老人ホームの設計における内装の考え方│ポイントや注意点、施工事例

老人ホーム

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

老人ホームの内装設計では、バリアフリー性能を確保するだけでなく、入居者の自立支援や心理的安定、介護スタッフの業務効率化まで踏まえた空間設計が求められます。特に近年は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームなど施設の種類が多様化しており、入居者層や要介護度に応じた設計対応が重要になっています。

この記事では、老人ホームにおける内装の役割や設計の考え方、押さえておきたいポイント・注意点、実際の施工事例についてわかりやすく解説します。

老人ホームにおける内装の役割

ここでは、老人ホームにおける内装の役割について解説します。内装は入居者の行動や心理面に与える影響も大きいため、設計時に配慮する必要があります。

●自立を促し身体機能を守る

過度なバリアフリー化や全自動化は、利便性が高い一方で、歩行や立ち上がりなどの日常動作の機会を減らし、入居者の筋力や意欲の低下を招く可能性があります。そのため、老人ホームの内装では、安全性や快適性の確保に加え、入居者の自立を促す視点が重要です。

具体的には、廊下や共有スペースの視線の先に、食堂やリビングなどの目標物を配置することで、自然な移動を促せます。また、ドアの開閉や椅子からの立ち上がりといった日常動作を無理なく行える仕様にすることで、生活リハビリとして身体機能の維持につなげられます。

●精神の安定を促す

老人ホームでは、閉鎖的な環境や生活の変化により、入居者が孤独感や不安を抱えやすく、見当識(場所や時間の認識)の低下につながるケースもあります。そのため、内装設計では精神的な安定を促す視点が欠かせません。

例えば、階数やエリアごとにアクセントカラーを変えることで、現在地を直感的に把握しやすくなり、入居者の混乱軽減につながります。また、天然木や植物など自然素材を取り入れると、施設特有の無機質な印象が和らぎ、心理的な緊張やストレスの軽減を図れます。光や素材感への配慮も、快適な居室環境の形成に有効です。

●スタッフの介助と見守りを効率化する

視認性や動線計画が不十分な場合、介護スタッフの肉体的・精神的な負担が増加し、ケア品質にも影響を及ぼします。そのため、現場のオペレーションを踏まえた内装計画が求められます。

例えば、スタッフステーションから居室、共有スペースへの移動距離を短縮することで、巡回や介助を効率化できます。また、廊下や共有部の死角を減らしたレイアウトにすることで、少人数体制でも入居者の異変に気づきやすくなり、安心・安全な運営につながります。

老人ホームにおける内装設計の考え方

ここでは、老人ホームにおける内装設計の考え方について解説します。老人ホームは「住まい」としての性質を持つため、過ごしやすさへの配慮が欠かせません。

●ユニバーサルデザインを設計に落とし込む

老人ホームの内装は、特定の人にとっての不便を解消するバリアフリーデザインにとどまらず、ユニバーサルデザインを意識する必要があります。ユニバーサルデザインとは、誰もが利用しやすい環境を目指すデザインのことを指します。そのため、老人ホームにおいては、高齢者や要介護者に加え、介護スタッフや来訪者などにとっての使いやすさにも配慮が必要です。

また「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」に基づく、建築物移動等円滑化基準への適合努力義務もあるため、通路幅やトイレの数、浴室の広さなどは基準以上を意識した設計が望まれます。

参考:
バリアフリー法の概要について(建築物関連)」(国土交通省)

●光と音の環境を整える

加齢に伴う視力・聴力の低下は、入居者に不安やストレスを与えやすく、不眠や認知機能の低下につながる場合があります。そのため、光や音の設計に環境工学の視点を取り入れ、心身の状態を整えやすい空間を形成することが求められます。

例えば、時間帯に応じて照度や色温度を調整することで、生活リズムを維持しやすくなります。また、居室や共有スペースでは、遮音材・吸音材の活用により騒音ストレスを軽減し、入居者同士や介護スタッフとの会話がしやすい環境づくりにつなげることが重要です。

●「施設らしさ」を抑えて住まいとしての質感を追求する

無機質で管理的な印象を与える内装は、入居者の自尊心や安心感を損ない、自宅のようなリラックス感を妨げる要因となります。そのため、老人ホームの意匠設計では、安全性や機能性だけでなく、「住まい」としての質感を高める視点も必要です。

例えば、木目や緑など自然素材の風合いを活かすことで、心理的な緊張を和らげやすくなります。また、医療機器を収納内部に納めたり、手すりをレザー調の意匠にしたりするなど、細やかな工夫により生活空間としての快適性や特別感を高める方法も有効です。

老人ホームを住宅のような、心地良い空間にするための設計の工夫は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ確認してみてください。

「脱施設化」 自宅のように感じられる高齢者施設づくり

●必要な機能・性能から建材を選定する

老人ホームの内装設計では、必要な機能・性能を踏まえた建材選定が重要です。施設内では転倒事故の防止と、車椅子や介護用ベッドの移動による摩耗対策、清潔さの確保といった要素を両立する必要があり、安全性・耐久性・メンテナンス性を総合的に考慮しなければなりません。

具体的には、床材は滑りにくさと適度なクッション性を持ち、車椅子での走行にも耐えられる性能が求められます。また、こまめな消毒に対応できる耐薬品性や、抗菌機能を備えた建材を選定することで、清潔で安心感のある環境づくりにつながります。

老人ホームの内装設計におけるポイント・注意点

ここでは、老人ホームの内装設計におけるポイントや注意点について解説します。施設特有の課題に対して、適切な設計が求められます。

●換気計画と消臭対策を工夫する

排泄臭や調理臭が施設内に滞留すると、不潔な印象を与えるだけでなく、入居者の満足度や介護スタッフの労働意欲にも影響を及ぼします。そのため、汚物処理室や共用トイレ、浴室など臭気源となる場所では、局所排気を強化した換気計画が求められます。

また、アンモニアなどを吸着・分解する機能を持つ消臭建材を壁や天井に採用することで、臭気の拡散を抑えやすくなります。換気設備だけに依存せず、機能性建材との組み合わせで多角的に対策することが重要です。

●サイン(案内表示)の視認性を高める

老人ホームでは、入居者が安心して移動できるよう、サイン(案内表示)の視認性を高めることが重要です。特に弱視者にとってはコントラスト感度の低下、認知症患者にとっては見当識の減退により、現在地や目的地を把握しづらくなる場合があります。

そのため、背景色と文字色のコントラストを明確にし、遠くからでも認識しやすいデザインを採用する必要があります。また、文字だけでなくピクトグラム(図記号)を併用することで、直感的に理解しやすくなります。適切なサイン計画は入居者の自立した移動を支援するとともに、スタッフが案内対応に割く時間の削減にもつながります。

●建具の有効開口幅とクリアランス(ゆとり)を確保する

老人ホームの内装設計では、建具の有効開口幅とクリアランス(ゆとり)の確保が欠かせません。車椅子が通行できるだけでなく、ストレッチャーの搬送や介助者の動きまで考慮した寸法計画が求められます。

特に居室や浴室、共有スペースの出入口では、ストレッチャーの回転半径を踏まえ、コーナー部分や前室に十分な旋回スペースを設けることが必要です。また介助スタッフが入居者に寄り添いながら安全に移動できるよう、一般的な基準以上の有効開口幅を確保することで、介助負担の軽減や事故防止につながります。

●コンセントの配置と容量を精査する

老人ホームの内装設計では、コンセントの配置と電気容量の精査も重要です。施設内では、介護用ベッドやナースコール、空調設備、医療・介護機器などが同時に稼働するため、容量不足による停電リスクへの対策が求められます。

また、必要な位置にコンセントが不足すると、延長コードの使用が増え、転倒事故や断線の原因となる可能性があります。そのため、居室内や共有スペースごとに機器の利用シーンを具体的に想定し、適切な配置計画を立てることが重要です。これにより、安全性だけでなくスタッフがスムーズに作業しやすい環境づくりにもつながります。

老人ホームの内装設計の事例

ここでは、老人ホームの内装設計事例を紹介します。事例を通して、介護施設に求められる空間づくりのポイントを把握しましょう。

※製品は採用当時のものです。生産中止品も掲載されている場合があります。

●ライフナビひびきの/福岡県

ライフナビひびきの/福岡県

【採用製品】
室内ドア:OMOIYARIドア〈トープグレー柄〉

ライフナビひびきの/福岡県

【採用製品】
防音ドア:防音ドアWタイプ[G30]片開き〈トープグレー柄〉
※代替推奨品は下記になります。

施主:株式会社芳野ケアサポート
設計:シコウ+デ+サイン一級建築士事務所.
施工:株式会社廣松組

●介護付有料老人ホーム チャーム 水元公園/東京都

介護付有料老人ホーム チャーム 水元公園/東京都

【採用製品】
収納:飾り棚(造作家具)(特注品)
カウンタートップ:メラミンポストフォームカウンター(特注品)

施主:株式会社チャーム・ケア・コーポレーション

●よっつ葉レトロ館/愛知県

よっつ葉レトロ館/愛知県

【採用製品】
室内ドア:OMOIYARIドア〈ダルブラウン柄〉

オーナー:株式会社フォーリーフ

●いきいきガーデン桂木/青森県

事業主:株式会社いきいき
設計:株式会社稲見建築設計事務所
施工:株式会社西村組

●パートナーガーデン長野/長野県

事業者:ケアパートナー株式会社
設計・施工:大東建託株式会社

●ソエルガーデン北柏/千葉県

事業者:ケアパートナー株式会社
設計・施工:大東建託株式会社
施設タイプ:Ⅰ型

老人ホームの内装設計は快適性と機能性の両立が重要

老人ホームの内装設計では、安全性や快適性に加えて、入居者の自立支援や精神的な安定、介護スタッフの働きやすさまで含めて総合的に検討することが重要です。機能性と住まいとしての質感を両立し、長期的な運営を見据えた空間づくりを意識しましょう。

DAIKENでは老人ホームの内装設計に役立つ資料をご用意していますので、気になる方はぜひご請求ください。

老人ホームの内装設計に役立つ「2025-26公共・商業施設向け製品 高齢者施設カタログ」を資料請求する

また、建築士や設計関係者向けの会員制情報サイト『D-TAIL』に登録することで、施設設計のヒントとなるセミナーのアーカイブ配信が視聴可能です。老人ホームの設計に関するセミナーのアーカイブ配信も行っていますので、ぜひ登録の上ご視聴ください。

高齢者施設の設計に役立つセミナー一覧
施設設計・建材選びに役立つプロ向け情報サイト『D-TAIL』に登録する