店舗の天井設計の基礎知識|天井の役割や天井高の重要性・注意点

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
建築主がイメージする理想の店舗を実現するには、内装の設計やデザインが肝になります。特に、天井の色・柄・高さは、人間が認識する空間の広さや雰囲気に大きな影響を与えます。そのため、天井をうまく設計することで、購買意欲の向上や滞在時間の延長・短縮といった効果を期待できるのです。
今回は、店舗における天井の役割や設計のポイントを解説します。空間演出や機能面、法基準などのさまざまな観点から説明するので、ぜひ参考にしてください。
店舗設計にあたり押さえておきたい天井の役割
店舗設計において、天井はデザイン・機能の両面において重要な役割を担っています。はじめに、天井によって店舗の雰囲気や機能性がどのように変わるのかを確認していきましょう。
●店舗内の広さの見え方をコントロールする
天井のデザインにより、空間の印象は大きく変わります。例えば、白やベージュのような明るい色の天井なら「広い、天井が高い」といった印象を、黒や紺色のような暗い色合いであれば「閉鎖的、天井が低い」という印象を受ける傾向があります。そのため、コストや法律の制限で、天井高を高く設定するのが難しいケースでは、天井に明るい色を採用し、見え方をコントロールすることが有効な手段です。
また、天井が明るいと視認性が良くなるため、多くの商品を見てもらいたい店舗に適しています。一方、暗い天井は集中力が高まる効果があるため、高級な商品の展示をじっくり見てもらいたい場合におすすめです。
●店舗のコンセプトを演出する
天井は、デザインに大きな影響を与えることから、店舗のコンセプトを表現する上でも重要な要素です。例えば、高級ブランドの店舗がブランド固有の柄を天井に取り入れることで、そのブランドの商品を買いにきた利用客に特別感を与えることができるでしょう。
天井は店舗のどこにいても目に入る部分です。部屋の場所によって、視界に入りにくくなる壁よりも、空間演出に大きな影響を与えます。特に、広い空間では、天井の色・柄・高さによって印象が大きく変わるので、建築主がつくりたい店舗のイメージやコンセプトを理解して、理想を表現できるよう丁寧に設計することが大切です。
●店舗内の温湿度を快適に保つ
天井は機能面でも重要な役割を果たしています。その一つが、店舗内の温湿度を快適に保つことです。暖かい空気は上に上がり、冷たい空気は下に降りるという性質を考慮して天井の高さを調整することで、室内の温度をコントロールしやすくなります。
また、空間が広すぎると冷暖房機器による空調が効きにくくなります。空間の大きさに見合った冷暖房機器を設置すれば適切な温湿度調節は可能ですが、ランニングコストが高くなるだけでなく、環境への悪影響も懸念されます。デザインやコンセプトを重視しながらも、コストや環境に配慮した設計が大切です。
●清潔な店内環境を保つ
天井の設置は衛生面への配慮にもなります。天井を設置しないと設備機器や配管に積もったホコリ等が利用客の滞在するスペースに落ちてしまい、場合によっては不衛生な印象を与えることにつながります。
一方、カフェや美容室などでは、天井を張らない「スケルトン天井」も人気です。スケルトン天井はコンクリートがむき出しの状態で、インダストリアルな印象に仕上がることから、おしゃれな空間を演出したい場合に向いています。このようにデザイン性など特別な理由があれば、スケルトン天井も選択肢になりますが、基本的には衛生・機能面に配慮して天井を設置するのが望ましいでしょう。
●店舗内の音環境を調整する
天井や壁、床に遮音・吸音機能のある製品を採用すれば、音環境を改善することができます。例えば、音楽室の天井に穴が開いていたり、音楽ホールの天井が折れ曲がっていたりするのも、吸音や音の反響に配慮した設計を行っているためです。音環境は、店舗の居心地や快適性、ひいては滞在時間に影響するため、利用客にどのような行動を取ってほしいかを踏まえて天井を設計しましょう。
店舗の天井高が重要な理由
次に、店舗の設計において、天井高の設定が重要である理由を見ていきましょう。空間演出だけでなく、建築基準法で定められている制限にも留意する必要があります。
●利用客の滞在時間に影響を与えるため
前述のとおり、天井の色や柄だけでなく高さによっても空間の印象が変わり、人の行動に影響を与えます。天井が高いと開放感のある空間を演出できるため、利用客はのびのびと施設を利用でき長く滞在する傾向があります。一方、天井高が低いと緊張感を与えられるため、利用客に対して「早く移動しよう」と思うように働きかけることが可能です。建築主が回転率を高めて売上を伸ばす店舗経営を目指す場合には、天井高を低く設定することも検討しましょう。
●建築基準法で最低限の天井の高さが定められているため
建築基準法施行令第21条では「居室の天井の高さは、2.1m以上でなければならない」と定められています。居室は、建築基準法第2条4号により「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」と定義されており、店舗の売り場や観覧場の客席なども居室に含まれます。建築基準法に違反すると、場合によって建築主・設計者・工事監理者・施工業者などが行政処分や罰則を受ける可能性があるため、設計の際は法令にのっとった天井の高さを設定することを徹底しましょう。
参考:
「建築基準法施行令第二十一条」(e-Gov法令検索)
「建築基準法第二条四号」(e-Gov法令検索)
店舗の天井高や天井材を決める際の注意点
ここでは、店舗の天井高や天井材を決める際の注意点を紹介します。前節と同様に、空間演出と法基準の観点から解説します。
●店舗の戦略を意識する
まず大切なのが「店舗の戦略を意識する」ことです。経営戦略によって適した天井高が異なるため、建築主にヒアリングをして店舗のコンセプトや集客・運用の仕組みを把握し、戦略を意識した空間演出を行いましょう。以下に、利用客の滞在時間に着目した天井高設定の具体例を挙げます。これは感覚的な部分のため個人差が出ることもあります。
例1:天井が低い店舗
天井が低いことにより、圧迫感を感じやすいため長期滞在がしづらい。そのため、客数を増やし回転率を高めたい場合には、天井をあえて低くすることがある。
例2:天井が低い店舗
天井が高いことにより、開放感を感じやすいため、リラックスしやすく長期滞在しやすい。そのため、滞在時間を延ばして客単価を上げたい場合には、天井をあえて高くすることがある。
また、経営戦略を実現するために、デザインによる心理効果を利用することも大切です。非日常感を与える暗めの天井、のびのびと回遊したくなる明るい天井、温かみを感じて落ち着ける木目天井など、店舗や取り扱う商品の魅力を最大限に引き出せる演出を目指しましょう。
さらに、利用客を増やすためには快適性にも配慮する必要があります。会話しやすい空間にするために、吸音・遮音を実現できる天井材を採用するのがその一例です。居心地の良い店舗にすることは、ビジネスを成功させる大前提ともいえる要素なので、建築主が求める環境に適した設計を行いましょう。
ここで、店舗の天井設計に役立つDAIKENの製品を紹介します。店舗戦略に合わせて採用をご検討ください。
まず、『グラビオ羽目板V』は施工性に優れ、多種多様なデザインバリエーションのある木目調の天井材です。明るい雰囲気を演出する「ネオホワイト」「タモ柄」や、重厚感のある空間演出におすすめの「ウォールナット柄」「アパ柄」など、作りたい店舗のイメージやコンセプトに合わせて選択可能です。
また『グラビオUB』は壁材ではありますが、3mm厚のタイプは天井材として利用ができます。こちらも豊富な色柄を揃えており、天井に加えて壁にも同製品を採用することで、統一感のある美しい空間コーディネートが実現します。
また、店舗の快適性を高める天井材としては、吸音効果のある『ダイロートン』がおすすめです。人が耳障りに感じやすい中・高音域を抑えてくれるため、スタッフと利用客や利用客同士での会話がしやすい、快適な店舗環境づくりに役立ちます。
●建築基準法の内装制限を守る
建築基準法では天井高の制限が定められていることを述べましたが、それに加えて天井材については同第35条の2によって「内装制限」が定められています。建築基準法における内装制限の趣旨は「万が一火災が起きた場合に、被害を抑えること」であり、建物や部屋の種類・用途・規模(床面積・階数)などによって、定められた一定基準以上の「燃えにくい」内装材を使用しなければいけないことになっています。
内装制限に違反すると、天井高の制限と同様に行政処分や罰則を受けることがあるので、店舗の内装材を選択する際は法令に適合するか必ず確認した上で採用するようにしましょう。内装制限については、下記の記事で詳しく解説していますので参考になさってください。
⇒建築基準法における内装制限とは?対象となる建築物や緩和の要件
参考:「建築基準法第三十五条の二」(e-Gov法令検索)
店舗の天井設計の事例
最後に、DAIKENの天井材を採用した店舗の天井設計の事例を紹介します。天井のデザインや高さによって空間の印象が大きく変わることがわかるでしょう。
●BAR POKKE/東京都

使用製品:グラビオ羽目板R〈UB74(ニレ柄)〉
●OSシネマズ ミント神戸/兵庫県
理想の店舗を実現するためには天井設計が大切
店舗において、天井の高さやデザインは利用客の行動に影響し、経営の成否にも関わり得る重要な要素です。また、法令に準じて天井の高さや建材を選定する必要もあるため、建築主が持つ店舗のイメージや経営戦略を把握しつつ、適切に設計を行うことが大切です。
DAIKENでは、店舗設計に役立つ資料をご用意しています。さまざまなコンセプトに対応する内装材や、音環境・衛生面に配慮した製品を紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
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