葬祭場建築の設計ポイントと注意点、時代に求められる葬祭施設とは
※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
葬祭場の設計は、人生の最期を見送る場として、高い機能性と静穏性が求められるだけでなく、多様化する葬儀スタイルや高齢化社会への対応も必要となります。また近年は、家族葬や一日葬の普及により、小規模で柔軟に利用できる施設へのニーズが高まっています。
この記事では、葬儀業界の現状を踏まえながら、葬祭場建築に求められる設計のポイントや法規上の注意点を解説します。併せて、近年の施設計画で重視される考え方や、設計上の工夫についても紹介します。
葬儀業界の現状は?
高齢化の進行に伴い、葬儀需要は今後も増加すると予測されます。また、葬儀の規模や形式は時代によって変化しており、設計者は求められる葬儀スタイルに合わせた計画が必要です。
●葬儀業界の市場は拡大傾向にある
日本では、高齢化の進展に伴い、葬儀市場は今後も一定期間にわたって拡大すると見込まれています。内閣府の「高齢社会白書」によると、年間死亡者数は2040年頃まで増加傾向が続くとされており、65歳以上人口の増加がその背景にあります。
東京商工リサーチの調査では、葬儀業主要505社の売上高は2022年度が3,580億円、2023年度は3,870億円と前年度比8.1%増、2024年度には4,051億円と前年度比4.6%増となっており、堅実な成長が確認されています。
参考:
「
令和7年版 高齢社会白書
」(内閣府)
『「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠』(東京商工リサーチ)(2025年9月16日)
●事業者数が増加している
葬儀市場の拡大に合わせて、葬儀事業へ参入する事業者も増えています。前述の東京商工リサーチの調査によると 、近年は新設法人数が休廃業や解散、倒産した数を上回る状況が続いており、全国的に総会館数も増加傾向にあります。
こうした状況から、葬祭場においては新築だけでなく、既存施設の改修が増える可能性があります。競争が激しくなるほど、施設そのものの快適性や利便性が利用者の評価につながるため、建築計画の重要性は一層高まっていると言えるでしょう。
●葬儀スタイルが多様化している
葬儀の形式は、従来の一般葬を中心とした構成から、家族葬や一日葬、直葬など、小規模かつ短時間で執り行うスタイルへと多様化しています。
こうした変化に伴い、大規模式場を一室設ける計画ではなく、規模の異なる複数の式場を備え、利用人数に応じて柔軟に運用できる施設へのニーズが高まっています。
葬祭場における設計のポイント
利用者の安心感と運営効率を両立するためには、葬祭場特有の利用形態を踏まえた設計が重要です。いくつかあるポイントから、動線、レイアウト、バリアフリー対応について紹介します。
●スムーズな動線計画
葬祭場では、一般参列者、遺族、遺体搬送の3つの動線を明確に分離したゾーニングが基本となります。それぞれの動線が交差すると、プライバシーの確保や施設運営に支障をきたす可能性があるため、計画初期から十分な検討が必要です。
一般参列者の動線は、駐車場からエントランス、受付、式場、出棺まで迷わず移動できる構成が望まれます。複数の式場を備える施設では、異なる葬家の参列者同士ができるだけ顔を合わせないよう、専用の待合スペースや出入口を設ける計画も有効です。
一方で、遺族は控室と式場を行き来しやすく、一般参列者と過度に交錯しない配置とすることで、落ち着いた環境を確保できます。
遺体搬送の動線はバックヤード側に集約し、搬送車両の進入経路やサービスヤードとのつながりも考慮する必要があります。さらに、棺の搬出入を行う開口部は、十分な有効幅と高さを確保し、搬送経路上のすべての廊下、扉にて有効寸法の確保が必要です。棺を手で持ち運ぶ場合や、搬入経路が狭いケースでは、幅220cm以上必要となる場合もあるため、寸法に関しては搬出入方法を確認したうえで設定しましょう。
軌跡図を描いて寸法を確認すると、既製品では対応できない場合も多く、特注建材や大型引戸を採用するケースも少なくありません。運営面まで見据えた動線計画が、葬祭場設計の品質を左右します。
●控室・待合スペースの充実
近年は家族葬の増加に伴い、遺族が施設内で長時間過ごすケースが増えています。そのため、控室や待合スペースは単なる待機場所ではなく、心身を落ち着かせる居住性の高い空間として計画することが重要です。
控室は式場との適度な距離感を保ちながら、必要に応じてすぐ移動できる配置が望まれます。また、食事や休憩、親族同士の打ち合わせなど、多様な利用場面を想定した広さや設備を確保することも必要です。
●バリアフリーへの対応
葬祭場は、高齢者や車いす利用者が多く来場する施設であるため、一般的なバリアフリー基準を満たすだけではなく、施設の利用実態に合わせた設計が求められます。
エントランスから式場、控室、待合スペース、トイレまで段差のない動線を確保し、スロープやエレベーターを適切に配置することが基本です。車いす同士がすれ違える通路幅や、介助者が付き添いやすいスペースを確保することも重要になります。
葬祭場を建築する際の注意点
葬祭場の建築にあたっては、法規制や周辺環境への影響を踏まえ、計画初期から慎重に設計を進めることが重要です。ここでは、葬祭場建築における注意点を解説します。
●葬祭場建築に適用される法律の基本的な考え方
葬祭場の建築では、建築基準法や都市計画法をはじめとする法令を十分に確認したうえで計画を進める必要があります。
建築基準法において、火葬設備を備えない葬祭場は、特殊建築物「集会場」として取り扱われるケースが見られます。礼拝堂や墓地とは用途地域による規制が異なるため注意が必要です。一方、火葬設備を有する施設は、特殊建築物の中でも「火葬場」に該当するため、より厳格な規制の対象となります。
また、「集会場」の解釈や用途区分の判断は、自治体や特定行政庁によって運用が異なる場合があります。同じ施設計画であっても、地域ごとに必要な手続きや審査内容が変わる可能性があるため、基本計画の段階で行政窓口へ事前相談を行い、計画条件を確認することが重要です。
●用途地域による葬祭場の建設可否と面積制限
| 用途地域 | 葬祭場(集会場)の扱い |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 建設不可 |
| 第二種低層住居専用地域 | 建設不可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 建設不可 |
| 田園住居地域 | 建設不可 |
| 工業専用地域 | 建設不可 |
| 第二種中高層住居専用地域 | 2階以下かつ延床面積1,500㎡以内であれば建設可 |
| 上記以外の用途地域 | 原則建設可 |
葬祭場の建設可否は、用途地域によって大きく左右されます。ただし、建築基準法 別表第二には「集会場」が明確に規定されているわけではなく、葬祭場をどの用途として扱うかは自治体の運用によって判断されるケースがあります。
そのため、計画地の用途地域により建築可能と考えられる場合であっても、行政との協議によって追加の条件が求められることがあります。反対に、原則として建築が難しい用途地域でも、建築基準法第48条に基づく特定行政庁の許可を受けることで建築できるケースもあります。
一方、火葬設備を備える火葬場は特殊建築物として扱われるため、都市計画上の位置付けがより厳格になります。周辺環境への影響も考慮されるため、都市計画や環境関連法令、自治体の整備方針など、多角的な確認が必要です。
法令だけでなく自治体独自の条例やまちづくり協定、景観条例、住民協定などが建設条件となる可能性もあります。用途地域だけで判断せず、行政との協議を通じて地域固有のルールまで確認することが重要です。
参考:
「建築基準法 第四十八条」(e-gov法令検索)
「建築基準法 別表第二」(e-gov法令検索)
「用途地域による建築物の用途制限の概要
」(東京都都市整備局)
●近隣住民への配慮と設計上の工夫
葬祭場は地域に密着した施設ですが、周辺住民の心理的な抵抗感や生活環境への影響が懸念されることもあります。そのため、建物単体の設計だけではなく、周辺環境との調和を意識した計画が重要です。
臭気対策では、線香の煙や香りが屋外へ漏れにくいよう、専用換気系統や高性能フィルターの採用を検討します。
また、読経や参列者の会話が外部へ伝わらないよう、防音性能の高い壁やサッシを採用することで、周辺環境への影響を低減できます。
駐車場は、幹線道路から直接アクセスしやすい位置に配置し、大型マイクロバスや一般車両が生活道路へ流入しない計画が望まれます。搬出入口は近隣住民の日常動線と重ならない位置に配置し、出棺時の様子が道路から見えにくいよう、塀や植栽などを活用した外構計画も有効です。
外観についても、周辺の街並みに調和するデザインや明るい色調を採用する事例が増えています。
加えて、計画初期から自治体や近隣住民へ十分な説明を行い、施設の運営方針や環境対策を共有することも、円滑に建築を進めるための重要な取り組みです。
DAIKENの葬祭場の施工事例
ここでは、DAIKEN製品を採用した葬祭場の施工事例を紹介します。
※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。
●岡山市岡山北斎場/岡山県
【採用製品】
床材:コミュニケーションタフ DW(地域産材対応突板)〈岡山県産杉〉(特注色)
天井・壁(木質部)産業用基材:ダイライト
FAL
【採用製品】
音響製品:オトテン(モダン)アコースティックブロック
壁(木質部)産業用基材:ダイライト
FAL
床材:コミュニケーションタフ DW(地域産材対応突板)〈岡山県産杉〉(特注色)
【採用製品】
畳おもて:ダイケン健やかおもて 清流〈01 銀白色〉
●公立中部上北斎場/青森県
【採用製品】
不燃壁材:グラビオUS〈青森県産杉〉
※グラビオUSの天井面への施工は、施工条件の確認・同意が必要です。
【採用製品】
床材:コミュニケーションタフ FW〈ハードメープル〉
●茨城県古河市斎場/茨城県
●五城目斎場/秋田県
葬祭場の設計ポイントを押さえて質の高い施設計画を実現しよう
葬祭場は、亡くなった方と遺族、知人が最期の時間を過ごす施設であり、利用者への配慮と運営効率の両立が必要です。高齢化の進行や葬儀スタイルの多様化によって、施設に求められる機能は変化しており、柔軟性のある施設計画が求められています。
また、動線計画やバリアフリーへの対応に加え、建築基準法や都市計画法などの法規制、近隣住民への配慮まで含めて総合的に検討することが、計画を円滑に進めるための重要なポイントです。
建材選定は、空間の印象だけでなく、耐久性やメンテナンス性、快適性にも大きく影響します。施設用途に適した製品や施工事例を参考にしながら、設計条件に応じた建材を選定しましょう。
DAIKENでは、葬祭場に求められる大開口ドアに対応する『OMOIYARIドア 吊戸・4枚引分』を取り扱っています。指挟みに配慮した設計となっているため、開閉時の安全性にも優れています。抗菌・抗ウイルス仕様で耐薬品性も備えているため、清潔さが求められる葬祭場へも安心して採用いただけます。
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