ホテルの内装設計の重要性│考慮したいポイントと注意点

ホテル内装設計

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

ホテルの内装設計は、ただ見た目を美しく仕上げるだけでは不十分です。快適性や清潔感、安全性、そして施設ごとの独自性が調和することで、顧客に選ばれるホテルが完成します。

本記事では、ホテルの内装設計における基本的なポイント・注意点から、おすすめの建材、施工事例まで幅広く解説します。

ホテルにおける内装の重要性

ホテルの内装は、宿泊客の満足度やブランドイメージ、従業員の働きやすさに関わる重要な要素です。ここでは、なぜホテルの内装が重要なのか、一つずつ解説していきます。

●宿泊客の満足度を高めるため

ホテルの内装は、宿泊客にとっての快適さや安心感を醸成し、非日常感を演出するために重要な要素の一部です。ベッドやソファなど什器の配置、照明の設計、色味や素材選びといったインテリアデザインの工夫により、心地良く過ごせる空間をつくれます。例えば、リゾートホテルでは高級感と癒しを兼ね備えたレイアウトや自然素材の活用が宿泊客に好まれるでしょう。このように、ホテルのスタイルやターゲットに合わせた内装計画が、宿泊体験全体の満足度に大きな影響を与えます。

●ブランドイメージを向上させるため

ホテルの内装は、コンセプトを具体化してブランドの世界観を伝える役割を担います。訪れた宿泊客がその空間からホテルの価値を感じ取れれば、ポジティブな印象の定着や再訪意欲の向上が期待できます。内装デザインを通して他のホテルとの差別化を図ることは、競争の激しい立地においても顧客に選ばれる理由の一つになるでしょう。

●従業員のモチベーションを高めるため

ホテルの内装設計は、顧客だけでなく従業員の働きやすさにも関わります。明るさや動線、バックヤードの設備環境などの工夫によって、ストレスの少ない労働環境が実現可能です。快適な職場はサービス品質の向上を促し、結果的に顧客満足へとつながっていきます。

ホテルの内装設計のポイント

ホテルの内装設計では、コンセプトに基づいた空間づくりと、快適性や清潔感、統一感、独自性の確保がポイントになります。それぞれのポイントを押さえてホテルの内装設計に臨みましょう。

●コンセプトに沿った内装にする

内装設計においては、ホテルが掲げるコンセプトに即したデザインを採用することが重要です。一例を挙げると、くつろぎを重視するホテルであれば、木目を活かした内装や、間接照明を取り入れ明るさを抑えた設計が効果的です。コンセプトの一貫性はホテル全体の印象を強め、宿泊客の記憶にも残りやすくなります。

●快適性を高める

宿泊客の快適性を高めるためには、騒音への配慮や空調の調整、適切なレイアウトが欠かせません。特に防音性の高い建材を使用することで、客室内に外部の音が届きにくくなり、静かで快適な宿泊体験をもたらします。

ホテルの防音対策について、詳しくは下記の記事にまとめているため、併せてご覧ください。

⇒「ホテルでの防音対策|対処すべき音の種類と設計時のポイント

●清潔感を出す

内装に清潔感を持たせることも重要です。汚れが目立ちにくい色味や模様を選び、かつ清掃がしやすい加工が施された建材を使用すると、衛生的な環境を維持しやすくなります。定期清掃のしやすさは、メンテナンス費用の削減にも貢献します。

●統一感を出す

空間全体に統一感を持たせると、視覚的な心地良さが生まれます。そのため、壁や床、天井に用いる素材や色味、デザインのテイストを揃えて調和を取ることが望ましいです。異なるテイストの建材を組み合わせる場合でも、アクセントの配置や面積のバランスを調整し、全体の統一感を損なわない工夫が必要です。

●近隣のホテルと差別化する

観光地や都市部では周囲に多数のホテルが存在するため、宿泊客に選ばれるには差別化が必要になります。その差別化の一つの方法が内装です。例えば、その地域ならではの素材や家具、アート作品を取り入れるのも、宿泊客に「このホテルならでは」の魅力を印象付ける一つの方法です。他のホテルとの違いを明確に伝える内装は、宿泊先選びの決定打になる可能性もあります。

ホテルの内装設計における注意点

ホテルの内装はさまざまな法令の制限を受けます。「建築基準法」を筆頭に、「旅館業法」「消防法」「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」などの各種法令への適合が求められます。

不特定多数の人が利用するホテルは、建築基準法において「特殊建築物」に該当し、規模や構造によって内装制限の対象となります。そのため、内装材の選定は特に注意が必要です。

具体的には、ホテルの客室においては、壁(床面から1.2mを越える部分)および天井に難燃以上の材料を使用することが定められています。3階以上の階では、天井材は準不燃以上が義務付けられています。さらに、共用部である廊下の壁・天井には準不燃以上の性能を持つ仕上材を使う必要があります。

また、バリアフリー法においては、緩やかなスロープや手すりの設置、点字ブロックの配置といったバリアフリー対応への配慮を求めています。消防法に基づく警報設備や、避難誘導灯の配置も設計段階で検討が必要です。

法令に準拠した設計は、行政手続きのスムーズな進行だけでなく、安全性の確保や施設運営の信頼性にもつながります。ホテルの設計・建築に関わる法令については、現行法を十分に理解した上で、法改正による情報のアップデートも欠かさず行うように心がけましょう。

建築基準法の内装制限については以下の記事で詳しく解説しているため、現状の知識に不安がある方は、ぜひご覧ください。

⇒「建築基準法における内装制限とは?対象となる建築物や緩和の要件

参考:
建築基準法 第三十五条の二」(e-gov 法令検索)
建築物のバリアフリー化に係る制度の概要」(国土交通省)
火災警報設備等に関する主な規定について」(総務省消防庁)
消防法令上の誘導灯及び誘導標識の概要」(総務省消防庁)

ホテルの内装におすすめの建材

ホテルの内装材は、デザイン性と機能性の両立が求められます。ここでは壁材、床材、天井材に分けて、DAIKENのおすすめ製品を紹介します。

●壁材

『グラビオエッジ』

グラビオエッジ』は、不燃性能と高意匠性を兼ね備えた壁材です。石目調や木目調、布調など多彩な仕上げが揃っており、空間の雰囲気に応じた選定が可能です。ロビーや客室、ラウンジといった場所のアクセントとして使用することで、空間全体の意匠性を高め、訪れる人に強い印象を与えられるでしょう。

『グラビオフィットUB』

グラビオフィットUB』は、抗菌性と耐薬品性を持つ壁材です。多様な木目柄のデザインを選べるため、廊下やエレベーターホールなど、ホテルのさまざまな空間で使用できます。目地の仕上がりがシャープのため、洗練された印象を演出できるでしょう。

ホテルにおける壁の設計に関する考え方は、以下の記事で詳しく紹介しています。併せてご確認ください。
⇒「ホテルの壁における設計ポイントは?おすすめの建材と施工事例

●床材

『コミュニケーションタフ 防音 バイオリーフ DW4/FW4』

コミュニケーションタフ 防音 バイオリーフ DW4/FW4』は、優れた防音性能を持つ木質系床材で、下階への軽量床衝撃音の伝達を軽減します。ホテルの客室や廊下など、静粛性が求められる空間におすすめです。天然木を使用しているため、落ち着いた雰囲気づくりにも役立ちます。

『ダイケン健やかおもて 清流』

ダイケン健やかおもて 清流』は、和紙を材料とした畳で、上品な質感と優れた機能性を兼ね備えています。和モダン空間を美しく演出するだけでなく、和紙を樹脂コーティングしているため撥水性にも優れています。旅館風の落ち着いた空間や、和の演出を取り入れたいホテルに特におすすめです。

●天井材

『グラビオ羽目板V』

グラビオ羽目板V』は、不燃性能を持つ木目調の羽目板です。自然な木質感が特長で、エントランスやラウンジ、客室などにおいて、落ち着きと品格を両立させたデザインを実現できます。視覚的なアクセントとしても優れており、ホテル全体の印象を高める要素の一つになるでしょう。壁材としても使用が可能なため、壁と天井に同一デザインの製品を採用すれば、空間の統一性を高めることもできます。

『ダイロートン ギンガ4』

ダイロートン ギンガ4』は、吸音性と防火性を備えた天井材で、音環境を整えたい共用スペースや客室などにおすすめです。天井面に取り入れることで音の反響を抑え、落ち着きのある静かな空間をつくれます。断熱性も併せ持つため、冷暖房のロスを抑え、電気代の低減にもつながります。

ホテルの内装設計の事例

ここでは、ホテルの内装設計の事例を取り上げます。実際の事例を通して、設計ポイントへの理解を深めましょう。

※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。

●ホテル京阪 天満橋駅前/大阪府

ホテル内装設計

【使用製品】
天井造作材:グラビオルーバーUB 直付式<ライトオーカー柄>
天井材:ダイロートン ギンガ4(現場塗装仕上げ)

「ホテル京阪 天満橋駅前」の施工事例を確認する

●ホテル千畳敷 SO・RA・TO・KI/長野県

ホテル内装設計

【使用製品】
床材:コミュニケーションタフ FW<オーク(クリア色)>
天井材:グラビオ羽目板V<ライトオーカー柄>

施工元請:窪田建設株式会社
施工:株式会社丸滝

「ホテル千畳敷 SO・RA・TO・KI」の施工事例を確認する

●Welina Hotel Premier 心斎橋/大阪府

ホテル内装設計

【使用製品】
畳おもて:ダイケン健やかおもて 清流<09 墨染色>

設計:一級建築士事務所 (有)デルフィ

「Welina Hotel Premier 心斎橋」の施工事例を確認する

●緑の風リゾートきたゆざわ/北海道

ホテル内装設計

【使用製品】
床材:コミュニケーションタフ FW
畳おもて:ダイケン健やかおもて
造作材:格子間仕切

ホテルの内装設計は差別化の重要な要素

ホテルの内装設計は、単に見た目を整えるだけではなく、宿泊者の体験価値を高め、施設のブランディングや従業員の働きやすさにも影響を与えます。

法令に準拠した設計はもちろん、ホテルのコンセプトに即した一貫性のあるデザインや、宿泊者に快適かつ清潔に感じてもらえる素材選びが大切です。また、防音性や断熱性といった機能性を担保した建材の採用により、実用性とデザイン性のバランスを取ることも求められます。さらに、地域性や独自性を内装で表現し、近隣ホテルとの差別化を図ることも、設計段階で考慮しておくべきでしょう。

空間の広さや予算が限られていても、工夫次第で高い満足度を実現することは十分に可能です。建築士が提案するアイデアと建材の特性を活かすことで、「選ばれるホテル」をつくりましょう。

ホテルの内装設計時に建材の選び方で悩むようであれば、カタログを活用すると良いでしょう。幅広い建材を知ることが、設計の引き出しの多さにつながります。

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また、ホテルに限らず多種多様な用途の施設設計で建材選びが重要になります。プロ向けの情報サイトに登録し、最新の情報に触れておきましょう。

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