学校・教室の天井を設計するポイント│安全性と快適性を実現するには?

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
学校や教育施設の天井設計には、一般の建築物とは異なる厳しい条件が求められます。児童生徒の安全を守る耐震・防火性能はもちろん、授業を快適に行うための音環境や温熱環境、維持管理のしやすさまで、設計者は多面的な視点で空間を考える必要があります。
特に、地震時の天井落下事故を防ぐための特定天井の設計基準や、火災に備えた内装制限への対応などは法令上の必須要件です。さらに、文部科学省が示す「学校施設整備指針」では、学習環境の質を高めるために、音・光・空気の快適性を確保することが重視されています。
こうした背景のもと、学校における天井材の選定は、単なる仕上材選びではなく、教育の質に関わる快適性と安全性を両立させる建築的判断として重要性が増しています。本記事では、学校や教室の天井設計に関する基本ルールから、音環境・温熱環境の整備、実際の施工事例、おすすめの建材までを解説します。
学校・教室の天井設計で押さえるべきルール
学校や教室の天井設計においては、考慮しておくべきルールがいくつかあります。ここでは、耐震性や安全性に関わる、「特定天井」と「内装制限」について説明します。
●特定天井
特定天井とは、高さ6mを超える位置に設けられ、面積が200m²を超える吊り天井を指します。
東日本大震災では、体育館や講堂などの大空間で天井脱落による人的被害が発生しました。これを受けて、国土交通省は「建築物における天井脱落対策の基準」(2014年施行)を定め、構造的安全性の確保を義務付けています。
特定天井に該当する場合、「仕様ルート」「計算ルート」「大臣認定ルート」の3種類いずれかを使用して安全性の検証が必要です。吊りボルトの高さをおおむね均一にする、ブレースによる水平支持、クリアランスの確保など、落下防止対策を講じる必要があります。
例えば、吊りボルトの高さがばらばらでは、地震時に天井の変位が異なるため脱落リスクが高く、吊りボルトの高さをおおむね均一にすることが推奨されています。ブレースは適切な間隔で配置し、天井面全体を剛体的に拘束する必要があります。ブレースの接合部は母材に確実に緊結することで、耐震性を高められます。天井周囲の壁や梁とのクリアランスは、周囲を固定せずにL型アングルなどの金具を介して天井を支持し、建物の揺れに追従させる方法もあります。
上部にあるものはすべて被災時に落下の危険性があるため、落下防止対策は天井・照明器具・空調吹出口などの天井等に行います。体育館や講堂などでは、照明やスピーカーなどの設備機器も天井と一体で揺れる構造となるため、支持部の剛性や緩衝設計も重要です。
具体的には、照明器具・スピーカー・空調吹出口などの設備機器を天井材に直接取り付けず、天井構造体とは独立した支持材(補助吊りボルト)で支えることが原則です。これにより、設備の自重や振動が天井面に集中せず、構造全体の安定性が向上します。また、天井と設備機器で揺れ方が異なるため、設備機器と天井の間にクリアランスを設けます。
参考:
「建築物における天井脱落対策の全体像」(国土交通省)
「学校施設における天井等落下防止対策のための手引」(文部科学省)
⇒「天井の落下を防ぐ必要性|設計時に取り入れたい落下防止策は?」
●内装制限
内装制限とは、火災時に避難安全を確保するため、建物内部の仕上材に防火性能を求めるルールです。建築基準法第35条の2および消防法により、用途や規模に応じて使用できる材料が定められています。
学校の場合、家庭科室・理科室・ボイラー室などの火気を扱う部屋や無窓居室とその避難経路である廊下などが対象になり得ます。これらの部屋では、天井および壁に不燃材料または準不燃材料を使用し、延焼や煙の発生を抑える必要があります。
また、内装制限区域と非制限区域を明確に分ける設計が求められ、廊下や避難経路との接続部では防火区画の確保も重要です。
防火設計は建築計画上の安全性能を担保する根幹的要素です。設計者は、仕上材の選定時にカタログの国土交通大臣認定番号を確認し、仕様書に正確に反映することが求められます。
参考:
「建築基準法 第三十五条の二」(e-Gov 法令検索)
学校の教室に求められる環境・機能の例
教育施設の設計に関わる「学校施設整備指針」では、学習環境の質を左右する要素として、音環境・温熱環境・換気性能の確保を求めています。学校施設整備指針とは、文部科学省が示す設計・整備の基本的な考え方をまとめた公式ガイドラインであり、教育施設設計の“共通基準”ともいえる重要な資料です。また、これ以外にも学校教室の設計にはさまざまなガイドラインや基準が設けられています。
ここでは、ガイドライン等を踏まえて、学校の教室に求められる環境や機能の例について取り上げます。
参考:「学校施設整備指針」(文部科学省)
●良好な音環境
教室での音の聞き取りやすさは、児童生徒の集中力や授業の理解度に大きく影響します。
日本建築学会の「学校施設の音環境保全規準・設計指針」では、普通教室の残響時間(200m³程度)を約0.6秒以下とすることが推奨されています。残響時間が長いと声が反響し、言葉の明瞭度が低下するため、天井材や壁材に吸音性をもたせる設計が重要です。
例えば、吸音効果の高いロックウール化粧板や多孔質ボードを用いることで、音の乱反射を抑え、発話の明瞭性を向上できます。用途に応じて音楽室では吸音、視聴覚室では防音、教室では明瞭度重視といった設計意図の使い分けも必要です。
参考:「学校施設の音環境保全規準・設計指針」(日本建築学会)
⇒「生徒の集中力を高める方法! まずは教室の音環境の見直しを」
●空気の快適性
音と並んで、温度・湿度・換気のバランスも学習環境に直結します。文部科学省の「学校環境衛生管理マニュアル」では、室温17℃~28℃、相対湿度30%~80%を適正範囲とし、四季を通じた快適性の確保を求めています。
CASBEE学校評価では「冬期22℃以上、夏期24℃以下を維持できる設備容量を確保しているか」が最高評価の基準です。CASBEE学校評価基準とは、文部科学省や自治体の学校整備事業でも採用が進んでいる、環境品質を数値化するための建築評価システムで、公立学校整備事業などで利用されています。
温熱環境が適切に整うと、授業中の集中力や学習意欲の維持に好影響を与えるでしょう。特に木質ルーバーや吸放湿性のある天井材を採用することで、温湿度の変化を緩和し、季節を通じて安定した室内環境を実現できます。
参考:
「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進」(文部科学省)
「学校環境衛生管理マニュアル」(文部科学省)
⇒「学校建築には遮音性能が重要!? 教室の音環境を評価するCASBEE学校とは」
⇒「生産性をあげるには温度と湿度が重要! 学校での授業をより効果的にするには」
学校・教室の天井におすすめの建材
学習環境の質を高めるためには、安全性・吸音性・意匠性などのバランスを備えた建材選定が鍵となります。ここでは、DAIKENが取り扱うおすすめの建材を紹介します。
●ダイケンハイブリッド天井
『ダイケンハイブリッド天井』は、地震時の天井落下を防ぐために開発されたユニット型天井です。天井下地・吸音板・支持金具を一体化させた構造により、揺れを面全体で分散し、従来の吊り天井に比べて脱落リスクを低減します。
体育館や講堂など天井高のある大空間にも対応し、特定天井の基準を満たす(グレードによる)安全設計です。仕上材を自由に選べるため、吸音性能に優れた材料を選べば教室やホールでの残響を抑え、快適な音環境づくりに貢献します。
●ダイロートン スクールトーン
『ダイロートン スクールトーン』は、教室や図書室などの学習空間に適したトラバーチン模様の吸音天井材です。
声や音の反響を効果的に抑える特徴があり、授業中の聞き取りやすい環境や集中しやすい環境づくりに貢献します。不燃材料として国土交通大臣認定を取得しており、安全性にも優れています。調湿性能があり、快適で安心できる学習環境を実現するためのおすすめの天井材です。
学校・教室の施工事例
ここではDAIKENの製品を使用した学校・教室の天井施工の事例を紹介します。
※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。
●寒河江市立柴橋小学校/山形県

【使用製品】
耐震天井工法:ダイケンハイブリッド天井
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン 直張ベベル600
●京都光華中学校・高等学校 光風館図書館・多目的室/京都府

【使用製品】
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン スクールトーン<ファインブレス>
 

【使用製品】
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン リブ
「京都光華中学校・高等学校 光風館図書館・多目的室」の施工事例を確認する
●日ノ本学園高等学校 チャペル棟/兵庫県

【使用製品】
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン スーパーワイド直張<トラバーチン>
天井下地材:ダイケンハイブリッド天井
学校建築の質を高めるには天井の設計・建材にもこだわろう
学校は児童生徒の学びの場だけではなく、地域の安心を守る防災拠点でもあります。そのため、天井材ひとつを選ぶにも、耐震性・防火性・音環境・温熱環境といった多角的な視点が求められます。
特に近年は、子どもたちの集中力や心理的快適性を考慮した音響・温熱・視環境設計が重視されています。安全基準を満たすだけでなく、教育活動の質を高める設計提案こそ、これからの建築士に求められる姿勢です。
DAIKENでは、学校施設向けの各種建材をまとめたカタログを用意しています。最新の事例や仕様情報を確認しながら、より良い教育環境の創出にお役立てください。
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