては、厚みのあるガラスや二重窓(内窓)を取り入れることで、遮音性を高める方法が挙げられます。また、防音窓を採用することで、交通機関の音や人による騒音を減らすだけでなく、室内から外への音漏れの軽減にも効果が期待できます。
●廊下の音への対策
廊下から話し声や足音などが客室に伝わるのは、ドアの隙間が主な原因です。ドアは開閉のしやすさや換気のために隙間を設けることが多く、それが騒音の侵入口となります。
対策としては、密閉性の高い防音ドアを採用し、遮音性を高めるのがおすすめです。また、階下へ足音やキャスター音が響くのを防ぐには、防音性の高い床材やカーペット、防音下地材の使用が効果的です。これらの方法により、廊下から客室内や階下に音が漏れたり、響いたりするのを抑制できるでしょう。
●客室の音への対策
客室間の音漏れを防ぐには、壁の厚みを増やしたり、二重構造にしたりすることが効果的です。さらに、異なる素材や厚みの壁を組み合わせ、内部に吸音ウールなどを充填することで、より高い防音効果が期待できます。
階下への音の響きを抑えたい場合は、廊下と同様に防音性のある床材や下地材の活用が推奨されます。
また、室内の音の反響を抑えるには、吸音パネルなどの設置も有効です。吸音パネルを壁に取り付けることで、音の反響を軽減でき、室内の快適さを高められるでしょう。
複合的な対策を実施し、より静かで快適な空間をつくりましょう。
ホテルの防音対策におすすめの建材
ここでは、ホテルの防音対策におすすめの建材を紹介します。適切な防音建材を選ぶことで、快適な環境を計画しましょう。
●防音ドア[SF(スチール・不燃)タイプ]
『防音ドア[SF(スチール・不燃)タイプ]』は遮音性の高いスチール製ドアです。大型の気密パッキンを採用することで、高い気密性を確保しています。ドアクローザーが標準装備されているため、ドアが勢いよく閉まるのを防ぎ、ケガのリスク等を軽減しています。
●コミュニケーションタフ 防音 バイオリーフ DW4/FW4
『コミュニケーションタフ 防音 バイオリーフ DW4/FW4』は、ハイレベルな防音性能を持つ土足対応のフローリングです。客室や廊下の床に採用することで、足音などの軽量床衝撃音を低減し、階下への音の響きを抑える効果が見込めます。
●オトユカベースN
『オトユカベースN』は防音性のある床下地材です。床材の下に敷き込むことで、防音効果が期待できます。どの仕上材を選択しても一定の防音性能を得られるため、ホテルのテイストやコンセプトに合わせて床材を選択できる魅力があります。
●OFF TONE(オフトーン)
『OFF TONE(オフトーン)』は室内の反響音を軽減できる吸音パネルです。設置枚数を変えることで音の反響を調整できます。デザインも豊富なため、客室の意匠性を損なわずに音環境の改善が期待できます。
防音に配慮して快適に過ごせるホテルの設計を
宿泊客にとって快適なホテルを設計するには、防音対策が欠かせません。防音対策を実施する際は、外部の騒音や廊下からの音の侵入、客室間の音漏れなど、複数の原因を踏まえて計画する必要があります。本記事で取り上げた対策方法を参考に、ぜひホテルの設計に活かしてみてください。
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