施設のイメージアップにも!木質空間が利用者に与える印象を施設別に徹底調査
日本の建築と切っても切り離せない関係にある木材。有名な寺社仏閣はもちろんのこと、木材を活用した空間に安らぎを感じたことはありませんか?
近年では、国立競技場など、天然木の造形を活用した有名建築家の作品が注目を集めたり、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」が施行されるなど、SDGsの観点からも木質化への注目は高まっています。
では、実際に木質空間の中で、人はどんなイメージを受け取るのでしょうか?アンケート調査により、リアルな声を集めてみました。
施設別に木質空間のイメージを調査!
今回は、「治療・療養する空間(医療施設、高齢者施設など)」「働く空間(オフィス、コワーキングスペースなど)」「学ぶ空間(学校、幼稚園、保育施設など)」という3つの空間について、木質化した空間とそれ以外の空間、どちらを利用したいかをアンケート調査しました。
その結果、どの空間でも実に半数以上の人が「木質化した空間」を選択。つまり、木質化した空間は、どのような利用場所であっても「利用してみたい」と思わせる魅力があることがわかりました。
では、空間別に結果を見ていきましょう。
●治療・療養する空間について
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
病気やケガの治療など、体に不調を抱えている人や高齢者が多く訪れる「治癒や療養する空間」については、63.4%の人が「木質化した空間を利用したい」と回答しました。
これは、その他2つの空間と比べて、最も木質化した空間が求められる結果となっています。
医療施設や高齢者施設は、癒やしや安らぎが求められる場所であるため、木質化した空間の温かみや、リラックスできるイメージがマッチしたのかもしれません。また、木材が自然由来ということで、体に優しいイメージが治療・療養する空間にふさわしいと感じたのでしょう。
では、実際の印象はどのようなものになるのでしょうか。
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
最も大きな印象としては「落ち着く、安心する」が選ばれ(※)、次いで「リラックスできる」「目に優しい」が続きました。
※「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」を合算して計算
病気やケガの治療には不安がつきまとうもの。その際、治療するための空間が無機質な印象だと、どうしても暗い気持ちになってしまいます。そのため、木の持つ温かみや、穏やかで優しいイメージをより強く感じるのかもしれません。
また、「診察・治療の際の不安が軽減される」や、「次の通院も安心して行くことができる」など、通院の不安に対してもよい効果を感じている人が半数以上いるようです。
ただ、医療施設や高齢者施設の場合、どうしても衛生面への配慮が必要になり、木材では不安を感じる事業者の方も多いかもしれません。
しかし、木材自体にはアンモニアなどの悪臭成分を吸着する消臭効果や、抗菌効果もあることが林野庁から発表されており、医療施設への利用には、むしろ向いている面があります。
参照:林野庁「木材・木造建築物関係のハンドブック 2章 木材・木造建築物の環境への効果」
また、消毒ができる、耐薬性能を持った天然木突板フローリングなどもあり、より安心して木材利用を進めることも可能です。
●働く空間について
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
働く空間については、56.8%の人が「木質化した空間を利用したい」という結果に。治療・療養施設ほどではありませんが、仕事の場面でも、木質空間の癒やしやリラックス効果を活用したいと考えている人が多いようです。リラックスした環境で仕事をすることで、生産性が高められることを期待しているのかもしれません。
では、実際の印象も見ていきましょう。
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
ユーザーが抱く印象は、「治療・療養する空間」同様、「落ち着く、安心する」が第1位に。次いで「目に優しい」「リラックスできる」が続きました。
働く空間ということで、気分が落ち着く=集中力が高まると考えている人も多いのではないでしょうか。そして、「目に優しい」が多くの票を集めている点において、PCやスマホが中心の現代の働き方が感じられます。
また、「集中力が高まり積極的に仕事に取り組もうと思う」「再訪問したくなる」「会議がはかどる」についても半数以上を占めています。
この結果から、オフィスを木質化することで、従業員は「働きたくなる・集中力を高める」環境で働くことができるといえそうです。
弊社が実施した実証実験でも、木質化により業務へのモチベーションアップなどの効果を見ることができました。詳しくは以下の記事をご覧ください。
⇒「【実証実験】シェアオフィスの個室ブースの内装木質化」
また、事業者側としては、従業員や求職者に対して採用ブランディングや離職防止の効果を高めることができ、オフィスに付加価値を与える効果もあるといえそうです。
●学ぶ空間について
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
続いて、学ぶ空間については「木質化した空間を利用したい」と考えている人が54.7%でした。学びに関しては、「木育」という言葉もあることから、木との相性がよいと考えられます。林野庁でも、木材や木製品と触れ合うことで、木材のよさや意義を学んでもらうという観点で木育を推進しています。
参照:林野庁「木づかい運動でウッド・チェンジ!」
また、自然素材と親しんでほしいと考える保護者も多いのではないでしょうか。
では、具体的にどのような印象を持つのでしょうか。
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
学ぶ空間に関しては、「目に優しい」が第1位で、「ぬくもりを感じる」「リラックスできる」が続く結果になりました。
木が持つぬくもりや、リラックス効果を感じる人が多いことから、働く空間と同じく、落ち着ける空間が勉強への集中力アップに繋がると考えている人が多いことがわかります。また、「目に優しい」が最多であることから、親としては子どもの視力にも気を配りたいのかもしれません。
「また、教育方針に共感できる」「入学したい(させたい)・入園させたいと感じる」についても高評価を得ていることから、内装を木質化することで、施設への好印象を持ってもらえることに加え、運営方針への賛同など、運営団体そのもののイメージアップにも繋がる可能性もあります。
ここまでは施設別に木質空間が与える印象について調査してきました。
木材を活用した空間は、全体的に利用者に対してよい印象を与えることがわかってきましたが、近年では積極的に地元の木材を活用する動きも活発です。
木質空間で使用されている木材の産地によって印象が変わるか、実際に調査を行いました。
内装木質化は地元の木材を利用することでも印象が変わる?
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
地元の木材を利用していることについて、よい印象に変わると答えた人は、総計で約7割に上りました。(※)
※「良い印象に変わる」「どちらかと言えば良い印象に変わる」を合算して計算
その具体的な理由も見てみましょう。
※20~50代の男女528人に実施したインターネット調査より。(調査期間:2024年5月23日~5月28日)
最も多かったのは、「地域産業への貢献を感じるから」という結果に。地元の木材を利用することで、地域活性化に繋がると感じる人が多いのでしょう。
次いで「品質がよいと感じるから」「SDGsへの貢献を感じるから」が続き、地元の木材の印象のよさ、SDGsへ関心の高さがわかります。
木材の伐採・加工は、金属やコンクリートなどの材料と比べ、製造時にかかるエネルギーが少ないため、エコマテリアルとされています。さらに地元の木材を利用することで、資材運搬のエネルギーも抑えられ、より脱炭素化に効果的だといわれています。
つまり、地元の木材の使用は、地域の活性化とSDGs、2つの観点でとてもよい取り組みだといえるでしょう。
以下の記事では、地域産材の活用のポイントについてまとめています。ぜひ併せてご覧ください。
- ―国産材・地域産材に関する記事―
・事例から学ぶ! 地域産材を活用した施設設計のポイント
・地域活性化に繋がる国産木材活用のすすめ 構造材に固執しない木材活用
木質空間は人に、自然に、施設によい影響を与える
ここまで、木の持つ力について、調査を元にご紹介してきました。
結果として、木質化した空間は、その空間を利用する人、運営する企業、そして環境と、多方面に対してよい効果をもたらすことがわかりました。
・利用者のメリット
集中力アップによる作業効率の向上、リラックス効果
・事業者のメリット
施設のイメージアップや、社会的評価のアップなど、ブランディング強化
・自然環境のメリット
「第二の森林」として地球温暖化抑止、SDGsに貢献
人・事業者・自然と、多方面にメリットのある木質化。設計の選択肢として、木質空間を取り入れてみてはいかがでしょうか?
おすすめ製品