防災を意識したオフィス設計のポイントは?被害を抑える具体例

防災

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

オフィスには日常的に多くの人が集まるため、地震や火事など、さまざまな災害を想定した設計が求められます。設計段階で起こり得るリスクに対して適切に対策し、従業員が安心安全に働けるオフィスを実現しましょう。

本記事では、建築基準法や消防法等で定められている防災についての設計ルールや具体的な対策例、おすすめの内装材について紹介します。

オフィス設計において「防災」の観点はなぜ重要?

オフィスの防災設計は、従業員の安全確保と事業継続(BCP)の観点から不可欠な要素です。地震や火災などの災害が発生しても、オフィス内での安全確保ができていれば、従業員への被害を最小限に抑えられます。オフィス設備や重要データの保護ができていれば、企業の迅速な業務再開にもつながるでしょう。

加えて、オフィスが避難所や帰宅困難者の一時待機場所として活用される可能性もあるため、防災備蓄や非常食をストックできるスペースの確保や、適切なレイアウトの設定も重要です。

事前に防災対策を講じることで災害時のリスクを低減できるため、建築士や設計関係者には、安心して働けるオフィス環境づくりが求められます。

オフィス設計における防災対策の具体例

ここでは、オフィス設計における防災対策の具体例をいくつか取り上げます。天井や壁といった内装材選びに配慮することで、安全なオフィス環境を構築しやすくなります。

●天井の落下防止

地震発生時にはオフィスの天井が脱落するリスクがあり、従業員の安全確保のために適切な対策が求められます。特に「特定天井」に該当する場合は、より厳格な脱落対策が必要です。特定天井とは、下記の条件を満たす天井を指します。

①日常的に人が利用する場所
②天井の高さが6m超
③天井の水平投影面積が200㎡超
④天井面構成部材等の質量が2kg/m²超

上記の条件に該当するオフィスでは、建築基準法施行令に基づいた適切な耐震設計が必要です。

例えば新築オフィスでは、吊りボルトの増設や接合金物の強化などが有効です。一方で既存の建築物では、天井をワイヤーで補強したり、落下防止ネットを設置したりすることで安全性を高めます。

参考:
国土交通省告示第七百七十一号」(国土交通省)
建築物における天井脱落対策の全体像」(国土交通省)

●避難経路の確保

オフィスの防災設計では、災害発生時に従業員がスムーズに避難できるように適切な通路幅と動線の確保が重要です。避難経路が狭かったり、障害物があったりすると、避難の妨げになり安全確保が難しくなります。

建築基準法施行令では、避難に使用する廊下の最低幅が定められています。具体的には「両側に居室がある廊下は1.6m以上、その他の廊下は1.2m以上」の幅を確保することが定められています。また消防法施行令において、一定の条件を満たすオフィスでは、避難経路に誘導灯や誘導標識を適切に配置し、安全に移動できるようにすることが求められています。

参考:
建築基準法施行令 第百十九条」(e-gov 法令検索)
消防法施行令 第二十六条」(e-gov 法令検索)

●家具・設備の固定

災害時、特に地震により大きな揺れが発生した場合、家具や設備が転倒、落下をして従業員がケガを負ったり、避難の妨げになったりするおそれがあります。そのため、家具や設備はしっかりと固定しておくことが重要です。

家具や設備の固定方法には主に「床固定」と「壁固定」があり、それぞれ単独でも効果は見込めるものの、可能であれば両方を組み合わせることが推奨されます。例えば重量のあるキャビネットや本棚をL字金具やワイヤーで壁に固定した上で、床にも固定金具を取り付けることで、安全性を向上できます。

●消防設備の備え付け

オフィスにおいて、消防設備は火災発生時の人的・物的被害を軽減するために不可欠です。消防法等により、一定の条件を満たす建物にはスプリンクラー、消火器、火災報知器、避難はしごなどの設置が義務付けられています。

・スプリンクラー:火災を早期に感知し、自動的に消火活動をすることで被害拡大を防ぐ
・消火器:オフィス内の適切な場所に配置することで、初期消火を助ける
・火災報知器:従業員に速やかに火災を知らせ、避難を促す
・避難はしご:メイン階段や避難階段が使用できないケースで避難経路になる

消防法や消防設備の設置基準については下記の記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

⇒「オフィス設計に関わる消防法について│基礎知識や設計時の注意点

参考:
消防法施行令 第七条」(e-gov 法令検索)

●燃えにくい内装材の使用

オフィスに燃えにくい内装材を使用することは、火災時の被害を抑えて安全な避難を可能にするために重要な対策です。具体的には、「防火材料」を採用することで火の広がりを抑えられ、避難時間の確保につながります。防火材料には「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」の3種類があり、難燃、準不燃、不燃の順に防火性能が上がります。

また、オフィスの規模や部屋の用途によっては「内装制限」の遵守が義務付けられるため、事前に確認しておきましょう。法令に適合した内装設計をすることで、火災によるリスクを抑えられます。

内装制限や防火材料について、詳細は下記の記事を参考にしてください。

⇒「建築基準法における内装制限とは?対象となる建築物や緩和の要件
⇒「施設設計に必要な不燃材料とは?どこに何を使う?

参考:「建築基準法 第三十五条の二」(e-gov 法令検索)

オフィスの防災性向上につながる建材

ここでは、オフィスの防災性向上につながるDAIKENの建材を紹介します。安全性に加えて、機能性やデザイン性にも優れた製品を取り上げているため、ぜひ設計時の参考にしてください。

●ダイケンハイブリッド天井

ダイケンハイブリッド天井』は、高い耐震性能(天井許容耐力最大4,000N)を持つ天井システムです。在来天井とシステム天井のメリットを併せ持っており、仕上材の自由度と施工性に優れています。特定天井に対応したグレードもあるため、多様なオフィスに導入可能です。仕上材に吸音性のある天井材『ダイロートン』を採用すれば、オフィスの音環境を整える効果も期待できます。

●マモローカ

マモローカ』は、廊下向けの耐震対策天井です。壁に取り付けた専用金具により、天井下地を支持する構造となっています。吊りボルトを削減し、耐震ブレースを不要としているため、設備類との干渉が発生しにくい点も魅力です。シンプルな構造で施工が容易なため、在来天井に比べて大きく施工時間を短縮できます。

●グラビオエッジ

グラビオエッジ』は、防火性能とデザイン性を兼ね備えた壁材です。不燃材料に分類されており、火災時の延焼を防ぐことでオフィスの安全性を向上できます。リアルな陰影感が特長で、豊富なデザインバリエーションがあるため、空間の雰囲気に合わせて選択できます。

●グラビオルーバーUS

グラビオルーバーUS』は、ルーバータイプの不燃造作材です。オフィスの防火性を向上させつつ、スタイリッシュな空間を実現します。突板仕様のため独特の木の風合いを感じられ、シャープなデザインがオフィスの雰囲気を華やかに演出してくれます。

オフィスは防災対策を踏まえて適切に設計を

オフィスの防災対策は、設計段階で綿密に計画することが重要です。天井の落下防止や家具・設備の固定、避難経路の確保など、災害時に従業員の安全を守るための対策を施すことが求められます。また、適切な消防設備の設置や燃えにくい内装材の採用によって、火災発生時の被害を軽減しましょう。

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