建築に求められるユニバーサルデザインは?導入の視点や建築資材の例

ユニバーサルデザイン

近年、公共施設から一般住宅に至るまで、幅広い場所で「ユニバーサルデザイン」が導入されています。年齢や性別・国籍・身体能力を問わず、誰もが使いやすい空間づくりをすることは、多様化を受け入れる社会を実現するための重要な課題です。

この記事では、建築におけるユニバーサルデザインの定義や、バリアフリーとの違い、そして導入する際のポイントを紹介します。

建築におけるユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインを取り入れた建築は、誰もが安全で快適に利用できる空間を提供することを目的としています。ここでは、建築においてのユニバーサルデザインの定義やバリアフリーとの違い、ユニバーサルデザインを構成する7つの原則について解説します。

●ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍や身体能力などの違いに関係なく、誰もが使いやすい製品や建築設備、わかりやすい情報提供などを目指す概念です。ユニバーサルデザインの考え方は、すでに日常生活の中で多くの施設や製品に取り入れられています。

例えば、公共施設や商業施設においては、認識しやすい案内表示の採用や、段差のない動線計画、手すりの設置など、さまざまな工夫がなされています。一般住宅においても、ユニバーサルデザインを導入するメリットは大きく、年齢やライフステージの変化に応じた、柔軟で暮らしやすい住空間の実現が可能です。さらに、自治体によってはユニバーサルデザインに関する指針や建築ガイドラインを策定しています。

●ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い

ユニバーサルデザインとバリアフリーは、どちらも誰もが平等に社会参加できる環境の整備を目指している点では共通していますが、対象者や目的に違いがあります。

【バリアフリー】
高齢者や障がい者などが、日々安全に移動し、生活できるように環境を整備する考え方です。「障がいによりもたらされるバリア(障壁)を取り除く」ことを目的とし、段差などの物理的な障害だけでなく、社会的・心理的・制度的な障害も取り除くという意味が含まれています。

【ユニバーサルデザイン】
年齢・性別・国籍・障がいの有無に関係なく、はじめからバリアをつくらず、誰でも利用しやすいように、都市や生活環境をデザインする考え方です。対象者が高齢者や障がい者に限らない点が、バリアフリーとの大きな違いです。
参考:「バリアフリーとユニバーサルデザイン」(総務省)

ユニバーサルデザインが医療施設に求められる理由 バリアフリーとの違いとその概念

●ユニバーサルデザインの7原則

ユニバーサルデザインには、基本的な考え方を示す7つの原則があります。建築家やデザイナー、技術者、研究者などで構成されたグループによってまとめられ、ユニバーサルデザインを理解し、方向づけや実践に役立てるためのガイドラインとして活用されています。

【ユニバーサルデザイン7原則】

  • ① だれにも公平に利用できること(公平性の原則)
    ② 利用者に応じた使い方ができること(柔軟性の原則)
    ③ 使い方が簡単ですぐわかること(単純性と直感性の原則)
    ④ 使い方を間違えても、重大な結果にならないこと(安全性の原則)
    ⑤ 必要な情報がすぐ理解できること(認知性の原則)
    ⑥ 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使えること(効率性の原則)
    ⑦ 利用者に応じたアクセスのしやすさと十分な空間が確保されていること(快適性の原則)

    出典:「都立建築物のユニバーサルデザイン導入ガイドライン」(東京都財務局)

建築にユニバーサルデザインを取り入れるメリット

建築にユニバーサルデザインを取り入れることで、誰もが安心して過ごせる空間を提供できます。安全性・利便性の向上により、施設の利用率の向上も期待できるでしょう。

●誰にでもわかりやすい

視覚・聴覚・触覚を通して情報が伝わるように工夫することで、国籍や使用言語、年齢にかかわらず、建物の利用方法や目的地への行き方などを理解しやすくなります。例えば、直感的に理解できるピクトグラムや、音声案内、点字による情報提供を組み合わせることで、より多くの人が利用しやすい環境を整備できます。

●誰もが利用しやすい

ユニバーサルデザインは、年齢や身体能力などに関係なく、誰もが快適に建物や施設を利用できる環境を目指しています。例えば、多目的トイレや自動ドア、休憩スペースなどの設置により、車椅子の利用者や高齢者、小さな子どもを連れた家族も快適に過ごせるようになります。

●安全性が向上する

ユニバーサルデザインに基づくことで、転倒や事故のリスクを減少させ、利用者が安心して過ごせる環境をつくれます。例えば、ゆとりを持たせた通路幅の確保、段差のないエントランスや通路、滑りにくい床材の採用や手すりの設置などにより、幅広い利用者層に対して安全性を担保できます。

建築にユニバーサルデザインを導入する際の視点の例

ユニバーサルデザインを導入する際は、建物のあらゆる場所に、きめ細かな配慮と工夫が必要です。外部空間・内部空間・生活空間ごとに、導入時の視点を見ていきましょう。

●建物の外部空間

建物の外部空間では、出入口や敷地内の通路、駐車場、階段、駐輪場や車路などのアクセス経路の安全性と利便性が重要です。誰もが安全かつスムーズに移動できるか、迷うことなく入口にたどり着けるかなどが、設計する際に押さえておくべきポイントです。

例えば、以下の点に注意すると、あらゆる人がスムーズに移動できる外部空間を実現できます。

【ユニバーサルデザインの例】

通路

・車椅子使用者や歩行者がすれ違いやすい十分な通路幅を確保する
・段差をなくす
・手すりを設置する
・傾斜路の勾配は緩やかに設計する

敷地出入口

・アプローチ道路からわかりやすい位置に出入口を設置する
・出入口や経路は、見通しをよくし、サインが確認しやすいようにする
・段差をなくす

車路・駐車スペース

・駐車場の位置や経路の誘導がわかりやすいように表示する
・駐車場から建物の出入口までが遠回りにならないように動線を計画する

駐輪場

・自転車と歩行者の動線を分け、接触のリスクを軽減する

 

●建物内部の移動空間

建物の内部空間では、目的の場所までの動線がわかりやすく、スムーズに水平・垂直移動できることが求められます。車椅子での移動が可能なエレベーターの設置や、階段利用者のための手すりの設置、スロープの設置など、誰もが安全に移動できるように配慮することが重要です。

【ユニバーサルデザインの例】

建物の出入口

・訪れた人がわかりやすい位置に設置する

受付

・出入口から受付までの誘導をわかりやすくし、移動距離を短くする
・受付カウンターは、立位・座位のいずれの場合でも利用しやすい高さにする

廊下

・車椅子でのすれ違いが可能なように、十分な幅を確保する
・移動経路に休憩スペースを設ける
・段差をなくし、スムーズに移動できるようにする

各室出入口

・扉の有効幅に余裕を持たせる
・できるだけ引き戸を採用し、開閉時の負担を減らす

 

●生活空間

生活空間においても、ユニバーサルデザインの視点は欠かせません。建物の規模や多様な利用者に対応した、きめ細かな配慮を心がけて設計することが大切です。

【ユニバーサルデザインの例】

トイレ

・出入口の幅に余裕を持たせる
・取手を握りやすく、施錠しやすくする
・手すりを設置し、車椅子使用者用・男女共用・個別機能を備えたトイレをバランスよく配置する

客室

・出入口の有効幅に余裕を持たせる
・床に段差を設けず、毛足の長い絨毯は避ける

浴室・更衣室

・段差を設けず、滑りにくい床材を使用する
・手すりを設置する
・車椅子使用者が操作しやすい扉を採用する

客席

・車椅子で利用できる客席を確保し、建物出入口からアクセスしやすい場所に配置する
・文字情報・音声情報・集団補聴設備を設置する

操作ボタン・スイッチ

・立位・車椅子のいずれでも届く位置・高さに配置する
・操作しやすい大きさ・形状、スイッチのオン・オフがわかりやすいものを選ぶ

出典:「都立建築物のユニバーサルデザイン導入ガイドライン」(東京都財務局)

ユニバーサルデザインに配慮した建築資材の例

安全性を高め、誰もが使いやすい空間を実現するために、一例としてDAIKENのユニバーサルデザインに対応した建築資材を紹介します。

●滑りに配慮した戸建用床材『おもいやりフロアⅤ』

おもいやりフロアⅤ』は、特に高齢者や介護が必要な方などが安全・安心に移動できるように設計されています。

製品特長

具体的なメリット

UV抗菌耐摩耗防滑マットコートを施している

・滑りにくさに配慮し、歩行のしやすさを向上させる

メンテナンス性に優れている

・ワックスがけが不要で、水濡れに配慮し、汚れが取れやすいため、お手入れの手間を軽減できる

※キャスター付椅子の使用による傷や凹みがつきにくい製品です。金属製キャスターや球状キャスターの使用はお控えください。

●利用者の安全に配慮した室内ドア『おもいやりドア』

室内ドアは、空間と空間を仕切るだけでなく、利用する人の安全を守るための重要な役割を担っています。『おもいやりドア』は、従来の室内ドアの安全性を見直し、自閉機能や『ラクラクローズ』機能(※)、指挟み防止配慮など、誰もが安心して使えるように工夫された製品です。扉のデザインや開閉形態・枠種類やオプションが充実しているため、使う人に寄り添った快適な室内空間をサポートします。
※『ラクラクローズ』機能:扉が閉まる直前にブレーキがかかり、衝突や跳ね返りを防止。扉をゆっくり静かに引き込みます。扉を開けるときと閉めるときの両方に作動します。

ユニバーサルデザインの導入で誰もが快適に過ごせる空間づくりを

ユニバーサルデザインは、すべての人にとって暮らしやすい環境を実現するための重要な考え方です。施設設計や建築の際には、利用者の立場に立ち、安全性・利便性・快適性に考慮した空間づくりが求められるため、さまざまな状況に対応可能な設備の導入が不可欠です。

DAIKENでは、ユニバーサルデザインに配慮したさまざまな建築資材を提供しています。詳細については、以下のカタログをご確認ください。
「公共・商業施設用製品カタログ 2024-25」を資料請求する
「2024-25 高齢者施設用・医療施設用製品カタログ」を資料請求する

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