ホテルの壁における設計ポイントは?おすすめの建材と施工事例

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※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

ホテルの設計において、壁は単なる仕切りではなく、ホテル全体の快適性やデザイン性、安全性に関わる重要な要素です。快適性やデザイン性は宿泊客の満足度に直結し、適切な建材を選定することでよりよい宿泊体験を提供できます。本記事では、ホテルの壁における設計のポイントやおすすめの建材、施工事例を紹介します。

ホテルの壁における設計のポイント

ホテルの壁の設計では、宿泊者の快適性を最優先に考える必要があります。防音性やデザイン性に加えて、法規制への適合も求められるためポイントを理解しておきましょう。

●防音性を高める

ホテルの快適性を左右する要素の一つに防音性があります。宿泊客が安心して休める環境を提供するためには、隣の部屋や廊下からの電話の声や話し声といった音漏れを防ぐことが重要です。音漏れがあると宿泊客の満足度が下がり、ホテルに対する口コミなどで低い評価を付けられてしまうかもしれません。

壁の防音性は、主に遮音性と吸音性によって決まります。遮音性を高めるためには壁の質量を増やすことが有効ですが、施工上の制約から過度に重い材料は使用できないケースもあります。そのため、壁を多重構造にし、空気層を設けることで音の伝達を抑える方法が効果的です。また、建材に防音性の高い製品を使用すると、効率よく遮音・吸音性能を向上できます。なお、遮音性だけを高めると部屋内部で音が反響しやすくなり、かえって快適性が損なわれるおそれがあります。そのため、吸音性の向上にも配慮し、適切な仕上げ材や吸音パネルを組み合わせることが重要です。

また、「太鼓現象」にも注意が必要です。太鼓現象は壁が太鼓の膜のように振動し、音を増幅させてしまう現象です。この現象を防ぐためには、壁内部に吸音材を充填したり、制振シートを使用したりするなどの対策が有効です。ホテルのような静音性が求められる空間では、太鼓現象を抑える設計が不可欠となります。

加えて、「コインシデンス効果」への対策も求められます。コインシデンス効果とは、固い材料を使用する場合に、特定の周波数の音に対して共鳴現象を起こすことを指します。壁に素材や厚みが同じ建材を利用すると、特定の音によって共鳴現象が起こり、遮音性が損なわれてしまいます。コインシデンス効果を防ぐためには、異なる素材や厚みの建材を組み合わせて使用することが重要です。

●デザイン性にこだわる

ホテルは宿泊者に非日常の体験を提供する場所であり、壁のデザインもその印象を大きく左右します。シンプルな白壁だけでなく、素材感のある仕上げを取り入れることで、空間の質を高められます。例えば木目調の壁材を使用することで温かみのある空間を表現したり、石調のパネルを用いて高級感を持たせたりできるでしょう。

また、ホテルのブランドコンセプトに沿ったデザインを採用すれば、統一感のあるインテリアを実現できます。ロビーや廊下などの共用部と客室のデザインを調和させると、一貫した世界観を演出できるでしょう。

建材の選定時には、見た目だけでなく耐久性やメンテナンス性も考慮し、長期的な視点での設計が求められます。

●内装制限を守る

ホテルの壁は、建築基準法に基づく内装制限の対象となるケースが多く、壁などの仕上げ材や下地材に使用する建材には一定の防火性能が求められます。特に、居室の壁には「難燃材料」以上の防火性能が必要となり、通路や階段、火気を使用する厨房などでは「準不燃材料」以上の基準が適用されます。

なお、2020年の法改正で内装制限が緩和され、一定の条件を満たす場合に使用できる建材の選択肢が広がりました。ただし、緩和を受けるには天井の高さを6m以上にしたり、スプリンクラーを設置したりと細かな条件が定められています。条件を満たさない状態で内装制限に違反すると建築士や施主が罰則の対象となるおそれがあるため、関係する法令や緩和の条件については正しく理解しておきましょう。

参考:
建築基準法 第三十五条の二」(e-Gov法令検索)
建築基準法施行令 第百二十八条の五」(e-Gov法令検索)
旅館・ホテルの規制緩和について」(厚生労働省)

ホテルの壁におすすめの建材

ホテルの壁材選びは、防音性、耐久性、防火性などの機能性とデザイン性のバランスを取ることが重要です。ここでは、ホテルの壁に適したDAIKENの建材をいくつか紹介します。

●グラビオ

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グラビオ』は、高意匠と機能性を両立した不燃壁材です。表面にリアルな木目や石目のデザインが施されており、高級感のある仕上がりを実現できます。多彩なカラーバリエーションが用意されているため、ホテルのコンセプトに合わせた選択が可能です。

汚れが付きにくく、メンテナンスが容易である点も特長の一つです。清潔な環境を維持しやすいため、管理の負担を抑えながら快適な空間を実現できます。

●グラビオエッジ

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グラビオエッジ』は深彫り調のエンボス加工が施されており、エッジの効いた陰影と素材感のある意匠が特長の装飾不燃壁材です。間接照明と組み合わせることで演出性が向上し、より個性的な空間に仕上がります。

●遮音パネル・吸音ウールF

遮音パネル』は音漏れを軽減する遮音下地材であり、壁に設置することで効果的に遮音性を向上させます。クロス仕上げに対応しているため、空間のイメージに合わせてクロスを自由に選択できる点も魅力です。

吸音ウールF』は壁内の空気層に充填することで、壁内での音の増幅を低減させる役割を果たします。不燃材料認定を取得しているため、防火性能を求められるホテルの内装にもおすすめの製品です。

●グラビオルーバーUS/UB

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グラビオルーバーUS』『グラビオルーバーUB』は、空間にアクセントを加える不燃造作材です。直線的なラインが特長的で、壁面などに設置することで立体感のある華やかな空間に仕上がります。特に『グラビオルーバーUS』は天然木突板を使用しているため、リアルな木の風合いを室内に取り入れたい場合におすすめです。

DAIKENとつくる宿泊施設

ホテルの壁の施工事例

実際のホテルの施工事例には設計に役立つヒントが詰まっています。ここではDAIKENの壁材を使用した施工事例を2つ紹介します。

※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。

●蔵王四季のホテル/山形県

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壁材:グラビオエッジ カルセ〈ダークブラウン〉

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壁材:グラビオUS(特注品)〈US13(オーク)〉

ホテルの壁材は宿泊体験を左右する重要な要素

ホテルの壁の設計においては、防音性やデザイン性、法規制の遵守が重要なポイントです。特に、快適な宿泊環境を実現するため、遮音性と吸音性のバランスを考慮した設計が求められます。また、コンセプトに合った意匠性の高い壁材を選定し、ホテル全体の魅力を高めることも建築士に期待される役割といえます。

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