【第1回】 若手税理士が教えるビジネス経営ガイドライン「事務所経営における正解とは?」

ビジネス経営ガイドライン 設計事務所の経営

2024.02.13

中小企業が抱える2大経営課題は「営業・販路開拓」と「人材」です。実際、私もお客様である経営者の方から「営業・販路開拓」と「人材」について相談を受けることが多いです。私自身も、公認会計士・税理士として会計事務所を独立開業して3年目になりますが、「営業・販路開拓」と「人材」は常に課題ですし、設計事務所とは置かれた境遇や経営環境は共通点が多いのではないかと考えています。本連載では、そういった共通点に着目しながら、独立開業した若手税理士事務所経営者の目線で設計事務所の経営についてお話します。

  • 執筆者

  • 野島 正敏 氏
  • クリアビュー公認会計士・税理士事務所
    代表
    野島 正敏 氏
    慶應義塾大学在学中に公認会計士試験合格。大学卒業後 PwC 税理士法人に 8 年勤務し、日系上場企業の税務顧問や、オーナー企業の事業承継業務などに従事。2021 年に会計事務所を立ち上げ、「企業の成長と継続に貢献する」ことをミッションに、会計・税務の面から企業の経営をサポートしている。

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建築士と税理士の共通点

まず、建築士と税理士の仕事の共通点についてお話したいと思います。以下のような点が特に、建築士と税理士の仕事の面で共通していると考えられます。

●新規顧客開拓(営業)の経験がほとんどない、または得意ではない
これが「営業・販路開拓」が経営課題として上位に挙がる理由になっていると思われますが、大手事務所から独立した方は特に、独立してすぐに自身の営業力の無さを痛感してしまうのではないでしょうか。
大手事務所に所属していれば、営業・広報の部署があり、組織としての営業力を活かした集客を行うので、建築士自身は営業せずとも事務所が獲得した仕事にアサインされます。組織に所属している間は、専門家としての実務能力を中心に磨いてきたという方が多く、むしろ自身で新規顧客開拓をたくさん経験した上で独立したという方は非常に稀だと思います。
また一般的には、既存顧客や取引先からの紹介での集客が多いという点も共通しています。

●労働集約型産業で長時間労働のイメージ
最近は規制が厳しくなり改善が進んでいるようですが、私も新人の時代には繁忙期はタクシー帰りや休日出勤は当たり前でした。会計業界でも近年のDX推進、AI技術の活用により業務効率化が飛躍的に進んでいますが、法令の複雑化や会計監査の手続きの増加などにより、依然として長時間労働は常態化しているのではないでしょうか。

●職業的専門家(プロフェッショナル)としての仕事への誇りとこだわり
みなさん大変な努力をして難関試験を突破し、厳しい下積み時代を経て今の仕事に就かれていると思います。その経験から、仕事への強い想いがある方が多いのではないでしょうか。
建築士さんであれば、自身の創造力を以って建物を設計し、お客様を感動させることに喜びと誇りを持っているのではないでしょうか。私自身も会計士・税理士として、企業への会計・税務の支援でお客様に喜んでいただくことと、その社会的役割への誇りを持って仕事をしています。...