オフィスビルの建築でこだわるポイントは?考え方や建築の実例

オフィスビルの建築には、企業のブランドイメージや利用者の快適さを高めるための工夫が求められます。さらに、現代のビル設計では、働きやすい環境の提供に加え、持続可能性や地域社会との調和といった要素も重視されるようになっています。
本記事では、建築士や設計関係者の皆さんに向けて、オフィスビルの設計においての基本的な考え方や大切なポイントを紹介します。企業の特色を活かし、時代に即したオフィスビルを設計するヒントにしてください。
オフィスビル建築の考え方
オフィスビルを設計する際の考え方には基本があります。まずはオフィスビルとは何なのかを理解し、建築設計時の基本的な考え方を押さえましょう。
●オフィスビルとは
オフィスビルとは、企業が事務所として使用するための建物であり、社員や顧客が集う場所です。オフィスビルの建築設計は、機能性や快適性だけでなく、建物の外観や内装に企業のイメージを反映するよう配慮が必要です。
オフィスビルは大きく「テナントビル」と「自社ビル」に分けられ、それぞれ異なる特徴を持ちます。テナントビルは複数の企業が利用することを前提に、柔軟で汎用性の高い設計が求められる場合が多いです。空間を区画ごとに貸し出すため、内部レイアウトが簡単に変更できる設計が重要になります。また、収益性に配慮してオフィス空間を効率よく利用するため、レンタブル比(※)を高めることも大切です。
※レンタブル比:ビルの延べ床面積に対する賃貸面積の割合
一方、自社ビルは特定の企業、つまり自社オフィスとしての使用を目的に設計され、その企業のブランドや企業文化の表現を求められる傾向があります。自社ビルはその企業のアイデンティティを象徴する役割を持ち、外観デザインや内装、配置レイアウトに個性が求められる場合があります。
●オフィスビル建築の基本の考え方
オフィスビルを建築設計する際の基本的な考え方として、まず法令に基づいた建築が挙げられます。建築基準法や消防法といった法令にのっとり、安全で安心できる環境を提供することが重要です。これにより、利用者が日々の業務を安全かつ快適に行える建物が実現します。
たとえば、オフィスビルは中高層の建築となるケースが多いため、有事の際の避難経路を確保することが重要です。避難経路の距離は建築基準法施行令第120条で定められており、直通階段までの距離が一定以下になるように動線を考慮した平面プランの建築設計が必要になります。会議室を配置するために設置するパーテーションも、消防法施行規則第13条を考慮して、スプリンクラーの散水障害とならないように適切に計画しましょう。
加えて、オフィスビルは将来の用途変更やテナントの入れ替えに対応するための「拡張性」も考慮する必要があります。
ほかにも柱の配置や数を工夫して壁の位置を柔軟に変更できるように設計するなど、長期的な利用が可能な建物にすることが求められます。事前に検討することにより、企業の成長や社会情勢の変化に伴ってレイアウトの変更が必要になった際も、ビルの使い勝手を維持しやすくなるでしょう。
さらに、オフィスビルには明確なコンセプトを持たせることが、建築設計において大きなポイントとなります。建物の外観や内装をコンセプトに基づいてデザインすることで、他のオフィスビルと差別化された価値を生み出せます。コンセプトを策定する際には、建築主の意向やSDGsへの対応といった社会のニーズを参考にするのはもちろん、同業他社の事例や最新のデザイン・技術を取り入れることも重要です。これにより、企業や社会が求めるデザインや機能が反映された、魅力的で利用者に支持されるオフィスビルを設計することが可能になります。
※参考:
「建築基準法施行令第百二十条」(e-Gov 法令検索)
「【建築基準法施行令第120条第1項】採光無窓居室から直通階段までの歩行距離制限の合理化」(国土交通省)
「消防法施行規則第十三条」(e-Gov 法令検索)
オフィスビルの建築でこだわるポイント
オフィスビルの建築で設計時にこだわるべきポイントとして、ここではエントランスのデザイン性、利用者の快適さを高める設備、セキュリティの3つを取り上げます。
●エントランスのデザイン性を高める
オフィスビルにおけるエントランスは、建物全体の「顔」としての役割を果たします。エントランスのデザインが与える印象は大きく、入居する企業のブランディングに貢献するだけでなく、訪れる人や働く人の満足度にも直結します。そのため、エントランスにおいては「デザイン性」と「機能性」を両立させる工夫が必要です。
たとえば、壁に木質感のあるDAIKENの『グラビオUB』を建材として取り入れることで、温かみや居心地の良さを感じさせる空間を演出できます。室内の天井材に『グラビオ羽目板V/グラビオ羽目板R』を採用したり、室外の軒天井材に木目シート貼りの『ダイライト軒天』を使用したりするのも、木の風合いによりエントランスが魅力的になるでしょう。
また、天井を高くすると開放感が生まれ、広々とした印象を与えることが可能です。天井にルーバーを取り入れるのも、空間に高級感を与える一要素になるでしょう。このようなデザインにより、訪問者や社員に好印象を与え、ビル全体の価値を高めることが期待できます。
●働く人の快適さを高める設備を取り入れる
オフィスビル内で働く人の快適性に配慮した設備を整えることも大切です。近年、働き方改革の一環でオフィスの環境は重要視されています。ここでは、共用部や休憩スペース、トイレを例に挙げ、設計時にこだわりたいポイントを掘り下げていきます。
●共用部
共用部の廊下やラウンジスペースには防音効果のある建材を使用することで、廊下や他の共用部で発生した音が執務スペースに届かないよう配慮ができます。
たとえばDAIKENの『コミュニケーションタフ 防音ⅡDW4/FW4』のような土足対応の防音フローリングを使用すると、靴で歩いた時の軽量床衝撃音が軽減され、静かで集中しやすい環境が確保されることで業務効率の向上が期待できます。また天井材に『ダイロートン』を使用すれば、残響音を吸収することでコミュニケーションしやすい空間の実現につながるでしょう。
●休憩スペース
休憩やリフレッシュのためのカフェテリアやラウンジスペースの設置も、働く人の満足度を高める重要なポイントです。こうした空間があることで、同僚や他部署の人々とコミュニケーションを取りやすくなり、組織全体のパフォーマンスも向上するでしょう。
そういった空間の天井に吸音パネルの『KIN TONE』を使用すれば、遊び心を取り入れながらも音の反響を抑え、よりコミュニケーションしやすい場所になります。
●トイレ
社員が利用するトイレにおいては、プライバシー性を確保し落ち着ける空間を提供することが重要です。出入口の動線をL字にしてトイレ外からの視線をカットしたり、流水音が流れる設備を導入して個室外への音漏れを防いだりすることが例として挙げられます。
また、壁や床に掃除がしやすく抗菌性のある建材を利用することで、衛生的な環境を維持しやすくなり、利用者にとっての快適性につながります。DAIKENの『グラビオLB』は水や汚れに強く抗菌性の備わった壁材で、デザイン性も優れておりトイレ空間にもおすすめの建材です。

トイレは一見目立たない要素ですが、利用者にとっては非常に大切な空間であり、快適で清潔な環境を提供することで、ビル全体の評価も上がるでしょう。
●オフィスビル全体のセキュリティ性を高める
現代のオフィスビルでは、セキュリティ性の高さも重要視される要素の一つです。情報漏洩の防止や働く人々の安全性を確保するため、セキュリティ体制の充実が求められます。
たとえば、エントランスにセキュリティゲートを設けることで、不審者の侵入を防ぎ、入館する人をモニタリングできるようになります。また、入館証や社員証と連動して、止まる階を制限できるエレベーターシステムを採用することで、セキュリティレベルをさらに高められます。
これらのセキュリティ対策を講じることで、企業は大切な情報を守りつつ働く人々に安心できる環境を提供でき、信頼性の高いオフィスビルとして評価されるでしょう。
オフィスビルの建築の実例
ここでは、DAIKENの建材が採用されたオフィスビルの実例を3つ紹介します。
●株式会社フェリシモ新本社ビル「Stage Felissimo」/兵庫県

 

採用された建材:コミュニケーションタフ 防音FW3

 

採用された建材:システム天井 クロスシリーズ グリッドタイプ,ダイロートン メタリック
●株式会社AQ Group本社屋/埼玉県

 

採用された建材:グラビオUS
※設計・施工業者様の発案・工夫により、施工されています。
社員の働きやすさにこだわったオフィスビル建築を
オフィスビルの建築においては、企業のブランドイメージや利用者の快適性を意識した設計が重要なポイントとなります。そのため建築士には、働く人々の快適さや働きやすさ、そして環境配慮やセキュリティ対策まで、幅広い観点に注意しながら設計をすることが求められます。
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