建築設計における空間デザイン(スペースデザイン)とは?効果や実例

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
オフィスや店舗、宿泊施設など、多くの人が利用する空間では、空間デザイン(スペースデザイン)が非常に重要です。空間デザインを適切に計画することで、さまざまな恩恵を受けられます。ただし、一口に「空間デザイン」と言っても多様な種類があるため、目的や用途に合わせて適切に設計に取り入れる必要があります。
本記事では、空間デザインによる効果や主な種類、実際の事例について紹介します。
空間デザイン(スペースデザイン)とは?
そもそも空間デザインとは、建築物のコンセプトや建築目的、利用者に与えたいイメージなどを基に、空間を設計・演出することです。英語では「スペースデザイン」とも言います。
具体的には、住居やオフィス、商業施設等の建築において、建築士やインテリアデザイナーが空間を総合的にデザインすることを「空間デザイン」と呼びます。デザインの対象は建築物の内観・外観、家具の選定・配置、色彩のコーディネートなど、多くの要素が含まれます。
空間デザインによってもたらされる効果
ここでは、空間デザインによってもたらされる主な効果について解説します。空間デザインを考慮して設計することで、多くの効果が期待できます。
●ブランドイメージの向上
空間デザインは、企業のブランドイメージ向上に大きく貢献します。店舗やオフィスなどの空間設計にこだわることで、企業の価値やコンセプトを視覚的に伝え、客や従業員にポジティブな印象を与える効果が見込めます。
例えば、内外装のデザインや色彩、家具のテイストなどをブランドイメージに沿って統一すると、企業に対して一貫性のある印象を持ち、信頼性の向上につながります。
ブランドイメージの向上は、結果として集客力の向上や売上への好影響が期待できるため、商業施設やオフィスの建築プロジェクトでは、空間デザインを意識して設計を行うと良いでしょう。
●快適性の向上
建築物そのものの美しさを引き立てるだけでなく、機能性や快適性を高めることも空間デザインの重要な役割です。例えば、人の動きを考慮した動線設計を行えば、スムーズで安全な移動が可能になり、客や従業員にとって使いやすい空間になります。
また、空間デザインの中で自然光を活かした照明計画を取り入れれば、室内環境を明るく保ちやすくなり、心理的な快適さを向上させられるでしょう。さらに、色彩計画によってリラックス効果や集中力向上などの心理的影響を与えることも可能です。
建築主と打ち合わせを重ねながら希望に沿った設計プランを提案し、快適な空間を実現しましょう。
●生産性の向上
空間デザインによって快適性を高めることで、従業員の生産性向上にもつながります。動線設計や自然光を取り入れた照明計画、心理効果を考慮した色彩計画などを適切に取り入れれば、集中力を維持しやすい環境になり、生産性にも良い影響がもたらされるでしょう。
また、ストレスが少なくリラックスできる空間は、働きやすさも向上するため、従業員の定着率が高まる効果が期待できます。優秀な従業員が長期間在籍してくれれば、結果的に企業の競争力強化にもつながります。
空間デザインの主な種類
ここでは、空間デザインの主な種類について紹介します。空間デザインは、建築物の用途や目的、デザインの範囲によってさまざまな種類に分けられます。
●住宅インテリアデザイン
住宅インテリアデザインは、住空間の快適性や機能性を向上させるために、住宅内部をデザインする分野です。家具の配置や照明計画、色彩のコーディネートなどを含み、建築主が思い描くライフスタイルを実現するための空間設計が求められます。
●商業インテリアデザイン
商業インテリアデザインは、店舗やオフィス、ホテルなど、商業を目的とした空間の設計を行う分野です。ブランドイメージを強調し、顧客の心理に訴えるデザインが求められます。家具の配置や照明、色彩計画などを通じて魅力的な空間を演出することで、集客や売上向上に貢献します。
●展示スペースデザイン
展示スペースデザインは、博物館やギャラリー、展示会ブースなどの空間を設計する分野です。来場者が快適に鑑賞できる動線設計や、作品や商品が最大限に魅力を発揮できるような照明・色彩計画が求められます。
●ランドスケープデザイン
ランドスケープデザインは、公園や広場、商業施設の屋外空間などを設計する分野です。地域や自然環境と調和した空間が求められるため、植栽計画や動線設計、照明デザインなどが重要になります。
空間デザインの実例
ここでは、DAIKENの製品を採用した空間デザインの実例について取り上げます。具体的な設計ポイントを知ることで、自身の業務に活かしてみてください。
●須賀工業株式会社 新本社ビル/東京都

須賀工業株式会社の新本社ビルは、従業員の健康や働きやすさを重視した設計が取り入れられています。特に快適性の向上とすっきりとしたデザインを両立させた「ミニマルでフラットな天井」の表現が特徴的であり、抜け感のある空間を実現しています。自然光と間接照明を組み合わせた照明計画など、空間設計の工夫が多く見られます。
詳細については、以下のインタビュー記事をぜひご確認ください。
⇒「【前編】ウェルネスオフィスが描き出す、新たな天井表現(オフィスのコンセプト編)」
⇒「【後編】ウェルネスオフィスが描き出す、新たな天井表現(天井材編)」
●渚の交番 SEABRIDGE/広島県

渚の交番 SEABRIDGE は、地域と海をつなぐ新たな交流の場として建築されました。自然と調和した建築デザインが重視されており、訪れる人々が心地よく過ごせるような設計がなされています。
ルーバーと天井材には同じ木目調のデザインが採用されており、統一感のある空間に仕上がっています。また、床材は天然木の美しさはそのままに、木材組織にプラスチックを染み込ませて硬化させたWPC加工のフローリングを使用しており、子どもたちが走り回っても安心な耐久性を実現させています。
詳細については、以下のインタビュー記事をぜひご確認ください。
⇒「新たなつながりと文化を生み出す「渚の交番SEABRIDGE」(施設概要編)」
⇒「新たなつながりと文化を生み出す「渚の交番SEABRIDGE」(床材編)」
⇒「新たなつながりと文化を生み出す「渚の交番SEABRIDGE」(天井材編)」
●ホテル千畳敷 SO・RA・TO・KI/長野県

ホテル千畳敷SO・RA・TO・KIは、雄大な景観と調和した空間デザインが特徴です。“日本一空に近いテラス” として、来訪者が景観をより間近に感じられるよう、テラスとレストランの一体感を重視しています。屋外デッキと室内フローリングの板目方向や位置を揃え、外と中の繋がりを感じられるような設計になっているのもポイントです。
詳細については、以下のインタビュー記事をぜひご確認ください。
⇒「雄大な景観に調和する床材・天井材で「日本一空に近いテラス」を演出」
●なんばスカイオ/大阪府

なんばスカイオは、海と緑の要素をデザインに落とし込んで設計されました。「スカイロビー」の壁面には、日差しによって表情が変化する青みがかったタイルを張り、海を表現しています。また、天井には自然を感じさせる木目の天井材を採用し、調和の取れた空間を実現しています。
詳細については、以下のインタビュー記事をぜひご確認ください。
⇒「海と緑を感じさせる「スカイロビー」に長く美しさを保てる木目突板ダイライトを」
●熱海桃乃八庵/静岡県

熱海桃乃八庵は、伝統と革新が共演する空間が特徴的な、日本初のキュレーションホテルです。築80年を超えた元旅館を、建築当時の意匠を残したまま改修しています。新たに取り入れた素材も自然素材を基本として、なるべく手仕事の温もりが感じられるものが選ばれています。館内の床は水回りを除いて畳が使用されており、伝統的な和のしつらえとの調和が感じ取れる設計となっています。
詳細については、以下のインタビュー記事をぜひご確認ください。
空間デザインを考慮して設計を行おう
空間デザインは、利用者の快適性や企業のブランドイメージの向上、さらには地域との調和を実現するために重要な要素です。空間デザインを取り入れることで、建築主は多くのメリットを享受できるため、設計時には積極的に提案に盛り込んでいきましょう。
オリジナリティのある空間デザインをつくるためには、知識の引き出しが必要です。情報収集の仕方に迷うようであれば、今回取り上げた事例のような、他の施設の空間デザインを参考にするのも効果的でしょう。事例を通して、設計のヒントを見つけてみてください。
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