店舗で求められる床材の機能は?床材ごとのメリット・デメリット

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
目次
店舗は多くの方が訪れる空間のため、床材の消耗や劣化が早くなる傾向があります。また、床材のデザインは店内全体の印象を左右し、集客にも影響を与えるため上手にコーディネートすることが重要です。
本記事では、店舗の床材に求められる機能・要素や用いられる床材の種類、それぞれのメリット・デメリットなどについて詳しく紹介します。おしゃれで機能的な床材を選ぶことで、来店客にとって居心地の良い店舗計画を実現しましょう。
店舗や商業施設の床材に求められる機能・要素
ここでは、店舗や商業施設の床材に求められる機能や要素について解説します。床材は普段は目立ちにくい部分ですが、店内での過ごしやすさに大きく影響を与えます。
●防汚性
空間の美しさや清潔さを保つためには、防汚性の高い床材を選ぶことが不可欠です。特に飲食店や美容院などでは、床の汚れが集客にも影響を与えることがあります。また、汚れが付きにくく掃除が簡単な床材にすれば、メンテナンスにかかる労力や費用を削減できます。
●耐久性
店舗や商業施設では多くの来店客が歩行するため、傷や摩耗、衝撃に強い床材が必要です。ボロボロの床材は見た目も悪く、来店客にマイナスのイメージを持たれてしまいます。そこで、高耐久の床材を採用すれば長期にわたって美観を保ちつつ、頻繁な補修や交換を避けられることで、コスト削減にもつながるでしょう。
●防音性
足音などの騒音を抑えることは、店舗や商業施設の快適性に直結します。特に二階以上の店舗では、足音が階下に響くのを防ぐために防音性の確保が重要です。これにより、来店客やスタッフが快適に過ごせる環境を提供できます。
●耐水性
飲食店や水回りを含む店舗では、衛生面と安全性の観点から耐水性の高い床材が求められます。水濡れによる腐食やカビを防ぐことも、衛生面で大切です。また、耐水性のある床材は、清掃のしやすさに加えて滑りにくい加工が施された製品も多く、来店客やスタッフの安全性の確保にもつながります。
●デザイン性
床は空間全体の印象を左右する重要な要素で、店舗や商業施設のコンセプトに合わせたデザイン選びが重要です。床面は面積が広いため、色柄や質感が店舗の雰囲気やブランドイメージに影響を与えます。近年は、床材のデザインバリエーションが豊かになっており、アンティーク調や石目調、木目調など、多彩なデザインが選べます。
店舗や商業施設で主に使われる床材の種類とメリット・デメリット
ここでは、店舗や商業施設で主に使われている床材の種類について紹介します。それぞれの特徴やメリット・デメリットを知ることで、建築主の要望に合わせた床材の提案ができるようになるでしょう。
●磁器タイル(セラミックタイル)
磁器タイル(セラミックタイル)は、陶磁器で作られた床材で、見た目の美しさと耐久性から商業施設で広く採用されています。高級感のある床材のため、ラグジュアリーな空間におすすめです。
メリット
表面が緻密で吸水性が低いため、汚れが浸み込む心配が少なく、美観を保ちやすいのがメリットです。また、水洗いが可能で、汚れた箇所を簡単に掃除できます。石目調やアンティーク調など幅広い色柄があり、店舗の高級感を演出できます。
デメリット
セラミック特有の冷たさがあり、特に冬場は足元が冷えやすくなる可能性があります。また、硬い素材のため歩行時の音が響きやすく、防音性が低い点が課題です。採用する際には、使用する場所をよく検討しましょう。
●木質フローリング
木質フローリングは木材を使用した床材で、「単層フローリング」と「複合フローリング」の2種類があります。単層フローリングはすべて天然木で作られる床材です。一方、複合フローリングは、基材(集成材や合板)に薄くスライスした天然木や化粧シートなどを張り合わせて作られています。どちらも温かみのあるデザインが好まれ、カフェやサロンなどで人気です。
メリット
自然素材ならではの温かみがあり、店舗空間に落ち着きと居心地の良さをもたらします。天然木で作られた単層フローリングには調湿性を備えた製品もあります。木目の自然な質感により、ナチュラル系やアンティーク系のテイストを押し出したい店舗に適しています。
デメリット
木材を用いるため水分に弱く、水を扱う店舗やエリアには適さない場合があります。さらに、一般的なフローリングは傷や摩耗が起こりやすく、多くの人が歩き回る店舗や商業施設での使用には注意が必要です。
ただし、木質フローリングのデメリットを改善した床材も登場しています。DAIKENの『土足対応WPCフローリング』は、WPC(Wood Plastic Combination)加工技術を用いることで、傷が付きにくい仕様になっています。具体的には、木材組織にプラスチックを染み込ませて硬化させる技術により強度を確保しています。店舗や商業施設をはじめ、公共施設や幼稚園、介護・福祉施設など土足で利用する人の多い空間でも使用可能です。
●長尺シート(塩ビシート)
長尺シート(塩ビシート)は、厚さ2~3mm程度のポリ塩化ビニル(PVC)を主材とするシート状の床材を指します。デザイン性と機能性を兼ね備えた床材として、幅広い用途で活用されています。
メリット
長尺シートは、比較的傷や摩耗に強く、高い耐久性を備えています。そのため、多くの人が利用する店舗や商業施設にも適しています。また、石目調や木目調、大理石調など多彩な柄や色が揃っており、店舗のテーマやブランドイメージに合わせて選べます。
加えて適度な弾力性があるため、歩行時の疲労を軽減したり、転倒時の衝撃を和らげたりする効果が期待できます。特に高齢の方や子どもが多い店舗では、安全性の面で選ばれることも多いです。
デメリット
長尺シートはシートを広げて張るため、広い面積を均一に仕上げるには熟練した施工技術が必要です。そのため、施工費用が割高になる場合があります。つなぎ目を目立たせない仕上げが求められることが多く、施工時の調整が難しい点にも注意が必要です。
●フロアタイル(塩ビタイル)
フロアタイルは長尺シート同様、主にポリ塩化ビニルを主成分とした床材です。タイル状に加工されており、石目調や木目調などさまざまなデザインが選べます。
メリット
デザインが豊富で、製品によっては本物の素材に近いリアルな質感が得られるため、店舗のブランドイメージを表現するのに適しています。また、傷や摩耗に強く、長期にわたって美観を保ちやすいのも特徴です。基本的にタイル単位での交換が可能で、部分的な補修がしやすいのもフロアタイルの魅力でしょう。
デメリット
デメリットとしては、表面が硬い素材のため足音が響きやすい点が挙げられます。また、クッション性が低いため、長時間の立ち仕事では疲れやすくなる可能性があります。
●SPCフロア(SPCフローリング)
SPC(Stone Plastic Composite)は、石灰石やプラスチックを混合して作られた新しいタイプの床材で、近年注目を集めています。塩化ビニル系の床材よりも耐久性に優れ、置くだけで施工できる手軽さも人気のポイントです。
メリット
プラスチック素材のため防水性が高く、飲食店や水を扱う店舗にも適した床材です。また、温度や湿度の変化に強く、膨張や収縮も少ないという特徴があります。さらに、接着剤を使わず設置可能なので、工事の手間や施工不良のリスクも軽減できます。
デメリット
石灰石を混ぜて作るという特性上、比較的重量のある床材です。そのため、取り回しが難しくなります。また、デザインは豊富ではあるものの、木質フローリングと比べると人工感があり質感が劣るといった点も考慮して選択する必要があります。
●モルタル
モルタルはセメントに砂と水を混ぜて作る床材で、無機質かつシンプルなデザインが特徴です。
メリット
モルタルで床を仕上げるとクールな雰囲気を演出でき、インダストリアルな印象を持たせたいカフェやモダンな店舗に適しています。また強度が高く、重い什器や家具の設置にも耐えられるのも特徴です。表面に防汚コーティングを施すことで、掃除の手間も減らせます。
デメリット
モルタルは、急激な温度変化や乾燥、経年劣化や地震などによりクラック(ひび)が入ることがあります。幅0.3mm未満、深さ4mm未満のひび割れであればすぐに補修は必要ないとされていますが、防水性や見た目の観点から考えると、定期的にメンテナンスをしたほうが良いでしょう。さらに、冬場には足元が冷えることも多いため、モルタルの床を採用する場所は慎重に決める必要があります。
●カーペット
カーペットは柔らかい繊維を用いた床材で、タイルカーペットやロールカーペットが主流です。店舗や商業施設では、タイルカーペットを用いるのが一般的で、カラーバリエーションも豊富に登場しています。
メリット
カーペットは厚みがあるため足音を吸収しやすく、防音効果が高いのがメリットです。また色柄のデザインが豊富で、コーディネートによって独自性のある空間づくりが可能となります。タイルカーペットなら部分交換がしやすいため、汚れても部分的に張り替えができるのも魅力でしょう。
デメリット
カーペットは繊維が汚れを吸着しやすく、こまめな清掃や洗浄が必要になります。また、耐久性にはやや劣り、摩耗や上に置いた物の跡が目立ちやすいです。そのため、重い什器を設置する場所では、なるべく使用を避けましょう。
【業種別】店舗や商業施設の床材選びのポイント
店舗や商業施設の床材選びのポイントについて、業種別に紹介します。用途や客層に応じて、適した床材を選定しましょう。
●飲食店・カフェ
飲食店やカフェではエリアごとに床材に求められる要素が異なるので、デザイン性や機能性を考慮しながら適切な製品を選ぶことが重要です。
まず、来店客が使うスペースは「店舗の顔」ともいえるエリアのため、機能性とデザイン性の両立が求められます。具体的には耐水性と耐久性が高く、美しい木目や石目調のデザインが選べるフロアタイルやWPC加工を施した木質フローリングがおすすめです。
そして、厨房エリアは頻繁に水を使用したり、スタッフが調理作業で動き回ったりして水濡れや汚れ、衝撃が発生しやすく、耐水性や耐久性、防滑性を意識した床材選びが重要です。そのため、水や汚れに強く丈夫な磁器タイルやモルタルを使用するのがおすすめです。
最後に、食材などを保管するバックヤードは、スタッフ専用のエリアとなるためコストパフォーマンスを重視した床材選定が推奨されます。例えば、フロアタイルであれば耐久性が高く、部分的な交換もできるため経済的といえます。また、スタッフの休憩室としても使う場合は、柔らかいカーペットの採用もおすすめです。
●アパレル
ファッション性やトレンドを反映した空間デザインが求められるアパレルショップでは、デザイン性とメンテナンス性の両立が重要です。
まずデザイン面では、店舗のコンセプトや商品を引き立てるデザインが求められます。そのため、ブランドカラーやインテリア全体との調和を意識して床材を選定しましょう。そしてメンテナンス面については、店内を歩き回って商品を見ることを想定し、摩耗に強い床材を選ぶのがおすすめです。また、店内をきれいに保つために清掃しやすい床材が適しています。
上記の理由から、アパレル店にはフロアタイルの床材がおすすめです。石目調や木目調などデザインが豊富で、かつ耐久性と清掃性が高いためです。部分補修も容易で、店舗の運営コストの抑制にもつながります。
●ホテル
ホテルでは、ロビーや客室などエリアごとに異なる機能・要素が求められます。
まずロビーは宿泊者を出迎える場所になるため、高級感と耐久性が必要です。ホテルは1年を通してほぼ休みなく営業することが多く、あらゆる天候に対応できる防汚性や耐水性も重要となります。具体的には、セラミックタイルや大理石調のフロアタイル、WPC加工を施したフローリングで上質感を演出するのがおすすめです。
次に客室では、快適なホテルステイを提供するため静粛性と温かみのあるデザインが求められます。宿泊者が素足で室内を歩くことも多いため、足触りの良さも重要です。そのため、ホテルの客室にはカーペットが用いられるケースが多いです。
●美容院・理容院
美容院や理容院では、施術の際に毛髪や水、薬剤などが床に落ちるため、防汚性と耐水性が優先されます。集客の観点からおしゃれな雰囲気も大切になるため、作りたい店舗イメージに合わせた高いデザイン性を備える必要があります。また、スタッフがキャスター付きの椅子に座りながら店内を移動することも考えられるため、キャスターでの走行性や耐久性にも配慮すると良いでしょう。
このような美容院や理容院の特性を踏まえて、床材にはフロアタイル(塩ビタイル)やクッション性のある長尺シートが選ばれることが多いです。また、高級感を演出したい店舗では、フロアタイルも適しています。石目調やアンティーク調のデザインで、自由にコーディネートしましょう。
店舗や商業施設で使われている床材の事例
最後に、店舗や商業施設で実際に使われているDAIKENの床材の事例について紹介します。具体的なイメージを確認することで、店舗の設計に活かしてみてください。
●鉄板焼 北野/ANAクラウンプラザホテル神戸(兵庫県)

使用製品:土足対応WPC床材〈ナラ(ブラウン)〉
●MUJIcom 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス(東京都)
店舗の床材は機能性やデザイン性に注目して選択を
床材は普段は目立ちにくい部分ですが、実は店舗や商業施設の雰囲気や快適性に大きな影響を与えています。近年は、デザインに優れているだけでなく機能も充実している床材が多く登場しているので、ぜひ用途や店舗のイメージに合わせて選択してみてください。
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