商業施設の設計におけるハイクオリティデザインとは
コロナ禍の影響もあり、現代における医療施設や料飲施設では、「壁/床を毎日アルコール消毒する」といったルーティーンが定着しつつあります。そんな中、いかにしてお客様に喜んで頂ける空間づくりを実現するかについて、株式会社 丹青社のシニアクリエィティブディレクター 蓮見 淳一氏にご説明いただきます。
丹青社で30年にわたり様々な空間の内装設計に携わってきた蓮見氏は、商業施設においては「デザイン」「コスト」「耐久性」「施設運営」の全ての面においてバランスの取れたアイディアや工夫を打ち出すことこそが「ハイクオリティデザイン」であると語ります。動画では、蓮見氏による様々な事例を振り返りながら、木材、石材といったマテリアルに関する工夫、色の選び方などのポイントをご紹介します。
お話を聞いた方
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株式会社丹青社
デザインセンター コマーシャルデザイン局
シニアクリエイティブデザイナー
蓮見 淳一 氏
商業施設における「ハイクオリティデザイン」とは
丹青社は総合ディスプレイ業として、人と人、人とモノ、人と情報が行き交う様々な社会交流空間づくりの課題解決に取り組んでいます。空間づくりに関するプロセスを一貫してサポートしており、調査・企画から、デザイン・設計、制作・施工、デジタル技術を活かした空間演出や運営まで、お客様のニーズに合わせたプロジェクトを推進。店舗やエンターテインメント施設などの商業空間に留まらず、ホテルや医療サービス施設などのホスピタリティ空間、展示会や博覧会などのイベント空間、駅や空港などのパブリック空間、イノベーションセンターやショールームなどのビジネス空間、博物館・資料館などの文化空間まで、幅広く携わっています。
老舗専門店を中心に、和洋中の飲食店など、数多くのレストランやホテルの内装設計など、幅広く手がけてきた蓮見氏は、次のように言います。
「商業施設を設計する場合、高額な本物のマテリアルを用いることに越したことはありませんが、プロが見ないと価値がわからないようなところにこだわるのではなく、まず『施設を利用するゲストが見て、どう感じるか』ということ。そして、近年多くのクライアントから望まれる『運営において、清潔感を保ち続けやすいか』ということ。この2つをしっかり考え、工夫することが今のデザイナーには求められています」。
クライアントがその空間で提供するもの・サービスの価値に見合うように、「デザイン」「コスト」「耐久性」「施設運営」においてバランスのとれたアイディアや工夫を打ち出すこと。これこそが商業施設の設計における「ハイクオリティデザイン」であると蓮見氏は語ります。
マテリアルの工夫:木材について
まずは木材の場合について。ポイントは、「本物の木材の使用感」を超越するような使い方は避ける、ということです。
例えば5メートルの長さの壁に、木目シートをつなぎ目無しで貼ると、それを見た人は「これは実際の木材ではない」と感じます。市場に流通する定尺材の寸法である3x6(サブロク)や4x8(シハチ)を意識して、あえて目地を入れる、または見切り材を加えることで、本物の木材と木目シートとの境界が分からないようにすれば、リアリティが生じるようになります。また、メラミン化粧板や木目シートは、木種や仕上げをよく理解した上で種類を厳選して上手く使うことが大切です。
「住宅用のフローリング材や巾木などの木目柄の材料の多くは、プリントした紙をラミネートしたものです。需要の多いものはコストが下がり、トラブルは改良され進化していく――その一例と言えますね。商業施設においても、代替材料はその使われ方によって価値が変わると考えています。デザイナーが賢く活用していくことが、マテリアルの進化を促すことにつながります」。
●木材 事例:イタリアンレストラン
イタリアンレストラン「IL LUPINO PRIME(イル・ルピーノ・プライム)」(東京都・港区)
北青山の閑静な住宅街に創られた本場のイタリア料理を提供するイタリアントラットリア&バーです。床、壁、天井にウォールナット材を多用することで、時代を経ても価値の変わらない上質な空間を意識してデザインされました。
写真の奥に見える壁の仕上げは、四方の見切り材は無垢材を使用していますが、見切りに囲まれた平滑な面は木目調のシート材です。
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