車椅子の利用者に適したドアとは?必要な配慮や性能【施工事例付き】

車いすとドア

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

病院や介護施設の設計において、車椅子利用者に適したドアを採用することは、バリアフリー空間の実現につながります。しかし、どのようなドアを採用すべきか、出入口の寸法をどの程度確保するかに悩んでいる建築士や設計者も多いのではないでしょうか。

本記事では車椅子利用者に配慮したドアの具体的な寸法や種類、おすすめの建材について解説します。本記事を参考にしながら、多くの方にとって使い勝手の良い、安全な空間を実現しましょう。

病院や介護施設で車椅子利用者に必要な配慮

ここでは、病院や介護施設において、車椅子利用者に必要な設計時の配慮について解説します。安全性や利便性を高めることで、バリアフリーな空間をつくりましょう。

●移動のしやすさ

車椅子での移動をスムーズに行うためには、廊下や出入口の幅を十分に確保することが重要です。JIS規格では手動車椅子の全幅は「70cm以下」とされていますが、直進・右左折・Uターンなどの動きを考慮すると、通路幅は最低でも80cm以上、できれば140cm以上は確保したほうが使いやすくなるでしょう。

ドアなどの建具についても、幅広で軽量かつ連動性のある仕様にすることで、介助者の動きもスムーズになります。施設全体の設計時には、こういった動線への配慮が必要です。

参考:「建築設計標準(令和2年度改正版) 第2部 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準 第3章 基本寸法等」(国土交通省)

●スイッチの操作性

照明や自動ドアなどのスイッチ類が届きやすい位置にあることは、車椅子利用者にとっての快適さにつながります。できればスイッチ類は「床から40~110cm」の範囲に設置するのが望ましく、使用者の手の届きやすさに配慮した高さ設定が重要です。

参考:「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(国土交通省)

●段差の解消

車椅子での移動を妨げる要因の一つが、床の段差です。そのため、施設内の床は可能な限りフラットにし、段差がある場合にはスロープを設置することが基本となります。スロープには手すりを設け、床には滑りにくい素材を使用することで安全性を高めましょう。

車椅子での利用を想定したドアに求められる性能

ここでは、車椅子での利用を想定したドアに求められる性能について解説します。設計時から配慮しておくことで、より使いやすい空間に近づきます。

●十分な開口幅

車椅子でスムーズに出入りするためには、ドアの開口幅を十分に確保することが重要です。具体的には、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)で定められている基準にのっとり、最低80cm以上の幅を確保することが基本です。介助者の同行や左右の操作性を考慮すると、理想は90cm以上で設計するのが望ましいでしょう。

参考:「バリアフリー法の概要について(建築物関連)」(国土交通省)

●開閉の容易さ

車椅子利用者が自分でドアを開閉するケースに配慮して、少ない力で開け閉めできるドアを選ぶようにしましょう。軽量なドア本体やスムーズに動くヒンジ構造、オートドアなどの連動システムを採用することで、車椅子利用者や介助者の負担を軽減できます。

●安全性

車椅子が敷居でつまずいたり、タイヤが引っ掛かったりすると転倒リスクが高まります。安全性を確保するためには、敷居や下レールのない上吊りタイプのドアや、段差のないフラット仕様が望ましいです。

また、急な開閉を防ぐストップ機能や静かに閉まるソフトクローズ機能があると、車椅子利用者が安心して出入りできるでしょう。

●耐久性

車椅子に対応したドアは通常より大きくなりがちで、また足置きやタイヤがドア面に接触することもあるため、耐久性の高い製品を採用することが必要です。ドアやドア枠が傷みにくく、長期間使用しても性能が落ちにくい製品を選ぶことで、メンテナンスコストも抑えられます。

車椅子での利用に適したドアの種類

車椅子での利用を考えると、開閉動作が大きくなる開き戸は不向きです。ここでは、車椅子での利用に適したドアの種類をいくつか取り上げます。

●引き戸

引き戸は、車椅子利用者に適したドアの一つです。ドアを押したり引いたりする必要がなくスライドさせるだけで開閉できるため、最小限の動作で出入りが可能となります。また開き戸と異なり、通過時にドアノブやドア自体が服や体に引っかかる心配も少ないです。

おすすめの引き戸は、DAIKENの『OMOIYARIドア』です。上吊りタイプのドアで、扉を全開にするとその状態を保持する機能が付いていることから、車椅子利用者も出入りしやすい製品です。また、ドア枠の4面が面取り加工されているため、万が一ぶつかった際の衝撃を緩和してくれます。幅広いサイズを用意しているため、広さや用途に合わせて選択できるのもポイントです。

●自動ドア

自動ドアは、車椅子に乗ったままの状態でもボタンやセンサーで簡単に開閉できるのがメリットです。またドアに直接触れる必要がないため、衛生面でも優れています。開閉動作の負担がなく、介助なしでもスムーズに出入りしやすいドアです。

ただし、設置場所によっては下レールが車椅子の通行を妨げることがあるため、床面がフラットのタイプやバリアフリーレールの選定が必要になります。加えて、導入費用は引き戸より高くなることが多いため、採用を検討する際は建築主の予算に合うかを確認しましょう。

車椅子での利用に配慮したドアの施工事例

ここでは、車椅子での利用に配慮したドアを採用したDAIKENの施工事例を紹介します。実際の採用イメージを参考に、設計にお役立てください。

※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。

●星の森デンタル/愛知県

病院のドア

【使用製品】
室内ドア:おもいやりドア<ミルベージュ柄>
天井造作材:グラビオルーバーUB 直付式<ミルベージュ柄>
 

病院のドア

【使用製品】
壁材:グラビオUB<ミルベージュ柄>
室内ドア:おもいやりドア<ミルベージュ柄>

「星の森デンタル」の施工事例を見る

●医療法人智健会 イーストメディカルクリニック/埼玉県

設計・施工:株式会社 乃村工藝社

おもいやりドア特注品

【使用製品】
室内ドア:おもいやりドア(特注品)<トープグレー柄/ネオホワイト柄>
 

おもいやりドア特注品

【使用製品】
室内ドア:おもいやりドア(特注品)<トープグレー柄>

車椅子利用者に配慮したドア選びが大切

車椅子での利用が想定される施設の設計においては、ドアの幅や操作性、安全性、耐久性など多角的な視点からの配慮が欠かせません。スペースや用途に応じたドアを選ぶことで、車椅子利用者だけでなく、介助者や高齢者にとっても安心・快適な空間がつくれます。

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