学校建築には遮音性能が重要!? 教室の音環境を評価するCASBEE学校とは

CASBEE学校

学校の教室は生徒たちが集中して効率よく学べるよう、快適かつ健康にも配慮された環境でなければなりません。教室環境づくりのヒントになるのが、学校建築の環境性能を評価する手法「CASBEE学校」です。CASBEE学校では教室の快適性の評価項目として温湿度や音環境などが設定されています。
今回はCASBEEとは何かを解説し、新学習指導要領で重視される学習スタイルに適した音環境について提案します。

学校建築の環境性能を評価するCASBEE学校とは

CASBEE学校

CASBEE学校は、学校建築の環境性能を評価する手法のことです。
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiencyの頭文字を取ったもので、建築物の品質を総合的に評価するシステムを指します。CASBEEには住宅系、建築系、まちづくり系などいくつかの種類があり、それらを総称してCASBEEファミリーと呼んでいます。
CASBEEは環境負荷と環境品質をそれぞれ採点し、その結果を元に建築物の環境効率を評価します。環境負荷とは公的環境に与える環境的影響のマイナス側面を意味します。環境負荷に関する評価ポイントには、自然エネルギーの利用や節水、有害物質を含まない材料の使用などが挙がっています。
一方で環境品質の評価ポイントは、建物の利用者の心地よさや快適性を向上させられるかどうかという点になります。CASBEEでは環境品質が高く、環境負荷が低いほど環境性能が高い建物と評価されます。

CASBEE学校とはCASBEEファミリーの中の学校バージョンであり、文部科学省によって2010年に策定されました。

CASBEE学校の環境品質には教室の快適性も含まれるので、快適で学習しやすい教室は環境品質が高いといえます。例えば、音、温熱(湿度含む)、光、空気質、機能性・使いやすさなどの観点から教室内環境を評価します。

CASBEE学校の視点から考える快適な教室づくりに欠かせないもの

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生徒の集中力を高め、効率よく学ぶには、快適な教室を作るべきであるという認識を持つ人は多いでしょう。しかし、いざ環境づくりを実践しようとしても、どこにポイントを置けば快適な教室になるのか分かりにくい場合もあります。
そんなときはCASBEE学校の評価基準を参考に、快適な教室づくりを目指してみましょう。
まず欠かせないのが、健康にも関わる温度・湿度の調整です。
CASBEE学校評価基準の室温制御の項目では「冬期22℃以上、夏期24℃以下の室温を実現するための最低限の設備容量の確保(※新築の場合)」をもって、最高評価(レベル5)と評価されます。また、湿度制御の項目では「空調設備に加湿機能を有している」という条件を満たすとレベル5となります。
生産性と温度、湿度の関係については、以下の記事でも詳しく説明しています。
⇒「生産性をあげるには温度と湿度が重要! 学校での授業をより効果的にするには

効率よく学べる教室づくりには、音環境も重要です。騒音に悩まされるような教室環境では、子どもたちが勉強に集中できないのは当たり前です。また、教室で先生の声が反響し、聞き取りにくいことも学習の妨げになるでしょう。
CASBEE学校では、騒音、遮音、吸音の3つの観点から音環境を評価します。
騒音の対策方法の一つとして、防音サッシ等の設置や教室の向き等の配慮が求められています。敷地周辺の騒音を軽減することで、児童生徒だけでなく職員の健康を保護することが目的です。また隣の教室の声が気になる…といった問題は遮音の配慮が必要です。例えば、間仕切り壁や床材の遮音性能を向上させることで対策が可能です。さらに、教室内の音の反響は壁や天井に吸音材を使用することが推奨されています。

教室の音環境を改善する方法については、以下の記事でもご紹介しています。
⇒「生徒の集中力を高める方法! まずは教室の音環境の見直しを

学習の場で音環境が重要な理由

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そもそも、なぜ教室の音環境に着目しているのでしょうか。これは、今の学習内容に適した教室には、騒音が少なく話しやすい環境が必要だからです。

ここで、新学習指導要領が目指すこれからの子どもに必要な「生きる力」について確認してみましょう。「生きる力」とは、変化の激しい現代社会において必要な学力、人間性、健康・体力の3つの力のことです。
新学習指導要領では、生きる力を育むためのアクティブ・ラーニング(主体的かつ対話的な深い学び)を重視しています。アクティブ・ラーニングではただ先生から知識を学ぶだけでなく、自分から学習内容に関心を持ったり、友達や先生と話し合いながら学習を進めることで「どのように学ぶのか」が重視されます。そのため、主体的・対話的な学びを促進するための環境づくりが重要になります。
また、教科にとらわれず自由に学ぶSTEM教育、STREAM教育もこれからの学習のポイントになってきます。STEMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Math(数学)の頭文字を組み合わせたもので、STREAMはSTEMにArt(芸術)もしくはArts(教養)を加えた概念です。AIが台頭している現代において、枠にとらわれない自由な発想ができるSTEAM教育は文科省も推進している教育法です。

これらの教育については下記の記事でも解説しています。

自主的かつ教科横断的な学習スタイルは、じっくり考え、活発な意見交換や発表のために必要な時間が長くなると考えられます。コミュニケーションを円滑にするためには、声が聞き取りやすく、雑音や反響音を抑えた音環境が必要です。
新しい学びの場に適した防音性能・遮音性能のある建材を取り入れ、「生きる力」を育む教室づくりを目指してみてはいかがでしょうか。

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