ルーバーとは?多様な役割や素材別のメリット・デメリット

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
目次
ルーバーとは、羽板(はいた)と呼ばれる細長い板材を、一定の間隔で平行に並べて構成する建材です。縦方向に並べる縦格子型と、横方向に並べる横格子型があり、視線や光、風の通りを柔らかくコントロールできる点が大きな特徴です。
混同されやすい建材には「ラティス」や「ガラリ」がありますが、ラティスは格子状に斜めに交差させた装飾性の高い建材です。また、ガラリは換気を目的とした開口部に使用する、羽板付きの建材を指します。
本記事では、ルーバーの基本的な役割や用途、素材ごとの特徴、DAIKENの『グラビオルーバー』の特長まで、設計実務に役立つ情報を幅広く解説します。
ルーバーの役割と採用される理由

商業施設や住宅など、建物の用途を問わずルーバーの活用が広がっています。ルーバーの持つ目隠しや通風、遮光、遮音といった多機能性が評価されているのでしょう。ここでは、ルーバーの役割や、採用の理由について掘り下げます。
●ルーバーの主な役割
ルーバーは、視線や光、風などを柔軟に調整できる建材として、多くの用途に採用されています。ここでは、ルーバーの主な役割として、「目隠し」「通気・換気」「直射日光の遮断」「騒音の緩和」という4つの観点を解説します。
目隠し
ルーバーは一定間隔で羽板が並ぶ構造をしており、目隠しの効果が期待できます。羽板の角度や間隔を調整することで、外部からの視線を遮りつつも、空間を閉ざしすぎずに適度に仕切れます。
通気・換気
ルーバーを窓に設置すれば、視線を遮りながらも通風を確保でき、自然換気を促進します。ルーバーを使用することで外部からは見えにくくなるため、プライバシー性を確保しつつ、外気や風を取り込めるようになります。
直射日光の遮断
ルーバーは直射日光の遮蔽にも効果が期待できます。光を程良く拡散させながら室温上昇を抑え、エアコンなどの冷房負荷や室内に設置された建材・インテリアの日差しによる劣化を軽減します。
騒音の緩和
防音性能を備えたルーバーであれば、機械室や屋外設備の音対策としても有効です。ルーバーは、高速道路の防音壁としても使用されています。
●ルーバーが採用される理由
ルーバーが選ばれる理由には、高い機能性やデザイン性が挙げられます。羽板の角度を調整することで視線や光、風の流れをコントロールでき、機能的な設計が可能になります。意匠的な観点から捉えると、壁や天井などにルーバーを用いることで美しい陰影が生まれ、空間に奥行きと重厚感を加えることができます。シンプルな中にも立体感が生まれ、モダンで洗練された雰囲気を演出できる点も、住宅から商業施設に至るまで幅広く採用されている要因の一つです。
ルーバーの素材ごとのメリット・デメリット

ルーバーに使われる主な素材には、アルミや天然木、人工木、ガラスがあり、それぞれの性質や用途に応じて選定することが重要です。ここでは、素材別のメリット・デメリットについて解説します。
●ルーバーの素材1.アルミ
メリット
アルミは軽量で耐候性・耐食性に優れており、外装や窓周りなど屋外での使用に適しています。塩害や酸性雨など過酷な環境下でも腐食しにくく、沿岸部や高湿度地域でも安定した性能を発揮します。
施工性が高く、手入れも比較的容易なため、設計・施工双方の負担を軽減できる素材です。素材自体が軽量なため、構造への負荷が小さく、大型の面構成でも支持部材の設計を簡略化できるのが大きな利点です。
外壁の装飾、ベランダの目隠し、設備機器の囲いなど、機能と意匠の両立が求められる場面において使用されることもあります。屋内でも天井材や間仕切り、パネルとして応用されており、汎用性の高さもアルミルーバーの魅力と言えるでしょう。
デメリット
アルミは衝撃に弱いという特性があり、柔らかい金属ゆえに強い力が加わると変形しやすくなります。塗装や加工に関しては、アルミの表面は酸化膜で保護されており、その処理を前提とした工程が必要です。そのため、自由な成形加工や色の選択には一定の制約があります。このような点から、意匠的な自由度が求められる場面では、他素材との比較検討が必要です。
●ルーバーの素材2.天然木
メリット
天然木のルーバーは、自然素材ならではの柔らかさや温かみを空間に与えます。視覚的にも触覚的にも「本物の素材感」が伝わるため、住宅や宿泊施設、医療・福祉施設など、居心地や安心感が重視される空間におすすめの素材です。
経年変化により色味や質感が変化し、使い込むほどに深みが増す点も天然木ルーバーの大きな魅力です。長く使い込むほどに愛着が増していくという価値にもつながるでしょう。室内空間、特に収納扉や天井面などで使用されるケースが多く、木質空間の演出に適しています。
デメリット
天然木を使用するため紫外線や湿気の影響を受けやすく、屋外使用では劣化が早く進行する可能性があります。そのため、定期的な塗装や防腐・防虫処理が欠かせません。また、熱に弱い性質もあるため、不燃処理がされていない製品は火気に注意が必要です。使用する際には、不燃処理されたルーバーを選ぶと良いでしょう。
●ルーバーの素材3.人工木
メリット
人工木は、木粉と樹脂を混合して成形された複合素材で、天然木に近い風合いを持ちながら、耐久性やメンテナンス性に優れている点が特徴です。
湿気や紫外線の影響を受けにくいため、バルコニーや屋上、設備機器の目隠しフェンスなど、屋外空間でも使用できます。色あせや腐食が起こりにくいため、長期間美観を保ちやすく、塗装の塗り直しの頻度も少なくて済みます。
デメリット
製品によってはプラスチックのような質感が目立つことがあり、デザイン性を重視する空間では製品選定に注意が必要です。意匠性にこだわる場合には、木目の再現度や手触り、表面仕上げの精度などを事前に確認しておくことが求められます。
●ルーバーの素材4.ガラス
メリット
ガラスルーバーは、自然光を採り入れながら空間に開放感をもたらす製品として、住宅やオフィスなどで利用されています。特にすりガラスや型板ガラスを用いれば、光を通しつつ視線を遮ることができ、プライバシーと採光性の両立が可能です。
ガラスルーバーは室内空間の間仕切りや、バルコニー、階段周りの装飾などに用いられる場合が多く、透明感のある洗練されたデザインを演出します。
デメリット
ガラスは衝撃による破損リスクがあり、施工後の安全性や維持管理には注意が必要です。特に強風時に飛来物が当たる恐れがある場所や、不特定多数が利用する公共施設では、安全ガラス(強化ガラスや合わせガラス)を選定することが基本となります。万が一割れた場合の飛散リスクを抑えるため、飛散防止フィルムの貼付や、構造体との緩衝部にゴム材を入れるなどの対策も有効です。
防犯面においても、手の届かない位置に設置したり、外部側に格子やフィルムを施したりするといった対策を講じることが推奨されます。
素材 | メリット | デメリット |
---|---|---|
アルミ | 耐熱性と耐食性に優れている 軽量で施工性が高い 手入れも比較的簡単 外壁の装飾や窓の目隠しなど、汎用性が高い |
衝撃には弱い 加工や塗装は難しい 形や色のバリエーションが少ない |
天然木 | 自然素材ならではの風合いや温かみが得られる 経年変化で味わい深くなる |
雨風や紫外線により劣化しやすい 定期的なメンテナンスが必要 熱に弱いため、高温になる場所に向かない |
人工木 | 耐久性がある 見た目はほぼ天然木と変わらない製品もある メンテナンスの手間が少ない |
プラスチックのような見た目や触り心地の製品もある |
ガラス | 太陽が出ている間は明るさを感じられる すりガラスや型板ガラスを使うとプライバシーの確保も可能 |
割れやすいため、定期的にヒビや欠けの確認が必要 防犯の観点でも対策が必要 |
 
ルーバーの新たな選択肢、DAIKENの『グラビオルーバー』の特長

『グラビオルーバー』は、DAIKEN独自の素材『ダイライト』を採用し、不燃性とデザイン性を両立した製品です。ここでは、本製品の特長を紹介します。
●公共施設や商業空間をグレードアップする意匠性
『グラビオルーバー』は、シャープなストライプライン形状により天井や壁面に立体的な陰影をつくり出す造作材です。空間に視覚的な奥行きを与えることで、高級感と華やかさを演出します。
天然木7種類に加え、シート化粧40種の木目柄から選べるため、空間コンセプトに応じた製品選定が可能です。オフィスや図書館、医療施設、宿泊施設など、場所を問わず公共・商業空間の意匠性を高めたい場合におすすめです。
●3つの施工バリエーション
『グラビオルーバー』は、設計・施工の自由度を高めるために、「直付式」「ボルト固定式」「クリップ固定式」の3つの施工方式が用意されています。
「直付式」では、ルーバー本体を鋼製下地に直接ビス止めをして固定します。下地が平滑でしっかりしている場合に適しています。「ボルト固定式」は、ルーバーを吊ボルトやハンガーボルトにより支持する方法で、天井の高低差調整やレベル出しが必要な場所に有効です。「クリップ固定式」は、専用の取付部材を使って設置する工法で、メンテナンスや改修工事の際に取り外しが容易なのが特長です。
各方式にはそれぞれに適した納まりや適用条件があるため、用途や意匠、施工環境に応じて使い分けましょう。
●施工の負担を軽減
『グラビオルーバー』は、基材にDAIKEN独自の不燃素材『ダイライト』を採用している点が大きな特長です。この素材は無機質系の成分を主原料としており、不燃材料でありながら軽量性、切断性も高いことから、現場での施工の負担を軽減してくれます。
『グラビオルーバー』には、表面化粧材に天然木突板を使用した『グラビオルーバーUS』と、シート化粧タイプの『グラビオルーバーUB』があり、また芯材に「東海道新幹線再生アルミ」を使用した『新幹線再生アルミ芯タイプ』も扱っています。各製品の詳細は、下記製品ページをご確認ください。
グラビオルーバーUS
グラビオルーバーUB
グラビオルーバーUS/グラビオルーバーUB ボルト固定式 新幹線再生アルミ芯タイプ
多彩なルーバーの活用法

ルーバーは設置場所や他の要素との組み合わせによって、空間の印象や機能性を大きく変える柔軟な活用が可能です。
●天井に設置
天井にルーバーを設置すると立体感のある格調高い空間が演出できます。そのイメージはルーバーのサイズや数、色や素材などによって大きく変わります。しかし、天井全体にルーバーを使用すると重たさを感じることがあるため、圧迫感を発生させないように部分的な設置がおすすめです。特に天井が低い場合は、より一層注意が必要です。
●窓に設置
窓にルーバーを設置する場合、窓の外側に取り付ける「外付けルーバー」と、窓そのものがルーバー構造になっている「ルーバー窓」の選択肢があります。外付けルーバーは羽板の角度を調整することで、外部からの視線を遮りながら、室内側には光と風を取り入れることが可能です。ルーバー窓は、トイレや浴室、道路に面した部屋の窓など、プライバシー確保と換気を両立させたい場所に適しています。
●照明との組み合わせ
ルーバーは照明と組み合わせることによって、おしゃれで落ち着いた空間を演出するアイテムです。間接照明を天井や壁の木製ルーバーに当てれば、柔らかい光の演出が可能です。また、天井ルーバーとペンダント照明を組み合わせることで、天井を高く見せる効果も期待できます。
●フェンスとして活用
ルーバーをフェンスとして設置すると、風通しの確保だけでなく、目隠し効果も得られます。窓の周りやベランダ全体、エアコンの室内・室外機周辺など、プライバシーやデザイン性を保ちたい場所に最適です。
ルーバーを採用した事例
実際の公共施設や商業施設におけるルーバーの導入事例を紹介します。事例を通して、ルーバーの意匠性やメンテナンス性に関する実用的な評価を確認しましょう。
●鳥取県立美術館/鳥取県

鳥取県立美術館では、建物の内外にルーバーを採用しています。特に3層吹き抜け「ひろま」の天井には、平使い、縦使いといった取付方や、角度を変えてルーバーを組み合わせることで、鳥取砂丘の風紋や伝統工芸である倉吉絣の織模様を思わせる意匠になっています。
※屋外のルーバーは、他社製品が採用されています。
設計当初は不燃木のルーバーを検討していました。しかし、溶脱や白華などの不具合が懸念され、また、吹き抜け部分での使用になるため、不具合時のメンテナンスが難しいことから、別の手段を探していました。様々な材料を検討した中で、DAIKENの『グラビオルーバーUS』が条件に合致したことから、採用に至っています。
設計のコンセプトや建材選定の背景について、詳しくは下記インタビューページをご覧ください。
⇒「天井ルーバーと床材の木質材料が生み出す調和 県産材による温かみのある美術館の佇まい」
●渚の交番 SEABRIDGE/広島県

広島県尾道市因島の「渚の交番 SEABRIDGE」では、海に面した開口部から内部へとつながる中央廊下の天井に、色の異なる2種類のルーバーを採用しています。光の加減で美しい濃淡の表情が生まれ、空間デザインにメリハリを与えています。天井面への直付けではなく、あえて15cm吊り下げて設置することで、心地よいゆらぎを演出しました。
※グラビオルーバーは壁面や天井面への直付け、下地材への固定が標準施工方法となっています。本物件では、施工会社様でのご検討、工夫により、吊りボルトによる施工を実現しています。
空間デザインのポイントについて、詳しくは下記インタビューページをご覧ください。
機能と意匠を両立するルーバーの可能性
ルーバーは、目隠しや通風、日射遮蔽、騒音対策など、多様な機能を備えた建材でありながら、空間の印象を左右する重要な意匠要素としての役割も果たしています。
近年では、DAIKENの『グラビオルーバー』のように、不燃性と意匠性を兼ね備えた製品も登場しており、設計の自由度は一層高まっています。施工性やメンテナンス性も含めて総合的に考慮することで、より質の高い空間づくりにつながるでしょう。本製品について興味を持った方がいれば、ぜひ以下のカタログをご覧ください。
「2025-26GRAVIOEDGE・GRAVIO」を資料請求する
また、施設設計においては多種多様な建材選びが重要になります。ぜひプロ向けの情報サイトに登録し、最新の情報をキャッチアップしましょう。
公開日:2022.06.06 最終更新日:2024.04.22
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