人間の尊厳とは? 尊厳の保持と自立支援につながる施設環境づくり

尊厳

人間の尊厳と自立支援は密接な関係にあります。そのため、介護職において利用者の尊厳の保持は最も大切にすべき考え方といえます。特に自立支援を基本とする日本の介護現場における人間の尊厳とその保持は重要な概念です。
本記事では、人間の尊厳と自立支援の関係性、自立支援につながる施設環境づくりについてご紹介します。

介護において忘れてはならない人間の尊厳とは

介護において重要視されるのは、利用者の人間としての尊厳です。しかし、人間の尊厳と聞いても抽象的でわかりにくいと感じるかもしれません。

●人間の尊厳とは

人間の尊厳は、個人が生きている存在として生命・生活が尊重される価値のあるものです。すべての人が持つ「人として生きる権利」ともいえます。

日本憲法の第13条では「すべて国民は、個人として尊重される。」と、個人の尊厳に対する最大の尊重が必要であることが規定されています。日本の最高法規で権利が守られることからもわかるように、その人らしい生き方や生活をするための最も基本的で侵し難い権利なのです。

●利用者の尊厳を保持することは介護職にとって、最も重要な基本概念

尊厳

個人の尊厳が最も基本的な権利であるということは、介護職にとって利用者の尊厳を保持することも重要な基本概念であることを示しています。

その証拠に介護保険法の第1条でも「尊厳の保持」について明記されています。具体的には、以下のような利用者の尊厳・プライドを守る姿勢が重要となります。

・利用者に対して高圧的な態度をとらない
・利用者のプライバシーを守る
・一般成人に対する適切な接遇をする
・利用者の私物に同意を得ずに触れない
・身体的・経済的・精神的に苦痛を与える行為をしない

なぜ、利用者の尊厳を保持することが重要なのか

そもそも、なぜ利用者の尊厳を保持することが重要なのかといえば、人間の尊厳と自立が強く結びついているためです。例えば介護職員がいきなり居室に入ってきて、部屋の中にある私物に触ってしまう状態は、利用者が自立した生活を送っているといえないでしょう。

利用者の尊厳に関してさらなる理解を深めるために、ここでは利用者の自立について考えていきます。

●利用者の自立支援とは?

自立とは、支援の有無に関わらず、自分の生活を自らの意思で選択・決定することです。

つまり利用者の自立支援とは、その人らしいライフスタイルを実現するために、自己選択や自己決定ができるような支援です。具体的には要介護状態であっても社会参加を促すことや、重度の要介護度でもその人らしく暮らせるように配慮することが挙げられます。

例えば、音楽療法などの趣味や娯楽を取り入れたアクティビティやレクリエーションも考えられます。下記の記事では音楽療法について詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
⇒「音楽療法とは? 音楽の持つ力を活用したリハビリテーションのやり方と必要な設備

このように、利用者の自立支援では人間の尊厳を保持することが重要になります。なぜなら、利用者の尊厳を保持できている状態が基盤となり、その上に自立した暮らしがあるためです。

自立支援と利用者の尊厳を保持することは、ともにあるべきものといえます。

尊厳に関する記事については、下記でご紹介していますので、こちらもご確認ください。
認知症ケアで注目のユマニチュードとは? 人の尊厳を守るコミュニケーション方法と環境整備

施設に生活の自立を支援する環境づくりを

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介護が必要な人にとっての自立には2つの側面があります。

・心理的な自立:自らの意思で物事を決める自己決定のこと
・生活の自立:福祉用具や設備によって改善された環境で日常生活を送ること

つまり、利用者が主体的にニーズを表明して自ら介護サービスを選択し、より良く暮らせる状態に導くのが自立支援のあり方といえます。

また、利用者の自立した生活を支援するにはADL(日常生活動作)のサポートが欠かせません。ADLは介護職によるケアだけでなく、介護施設の環境づくりでもサポートすることができます。介護施設の環境は利用者の「生活の自立」に直接影響するため、介護施設の設計にあたってはADLサポートの視点が不可欠です。
ADL とはどのようなものか、ADL と自立支援やQOL(生活の質)の関係についてはこちらの記事で詳しく説明しています。参考にしてください。
⇒「ADLとQOLの違いを知り、自立支援を! 介護スタッフと高齢者施設に求められるものは?

●自立歩行のサポートには、断続的な手摺の設置が有効

施設内では窓や扉などの開口部で手摺が途切れてしまうと、利用者が自ら移動したいという自己決定を実現できなくなります。そのため、尊厳の保持・自立支援では開口部などでも手摺を途切れることなく設置するのがポイントです。

他にも「握りやすい太さか」「居室内に必要な場所があるか」など、素材や太さ、設置場所などの観点からも工夫できることがあります。利用者の、その人らしい暮らしを実現するために、手摺に注目した環境づくりを実践してみましょう。

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