
“ドアの隙間”、アンダーカット・ガラリはなぜあるの? 音漏れを防ぐドアリフォームとは
※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
目次
ドアと床の間に、1cmほどの隙間があることにお気づきの方は多いでしょう。これは施工ミスや建て付けが悪いせいではありません。またドア自体に空気の通る穴が開いていることもありますが、これも単なるデザインではありません。こうしたドアの穴や隙間は、私たちが快適に暮らすうえで大切な役割を果たしています。
今回は、ドアの隙間や穴の正体と、そこからの音漏れなどを防ぐ方法についてご紹介します。さらに音漏れに配慮したDAIKENのドアもご紹介します。
ドアの隙間は何のためにあるの?!

ドアは部屋の出入り口であるとともに空間を仕切る役割がありますが、ドアに隙間や穴があると、そこから光や音が漏れてしまいます。いったい何のために、隙間や穴があるのでしょうか。
このドアの隙間にはアンダーカット、穴にはガラリという名前が付いています。それぞれどんな役割があるのかご紹介しましょう。

・アンダーカットとは
アンダーカットとは、ドアの下端を1cm程度カットして、床との間に隙間を開けることをいいます。主に開き戸(ドア)に施工されます。アンダーカットの目的は換気です。
アンダーカットがないと、ドアを閉めたときに部屋が密閉状態になってしまい、健康に悪影響があるだけでなく、カビなどが発生するリスクが高くなってしまいます。ドアを閉めた状態でも部屋の中に常に新鮮な空気を取り込むために、アンダーカットが必要なのです。
・ガラリとは
ガラリとは、ドアや窓などに取り付けられた換気口を指します。ガラリには通常、傾斜した数枚の横板が平行に取り付けられており、この横板をガラリ板、羽根板(羽板)といいます。ドアの下部にガラリが付いているものや、ドア全体がガラリになっているもの(ガラリ戸)などがあります。
ガラリの主な目的も、やはり換気です。ガラリがあるとドアを閉めたままでも、部屋の中を見られることなく換気ができます。風通しがよくなり湿気防止にもなるので、浴室のドアなどにもよく設置されます。
●アンダーカットやガラリと24時間換気システムの関係
アンダーカットやガラリがあるドアは、24時間換気システムの換気経路を確保する役割も担っています。現在はシックハウス症候群を防ぐため、建築基準法ですべての住宅に24時間換気システムの設置が義務づけられていますが、24時間換気システムを設置する際には、換気経路を確保する必要があります。
廊下やトイレ、浴室も居室と一体扱いになる場合は、高さ1cm程度のアンダーカット、もしくは換気ガラリ(有効開口面積100〜150cm²程度)のあるドアを設置しなければなりません。ドアのアンダーカットやガラリは、空気の流れを生み出し、居室の換気をするために必要な隙間なのです。
引き戸や折戸はドアの隙間を作る必要がない?

(※)写真はイメージです。
アンダーカットは開き戸につくられるもので、通常、引き戸や折戸にはつくられません。引き戸や折戸は枠などの密閉性が低く、もともとある程度の隙間があって通気が確保されています。隙間が空気の通り道になるので、アンダーカットやガラリでわざわざ換気をする必要がありません。
もし開き戸のアンダーカットがどうしても気になるなら、引き戸や折戸を選択するのもよいかもしれません。また、高齢者や車椅子を使っているご家族がいる場合、引き戸は開き戸よりも出入口として利用しやすい形状です。引き戸=和室というイメージがあるかもしれませんが、洋室にもマッチする引き戸はたくさんあります。
一方、引き戸にはアンダーカットはないものの、構造上の隙間があるため密閉性は低く、開き戸よりも隙間風が発生しやすい、ニオイが流入・流出しやすい、幼児や高齢者が引き戸の隙間に手を挟んでしまう可能性がある、といった注意点もあります。どこでどのように使うか、用途に合わせて形状を選びましょう。
必要とはいえ気になるドア隙間問題
アンダーカットやガラリはドアの通気性を向上させるのに必要ですが、デメリットもあります。
●音漏れ
多くの音は空気を通して伝わってくるので、ドアに隙間があると音は必ず漏れてしまいます。アンダーカットやガラリから、自分の部屋で電話している話し声や、テレビや音楽の音が別の部屋まで聞こえたり、子どもの泣く声、ペットの吠える声がある程度屋外に漏れ、ご近所に聞こえたりするかもしれません。
●幼児のヒヤリ・ハット! ドアの隙間に足の指を挟むリスク

(※)写真はイメージです。
ドアに隙間があると、子どもの指や衣類が挟まってしまうリスクが高まります。東京都生活文化スポーツ局が過去に調査した「幼児の身の回りのヒヤリ・ハットや危害体験の調査結果」によると、「ドアに挟まれた」という事例は、ヒヤリ・ハット体験の第3位にあげられています。この中には、アンダーカットに足の指を挟まれたという事例も含まれているようです。家に幼い子どもがいる場合は注意が必要です。
●ドアの隙間から冷たい空気が流れ込んでくる
廊下や隣の部屋との温度差がある場合、ガラリやアンダーカットがあると部屋の外の空気が流れ込んできたり、またキッチンのニオイが漂ってきたりするかもしれません。特に寒い季節は、隙間から冷たい空気が入ってくるのが気になる方もいるでしょう。
そのほか、ガラリには汚れや埃が溜まりやすく、放っておくとカビが発生する可能性もあるため、こまめに掃除をする必要があります。換気に必要とはいえ、ガラリやアンダーカットにより、いくつかデメリットもあることを理解しておきましょう。
隙間テープでアンダーカットを埋めてもいい?

(※)写真はイメージです。
ホームセンターや100円ショップなどには、ドアの隙間を埋めるための隙間テープという商品が販売されています。使い方はドアの隙間に貼るだけなので作業も簡単です。このような商品が販売されているということは、ドアなどの隙間を埋めたいという需要がそれなりに高いことを表しているのでしょう。
隙間テープを使うと、光の漏れや隙間風はある程度防ぐことができます。音漏れも、若干なら低減できるかもしれません。ただし、本来の目的である換気が行えなくなり、24時間換気システムの妨げにもなってしまいます。もしどうしても使用したい場合は、部屋ごとに給排気ができる換気システムを設置する必要があります。
ドアリフォームで音漏れを防いで快適な生活を

ドアからの音漏れを防ぐ方法はいくつかありますが、防音に配慮されたドアへのリフォームもおすすめです。DAIKENでは、防音に特化した製品を多数展開しています。
たとえば『ieria(イエリア)音配慮ドア』は、生活音が部屋から漏れるのを抑制してくれる室内ドアです。ドアの三方枠(上と左右枠)には特殊気密パッキンが配されており、ドアを閉じたときの隙間をしっかり埋めてくれます。

またドアを閉じたときには、ドア下に組み込まれた上下調整式のパッキン『エアタイト』が自動的に飛び出し、床とドア下部の隙間を密閉してくれます。

開閉音も消音ラッチで抑えられるので、静かな夜間にドアを開け閉めしても大きな音を立てることはありません。このような機能により、『ieria(イエリア)音配慮ドア』は一般的なリビングドアと比べて、音漏れを約30〜50%抑えることができます(ドアの種類により性能は異なります)。

ただし、ドアの隙間を完全に密閉してしまうと、24時間換気を妨げてしまうので、換気についての対策が必要になります。DAIKENでは換気用のシステムも取り揃えており、たとえばエアスマート居室換気タイプ『DKファンNKミニ』なら、給気と排気が1台で同時に行えるので、アンダーカットやガラリなどの設置が不要です。

『DKファン』シリーズには遮音性能もあるので、音が気になる場合にも有効です。さらに、熱交換型換気扇の働きによって、一般的な換気扇のように室内の温度を逃がすことなく、快適な室温を保つことができます。これにより熱損失が少なくなり、省エネと防音が同時に実現できます。ドアのアンダーカットやガラリからの音漏れ対策としてリフォームを考えている方には、『ieria(イエリア)音配慮ドア』とセットで導入することをおすすめします。
まとめ
今回はドアのアンダーカットやガラリについて紹介してきましたが、ドアの隙間から漏れる音がどうしても気になる方は、防音ドアへのリフォームも検討してみてはいかがでしょうか。もちろん音漏れや隙間風を防ぐと同時に、部屋の換気も忘れずに行いましょう。
なお、ホームシアターや楽器練習室のように、もっと本格的な防音をしたいという方は、下記の記事やカタログもご参照ください。
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監修者
志鎌のり子(しかまのりこ)
一般社団法人日本模様替え協会 理事/COLLINO一級建築士事務所代表。日本女子大学住居学科卒業、五洋建設でマンション・ビルの設計監理/内装デザインを10年担当。その後、日本ERIにて住宅検査など10年担当、設計・検査・審査した住戸数は延べ5,000件以上にのぼる。現在は部屋を「機能による空間分け」「動線」「収納」の観点から模様替えする独自のメソッドにより、機能的な部屋づくり/仕組みづくりなどを提案。書籍「家具配置のルール」のほかSUUMO、AERAwithKids、建築知識ビルダーズ、住まいの設計など著書多数。
保有資格:模様替えアドバイザー 一級建築士 建築基準適合判定資格者 住宅性能評価員 建物耐震診断士 フラット35適合証明検査員 など
公開日:2020.04.06 最終更新日:2025.06.23