サステナブル建築とは?基準や企業に求められる取り組み

社会の環境意識の高まりから、「サステナブル建築」の重要性が高まっています。建物自体だけではなく、周辺環境やライフサイクルコストについても考慮することでより環境保全の効果が高まる点が注目されているのです。
そこで本記事では、サステナブル建築の主な基準や具体的な取り組みについて紹介します。
サステナブル建築が注目される理由と主な基準
ここでは、サステナブル建築が注目されている理由や主な基準について紹介します。「サステナブル建築の定義を知っておきたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
●サステナブル建築とは
サステナブル建築とは、環境や地域に配慮しながら設計・建築された建物のことを指します。建物の設計から施工、運用、廃棄に至るまでのすべての段階で環境負荷を軽減することを目的としています。
そもそも「サステナブル(Sustainable)」とは「持続可能な」という意味です。地球資源やエネルギーの使用を将来にわたって維持できるよう、無駄や環境への影響を抑えることを目指します。建築におけるサステナビリティは、建物のライフサイクル全体でエネルギー効率を高めたり、環境負荷を低減させたりして、資源を循環させることに焦点を当てています。
近年は、気候変動や資源枯渇といった環境問題が深刻化していることから、サステナブル建築への注目が高まっています。地球温暖化による異常気象や海面上昇、自然資源の減少といった課題に取り組むためには、建築を含め持続可能な社会への転換が不可欠とされているのです。
サステナブル建築は、建物のエネルギー消費を抑えながら環境に優しい生活空間を提供します。またそれだけでなく、ソーラーパネルや省エネルギーデザイン(省エネデザイン)を採用することで生活の質を向上させるのも特徴です。
●サステナブル建築を実現するための基準
ここでは、サステナブル建築を実現するための基準について紹介します。一般社団法人日本建設業連合会では、サステナブル建築の実現に向けて3つの視点から基準を設けています。それぞれの基準について理解し、建築計画に活かしましょう。
地球の視点
「地球の視点」では地球の有限性と環境の許容限界に配慮し、環境に優しい開発を進めることを重視しています。建築のライフサイクル全体にわたって、地球環境への負荷軽減を目指しているのが特徴です。地球の視点を持ったサステナブル建築は、気候変動や資源枯渇といった世界的な課題に取り組むために重要であり、持続可能な未来に貢献する考え方として役立ちます。
主な配慮項目 |
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省CO2、節電 |
・化石エネルギー消費が最小となるような設計及び運用 |
再生可能エネルギー |
再生可能エネルギー活用を推進する設計及び運用 |
建物長寿命化 |
長持ちし長く使い続けられる建物の設計及び運用 |
エコマテリアル |
二酸化炭素排出や環境負荷の少ないリサイクル材等の利用を推進 |
ライフサイクル |
設計・施工・運用・改修・廃棄プロセスを通じ、一貫したライフサイクル・マネジメントを可能にする |
グローバル基準 |
グローバルな性能評価基準への適宜対応 |
地域の視点
「地域の視点」では、地域の環境やネットワークに配慮することで持続可能な開発を目指します。建築物がその周辺環境や地域社会と調和し、共生することを重視しているのが特徴です。
具体的には建築物が地域の自然環境や都市ネットワークに順応し、地域社会に利益をもたらすことが目的です。気候風土に応じた省エネルギー設計や自然素材の使用、ソーラーパネルの導入などにより、地域資源の活用やエネルギーの自給を促進します。地域住民や社会と調和しながら自然環境とも共生することで、持続可能な地域社会の発展に貢献します。
主な配慮項目 |
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都市のヒートアイランド抑制 |
外構・屋上・壁面の緑化、保水床、散水・打水など |
生物多様性への配慮 |
既存の動植物に対する生態系ネットワークへの配慮 |
自然・歴史・文化への配慮 |
景観への配慮、歴史や文化への配慮、地域コミュニティへの配慮 |
地域や近隣への環境影響の配慮 |
土壌汚染、大気汚染、水質汚染、交通量配慮、日影、騒音、振動、臭気、廃棄物等への配慮 |
エネルギーネットワーク化 |
CEMS、スマートグリッドなどの地域に最適なエネルギーネットワーク化への配慮 |
地域防災・地域BCP |
・自然災害の防災及びライフライン確保など |
生活の視点
「生活の視点」では従来の「我慢の省エネ」から、「快適かつ省エネ」な生活環境の実現への変革を目指すのが特徴です。建築物の利用者が快適で健康的かつ安全な生活を送れるようにし、生活の質を高めることを重視しています。
建築物の断熱性や自然光を活用するデザインにより、四季を通じて快適な温度を保ちながらエネルギー消費量を抑えます。これにより、室内の温度調節を我慢することなく、快適な省エネルギー生活を実現するのです。環境に優しいだけでなく快適性とエネルギー効率の両立も図り、人々の生活の質向上に寄与します。
主な配慮項目 | |
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安全性 |
・平常時安全性(防犯、事故防止、弱者安全など) |
健康性 |
CO2濃度、化学汚染物質、感染症対策、清浄度、臭いなど |
快適性 |
温熱環境、光環境、音環境など(例:輻射空調) |
利便性 |
エレベーター待ち時間、モジュール、動線、オフィススタンダード、IT環境など |
空間性 |
眺望、広さ、色彩、触感、コミュニティ、緑化、アメニティなど |
更新性 |
可変性、拡張性、冗長性、回遊性、収納性など |
※出典:「サステナブル建築を実現するための設計指針」(一般社団法人日本建設業連合会)
サステナブル建築を実現する取り組みの例
ここでは、サステナブル建築を実現するための取り組みについて取り上げます。建材選びに配慮することで、時代に合った建築を実現しましょう。
●屋上の緑化
屋上緑化とは、建物の屋上に植物を植えて建物の環境性能を向上させる取り組みのことを指します。国土交通省も推進している取り組みで、屋上緑化により日射を遮る効果や断熱効果が得られ、建物内の温度が上がりにくく(下がりにくく)なるのがメリットです。冷房や暖房の使用量が減ることで、省エネルギーを実現します。
また緑化された屋上は周囲の気温上昇を抑える役割を果たし、都市部のヒートアイランド現象の緩和に貢献します。さらに植物がCO2を吸収するため、空気を浄化する効果も期待できます。
※参考:「屋上緑化・壁面緑化推進の取組」(国土交通省)
●地域産材の利用
地域の木材を使用することで森林の計画的な伐採や植林が促進され、持続可能な森林管理が実現できます。これにより森林の循環利用が保たれ、地域の生態系保全にも貢献できるのがメリットです。
また地域産材は輸送距離が短く、輸送にかかるエネルギーやCO2排出量が削減できます。輸入材と比較して輸送コストや環境負荷が軽減されるため、地域産材の利用は気候変動対策にもつながります。
※参考:「地域材の活用を通じたSDGsの推進について」(経済産業省)
●カーボンニュートラルに貢献する建材の利用
カーボンニュートラルとは、活動によって排出されるCO2を吸収・削減することで実質的なCO2排出量をゼロにする取り組みのことを指します。温室効果ガスの削減が求められる中、気候変動を抑制して持続可能な社会を実現するために注目されています。
具体的には、適切に管理された森林から産出された木材を積極的に使用することが推奨されています。木材は成長過程でCO2を吸収するので、建材として利用することでCO2を長期的に固定する役割を果たせるのです。
※参考:「持続可能な木材利用」(林野庁)
サステナブル建築を行うために必要な建材とは
サステナブル建材とは環境負荷に配慮し、持続可能性を考慮して製造・使用される建築材料のことを指します。地球資源の保全やCO2排出削減を目的に、資源の再利用や低エネルギー製造プロセスなどを通じてエコロジカルな建築を支える要素として注目されています。
●サステナブル建材が注目される理由
サステナブル建材が注目される背景としては、社会全体の環境意識の向上が挙げられます。消費者の環境への関心が高まる中で、持続可能な社会の実現を求める声が強まっていることが理由です。これにより、企業も持続可能な建材の使用が求められるようになっています。
さらにSDGs(持続可能な開発目標)への対応として、CO2排出削減や資源の効率的な利用が重要視され、環境負荷の少ない建材のニーズが高まっています。企業にとっても、持続可能な建材を使用することは社会的責任(CSR)の一環と見なされ、環境保護を支える重要な取り組みとして積極的に取り入れられています。環境に配慮した建材は、持続可能な社会を支える基盤として今後も需要が高まっていくでしょう。
●サステナブル建材を取り入れるメリット
サステナブル建材は生産過程や使用時における環境への影響を最小限に抑えるように設計されているため、CO2排出量の削減や自然資源の節約につながります。これにより、持続可能な社会づくりに貢献できるのがメリットです。
またリサイクル可能な建材を使用することで資源の循環利用が可能になり、廃棄物の削減や資源の枯渇防止に役立ちます。さらに化学物質を含まない自然素材を使用することは、人々の健康を守ることにもつながります。木材などの自然素材は化学物質の発生が少なく、シックハウス症候群などのリスクを減らすとされており、より快適で健康的な生活環境の実現に役立ちます。
※参考:「シックハウス症候群・化学物質過敏症について」(熊本市)
サステナブル建築は建材選びがポイントに
サステナブル建築は、環境に配慮しながら持続可能な社会の実現を目指す重要なアプローチです。中でもサステナブル建材の導入は、環境負荷の低減や資源の有効活用、利用者の健康への配慮など、さまざまなメリットをもたらします。建設計画の際には、サステナブルな選択肢をぜひご検討ください。
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