保育園・認定こども園の内装設計における建材選定のポイント

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
目次
保育園や認定こども園の整備は、待機児童問題や保育ニーズの高まりを背景に、近年も着実に拡大しています。既存の幼稚園を「認定こども園」へ転換する事例も増加しており、設計現場では乳幼児の安全性と教育環境の質を両立する、より高度な空間設計が求められています。
本記事では、保育施設における内装設計について、現行の法規制と実務上の設計ポイントの双方から解説します。 なお、最終的な仕様決定や法適合の判断については、必ず設計者自身の責任のもと、所轄行政庁や指定確認検査機関との協議を行いながら進めてください。
参考:「認定こども園に関する状況について(令和7年4月1日現在)」(こども家庭庁)
保育園・認定こども園の設計に関わる内装制限
ここでは、保育園・認定こども園の内装設計を進めるうえで理解しておくべき法規制を整理します。関連する法令は複数にわたるため、設計の初期段階で全体像を把握しましょう。
●建築基準法における「保育園・認定こども園」の位置づけは?
保育園(保育所)および認定こども園は、建築基準法上の「児童福祉施設等」に該当します。これらの施設は、火災や災害時に自力での避難が困難な乳幼児が在園することから、高い防火・避難安全性が求められる「特殊建築物」として区分されています。
特殊建築物に該当する場合、火災発生時に安全な避難経路を確保するため、内装制限が適用されます。使用できる内装材の燃焼性能が制限され、設計段階でのスペック確認が欠かせません。
また、建築基準法のみならず、消防法による設備・構造上の要件、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」に基づく部屋の面積や配置に関する規定、そして「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」への適合も求められます。
●保育園・認定こども園の設計で考慮すべき内装制限
内装制限の主な目的は、火災時における炎の急激な燃え広がりを抑制し、避難の妨げとなる煙や有毒ガスの発生を最小限に抑えることにあります。避難が困難な乳幼児が多く在籍する保育施設においては、内装材の性能が避難の安全性に直結するため、仕様検討に注意が必要です。
壁・天井に使用する内装材は、居室の場合「難燃材料」以上の性能が必要であり、さらに3階以上の居室に設ける天井については「準不燃材料」以上が要求されます。廊下や階段などの避難経路にあたる部分では、壁・天井ともにより厳しい「準不燃材料」以上の性能が必要です。
建築基準法における内装制限とは?対象となる建築物や緩和の要件
参考:「建築基準法第三十五条の二」(e-Gov 法令検索)
●自治体ごとに異なる「独自の設置基準」への配慮
国が定める最低基準に加え、各自治体(都道府県・市区町村)が条例や指導要綱によって、内装仕上げに関する独自の基準を設けている場合があります。
自治体独自の基準は、国の法令とは別に運用されているため、設計者自身で情報収集が必要です。基本設計の段階から自治体の担当部局と事前協議の場を設け、仕様の方向性を早期にすり合わせておくことが、設計の手戻りや施工段階での不整合を防ぐために重要です。
特に認定こども園は教育・保育の両機能を持つため、所管窓口が複数になるケースもあります。関係部局を事前に整理しておくと、協議がスムーズに進みます。
保育園・認定こども園の内装設計で配慮すべきポイント
法規制への適合と並行して取り組みたいのが、使用者の安全・衛生・快適性に直結する設計上の配慮事項です。ここでは、実務で重要度の高い点を項目別に解説します。
●怪我のリスクに備える
保育施設の設計で最優先すべき課題の一つが、園児の怪我リスクを低減するための安全設計です。乳幼児は身体的な発達途上にあり、転倒や衝突による骨折・頭部外傷といった重大事故が起こりやすい状態にあります。そのため、日常的な動作の中に潜むリスクを丁寧に取り除いていく視点が、設計者には求められます。
例えば床材の選定においては、転倒時の衝撃を和らげる弾力性を備えた素材を採用することが有効です。弾力性の高い素材は、万一の転倒時に骨折や頭部への衝撃を軽減するうえで重要な役割を果たします。
壁の出隅処理も見落とせないポイントです。鋭角な出隅は子どもが走り回る際の衝突リスクが高いため、「面取り」加工や専用のコーナーガードの設置を検討し、衝突時のダメージを減らせる素材や形状を選ぶようにしましょう。
ドアの安全性も重要な検討事項です。ドアへの指挟み事故は保育施設における典型的な怪我の一つとして知られています。指挟み防止機能を備えたドアの採用が推奨されており、中でも軽い力で開閉できる引戸タイプは特に安全性が高く、子どもが自ら操作する場面にも適しています。
DAIKENの『OMOIYARIキッズドア 吊戸』は、こうした保育施設の安全ニーズに応えた製品の一例です。指挟みへの配慮がなされた設計となっており、子どもが日常的に使用する室内ドアとしておすすめです。
●衛生維持とメンテナンス性で運営を効率化する
保育施設では、多くの子どもが集団で長時間過ごす環境の特性上、感染症の拡大防止を念頭に置いた内装設計が不可欠です。
園児の手が触れやすい壁面や手すり、足が直接触れる床面には、抗菌・抗ウイルス機能を持つ素材の採用が有効です。接触感染のリスクを設計の段階から低減できる点は、施設の衛生管理水準を高めるうえで大きな意義を持ちます。
運営者や職員の目線に立ったメンテナンス性の確保も重要です。保育施設では食事や遊びなどの活動に伴い、壁や床が汚れやすい環境にあります。感染症対策として消毒液を使用した清掃が日常的に行われるため、薬品への耐性が低い素材では劣化が早まり、定期的な修繕コストの増加につながります。
建材選定の段階で「清掃しやすさ」「耐久性」「意匠性」を総合的に評価する視点を持つことが、実務的な負担の軽減に有効です。
●室内環境の質を高め心身ともに健やかな空間を作る
乳幼児が長時間生活する保育施設では、化学物質による空気汚染への対策が設計の基本として求められます。内装材に含まれるホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因物質として知られており、特に乳幼児への影響が懸念されます。建材の選定にあたっては、ホルムアルデヒド放散量区分の最上位規格である「F☆☆☆☆(エフフォースター)」を取得した製品を採用し、適切な換気計画を行うことが、設計上の基本的な対応となります。
清潔な空気の確保と並んで重要なのが、音環境への配慮です。保育施設では子どもたちの活動音や声が絶えず発生するため、高い反響音は職員の精神的疲労を招くとともに、子ども自身の集中力や情緒にも影響を与える可能性があります。天井や壁に吸音材や吸音パネルを適切に配置して室内の残響を抑えることで、騒音ストレスの軽減が期待できます。
吸音性能を持つ内装建材として、DAIKENの『KIN TONE(キントーン)』は、吸音機能と意匠性を両立した製品としておすすめです。保育の質の向上と職員の労働環境改善の双方に寄与できる素材として、天井や壁面への採用を検討してみてください。
●職員や園児にとって効率的、安全な動線を設計する
保育施設における動線設計は、安全性や業務効率、感染症対策のいずれにも直結する重要な設計課題です。職員と園児、それぞれの視点から動線を丁寧に計画することが、使いやすく安全な施設の実現につながります。
職員の視点では、保育室や調理室、事務スペース、トイレ介助エリアが機能的に連結された動線計画が求められます。特に乳児室と調理室の衛生的な分離、および保育士が複数の保育室を横断的に見守れるような視認性の確保は、安全管理と業務効率化の両面から重視すべきポイントです。また、来訪者動線と保育エリアの動線を明確に分離することで、不審者対策や感染症対策にも配慮した計画が実現できます。
子ども目線では、活動エリアや食事エリア、睡眠エリアが明確に区分され、子ども自身が混乱なく行動できる空間構成が理想的です。例えば、床素材の切り替えや色の変化によって、ゾーンの違いを直感的に伝える工夫が有効です。トイレが保育室から近く、かつ職員が目視確認しやすい位置関係にあることも、乳幼児の事故防止と業務負担軽減の観点から重要です。ほふく室と遊戯室の動線が交錯すると怪我につながるため注意してゾーニングしましょう。
-
<保育園の改修における注意点>
既存施設の改修においては、新築とは異なる設計上の制約と手続き上の留意点があります。
用途変更や大規模の修繕、模様替えに該当する工事では、改めて現行の建築基準法や消防法等への適合確認が必要です。既存不適格建築物である場合は、どの範囲まで現行法規への適合が求められるかを所轄機関と事前に協議しましょう。
既存の内装材や下地材に含まれるアスベスト、ホルムアルデヒド等の有害物質の調査も、改修前に実施しなければなりません。特にアスベストについては、解体・撤去工事の際に飛散リスクが生じることから、専門機関による事前調査と適切な処理計画の立案が義務付けられています。
保育園・認定こども園の内装デザインのポイント3選
法適合と機能的な安全性を確保した上で、空間の質をさらに高めるのが内装デザインの役割です。ここでは、保育施設の内装デザインにおいて意識したい3つの視点を紹介します。
●家庭の延長を感じさせる温かみのある空間を作る
保育施設は、子どもが家庭を離れて初めて長時間を過ごす場所です。そのため、施設であることを感じさせすぎない「家庭の延長」としての温かみを空間に持たせることが、子どもが安心して過ごす上での設計指針となります。
建材の選定では、木目調の仕上材や暖色系の色調を積極的に取り入れることで、冷たい印象を与えにくい、居心地の良い雰囲気を演出できます。また、床や壁、建具の素材感に統一性を持たせることで、視覚的なまとまりが生まれ、落ち着きのある空間構成が実現します。
子どもが素足で過ごすことの多い床面には、自然素材の質感を持つ建材の採用が効果的です。触れたときの感触や温度、表情といった感覚的な要素は、子どもの五感の発育をサポートしてくれるでしょう。
木のぬくもりを感じられる建材として、DAIKENの『デザインタフジオラ』は、意匠性と耐久性を兼ね備えた土足対応のフローリングとして、保育施設にもおすすめの床材です。傷が付きにくく、保育環境に求められるメンテナンス性も確保されているため、実務での選択肢として検討してみてください。
●成長や活動に合わせて可変性を持たせる
保育施設では、園児の年齢や人数、活動内容によって求められる空間の使い方が日々変化します。固定的な間取りでは、こうした変化に柔軟に対応しにくくなるため、空間の可変性を設計段階から考慮しておくことが重要です。可動間仕切りや収納家具を活用した空間分割の計画は、その代表的な手法の一つです。
同時に、子どもの目線に立ったスケールデザインも見落とせない視点です。窓の取り付け高さやドアハンドルの位置、サイン計画など、子どもが自ら操作・認識がしやすい高さやサイズに設定することで、子どもが空間の主役として自律的に行動できる環境が整います。「子どもにとって使いやすい空間」を具体的な寸法として落とし込む作業が、設計者の腕の見せどころといえます。
●色の持つ力を活用して子どもの気持ちを切り替える
色彩は視覚的な印象を形成するだけでなく、人の気分や行動に影響を与えることが知られています。保育施設においては、活動の種類やゾーンごとに適切な色彩計画を施すことで、子どもが気持ちを切り替えながら生活しやすい環境をサポートできます。
遊戯室のような遊びの場には、鮮やかな色調を取り入れることで、子どもの活動意欲や好奇心を引き出す効果が期待できます。一方、お昼寝スペースや落ち着いて過ごしたいエリアには、穏やかなトーンを用いることで、自然な気持ちの切り替えを手助けします。
アクセントカラーは視認性を高める機能的な役割も担います。段差やスロープ、トイレの入口など、注意が必要な場所や子どもに認識してほしい場所に、周囲と対比するカラーを取り入れることで、事故防止や自主的な行動の促進につながります。
色彩計画を単なる意匠上の選択としてではなく、安全設計や子どもの発育をサポートする要素の一つとして位置づける視点が、保育施設ならではの設計アプローチといえるでしょう。
保育園の内装実例
設計の方向性を検討する際、施工事例を確認することが大きな助けになります。ここでは、保育園・認定こども園における内装設計の参考として、実際の施設事例を紹介します。
色彩計画を単なる意匠上の選択としてではなく、安全設計や子どもの発育をサポートする要素の一つとして位置づける視点が、保育施設ならではの設計アプローチといえるでしょう。
※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。
●社会福祉法人 下妻福祉会 下妻保育園/茨城県

【採用製品】
室内ドア:おもいやりキッズドア(特注品)<ミルベージュ柄> 
「社会福祉法人 下妻福祉会 下妻保育園」の施工事例を確認する
●アートチャイルドケア岡山早島保育園/岡山県

【採用製品】
インテリア畳:ここち和座 置き敷きタイプ 清流〈14 灰桜色〉
 
【採用製品】
天井材:クリアトーン12SⅡラインアート〈401〉 
●極楽坊あすかこども園/奈良県

【採用製品】
床材:コミュニケーションタフⅡ DW〈オーク(クリア色)〉
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン 直張ベベル600 
●津志田こども園/岩手県

【採用製品】
室内ドア:おもいやりキッズドア(特注品)<ミルベージュ柄>
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン スクールトーン ワイド直貼9mm
 

【採用製品】
畳おもて:ダイケン健やかおもて 清流〈01 銀白色〉
 

【採用製品】
天井用吸音パネル:KIN TONE(キントーン) スクエア〈イエロー色〉〈レッド色〉〈グリーン色〉
天井用吸音パネル:KIN TONE(キントーン) サークル〈イエロー色〉〈レッド色〉〈ブルー色〉
天井材:ロックウール化粧吸音板 ダイロートン スクールトーン ワイド直貼9mm 
保育施設の内装設計は「安全・法規・環境」の統合が重要
保育園や認定こども園の内装設計では、法規への適合を前提に、安全性や衛生性、快適性、運営のしやすさをバランス良く満たすことが重要です。自治体基準や既存施設の条件によっても検討事項が変わるため、初期段階から所轄行政庁や関係機関と協議しながら進めましょう。
建材選定に悩んだ際は、保育施設の設計に役立つ以下のカタログを確認してみてください。
お役立ちカタログ「2025-26幼稚園・保育園・認定こども園用製品カタログ」を資料請求する
また建築士や設計関係者向けの会員制情報サイト『D-TAIL』では、施設設計や建材選びに役立つさまざまな情報を掲載しています。会員登録の上、日々の業務にお役立てください。
おすすめ製品
















