輻射式冷暖房とは?仕組みや向いている施設、メリット・デメリット

輻射式冷暖房

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。

輻射(ふくしゃ)式冷暖房とは、輻射(放射)熱の原理を利用して、空間の体感温度を調整する冷暖房方式です。温度の高い部分から低い部分へ熱が移動する性質を活用し、冷暖房装置から放出される赤外線(熱)などの電磁波が、人体や室内の物体に作用することで、暖めたり冷やしたりします。

そもそも「輻射」とは、物体を介さず電磁波によって熱が伝わる現象を指し、冬場の窓際で感じる冷えや、焚火の暖かさ等がその代表例といえます。一般的な送風式よりも快適性の向上が期待できることから、近年では医療・福祉施設や教育施設、オフィスなど、多様な施設で導入が進んでいます。

この記事では、輻射式冷暖房の仕組みや設置方法、メリット・デメリットなど、施設の設計で空調設備を検討する際に知っておきたい情報をまとめました。

輻射式冷暖房の仕組み

輻射式冷暖房は、輻射パネルから放射される熱エネルギーを利用して、室温を調整する空調設備です。熱源方式には「冷温水式」と「空気式(全空気式)」があります。

冷温水式は、室外機で生成した冷水・温水を輻射パネルに循環させて温度を調整する仕組みです。一方で空気式は、空調機で冷やしたり、暖めたりした空気をダクト経由で輻射パネルに送り込み、輻射熱により室温を整えます。

輻射式冷暖房の設置方式

輻射式冷暖房の設置方式には「自立式」「壁式」「天井式」「床式」などがあり、建築条件や用途に応じて、適切なタイプを選択する必要があります。ここでは、それぞれの設置方式の特徴を解説します。

●自立式(パーテーション型・両面型)

「自立式」は間仕切りやリビング、階段下などに自立する輻射パネルを設置する方法です。パネルの両面から放熱することで、輻射効果を両面から得られるのがメリットです。主に冷温水式を採用しています。

●壁式(壁付け型・片面型)

「壁式」は壁面に直接輻射パネルを取り付ける方式で、設置面積が少なく空間設計の自由度が高いのが特徴です。ただし、壁内結露を防ぐため、壁側に断熱処理を施したり、断熱材を内蔵したパネルを用いたりする必要があります。熱源は冷温水式が主流です。

●天井式

「天井式」は天井に輻射パネルを設置する方式です。冷房時は冷気が降下するため、温度ムラが少なくなります。暖房時は部屋全体を均一に暖められますが、足元はやや冷えやすい点に注意が必要です。

主な種類としては、有風タイプ(輻射パネル+送風)と無風タイプ(輻射パネル単体または除湿機併用)があります。天井式には冷温水式が多く用いられます。

●床式

「床式」は床下に輻射パネルを設置する方法で、床面を通して部屋全体の温度を快適に保ちます。暖かい空気は床面から天井方向に上り、冷えた空気は床付近に留まるため、居住エリアを効果的に冷暖房できるのが特徴です。床式の熱源は、冷温水式と空気式どちらの製品も販売されています。

輻射式冷暖房のメリット・デメリット

輻射式冷暖房には、快適性や省エネ性といったメリットがあります。一方で、室温調整に時間がかかる点や、設置コストが高くなるといったデメリットも存在するため、設計の際には事前に比較が必要です。

●輻射式冷暖房のメリット

風が少なく運動音が静か

輻射式冷暖房は風が少ないため、ホコリや花粉、カビの拡散を抑制できます。また、スポーツ競技を行う体育館などでは、風がプレーに影響するおそれがあるため、輻射式冷暖房のような風を生じにくい空調設備が好まれます。パネル内部に風を出すための駆動部(ファンなど)がないことから、室内機の運転音も発生しにくいです。

温度ムラが起きにくい

輻射熱により床や壁、天井の温度が均一化され、設置場所との距離による暑さ・寒さの差が少なくなります。温度ムラが発生しにくいことで、暑過ぎたり寒過ぎたりするといった不快感を軽減できます。

省エネ性能が高い

ヒートポンプ方式(※)の輻射式冷暖房であれば、少ない電力で効率的に室温調整が可能です。一般的なエアコンに比べて電力ロスも少なく、長時間稼働し続けるような使い方をしても電気代の大幅な増加を防げます。

※電力を用いて空気などに含まれる熱エネルギーを汲み上げ、移動させることで冷暖房効果を得る仕組み。消費する電気エネルギーよりも大きな熱エネルギーを効率よく得られるため、省エネ性能が高いとされる。

清掃の手間が少ない

輻射式冷暖房は風が出ない製品が多く、そうした製品にはフィルターがありません。そのため、ホコリの掃除など普段のメンテナンスは、柔らかい布やスポンジで拭き取る程度で済みます。

●輻射式冷暖房のデメリット

温度の調整に時間がかかる

輻射式冷暖房は、空間全体を快適な温度にするまでに時間がかかるため、短時間で室温を変えづらいのがデメリットの一つです。夏や冬は常時稼働が基本となり、部分的な温度調整には対応できないこともあります。

導入費用が高額になりがち

輻射式冷暖房は専門的な設計と施工が必要なため、通常のエアコンよりも初期費用が高くなる場合があります。ただし、先述したようにランニングコストは低く抑えられるため、導入の際は初期費用とランニングコストを含めたトータルコストで検討しましょう。

輻射式冷暖房が向いている・向かない施設は?

輻射式冷暖房は均一な温熱環境を整えやすい空調設備ですが、施設の種類や使用条件によって向き・不向きがあります。導入を判断する際は、空間の広さや熱損失の程度を考慮することが重要です。

●輻射式冷暖房が向いている施設・場所

<輻射式冷暖房が向いている施設・場所の例>

  • ・商業施設
  • ・体育館
  • ・保育園や幼稚園
  • ・介護老人福祉施設
  • ・病院
  • ・一般住宅 など

商業施設や文教施設のように広い空間を持つ施設では、輻射式冷暖房のメリットを最大限生かせます。具体例としては、商業施設や体育館、保育園・幼稚園、介護老人福祉施設、病院、一般住宅などが挙げられます。

●輻射式冷暖房が向かない施設・場所

<輻射式冷暖房が向かない施設・場所の例>

  • ・火を使う調理場
  • ・換気回数が多い飲食店
  • ・外気の侵入が多いロビーや玄関 など

火を使う調理場や換気回数が多い飲食店、外気の侵入が多いロビーや玄関など、熱損失が大きく温度が不安定になりやすい場所では、輻射式冷暖房の効果を十分に発揮しにくくなります。こうした場所に輻射式冷暖房を導入する場合は、遮熱や断熱、開口部対策などの工夫が必要です。

輻射式冷暖房『ユカリラ』の特長と導入実例

ここでは、DAIKENが取り扱う輻射式冷暖房『ユカリラ』の特長と導入実例について解説します。

●輻射式冷暖房『ユカリラ』の特長

ユカリラ』は、対流式(エアコン等)、伝導式(床暖房等)、輻射式の特長をバランスよく組み合わせた冷暖房システムです。具体的には、床下空間や輻射パネルにエアコンの風を送り込み、床部分を暖めたり冷やしたりする仕組みです。これにより、室内全体の温度ムラを抑えつつ、直接温冷気が当たる不快感や乾燥を軽減できます。

全空気式床輻射冷暖房システム ユカリラ

●『ユカリラ』の導入実例

成美保育園/東京都

成美保育園

【採用製品】

全空気式床輻射冷暖房システム:ユカリラ YFPタイプ

園の移転新築にあたり、大型エアコンの問題を設計関係者に相談したことが採用のきっかけでした。導入前には設計関係者の薦めで『ユカリラ』を導入した保育園を見学し、心地よさを実際に体感されています。

使用感としては「風の影響がなく床に布団を敷いてもホコリが気にならない」「細かな温度調整がすぐに部屋全体にいきわたり適温になる」と、好評でした。

「成美保育園」の施工事例を確認する

柴田町総合体育館/宮城県

柴田町総合体育館

【採用製品】

全空気式床輻射冷暖房システム:ユカリラ YGSタイプ

「スポーツを通じたまちづくり」「防災体育館」というコンセプトに、床輻射式空調がマッチしたことが『ユカリラ』の採用につながりました。災害時に避難場所として使用する場合に、間仕切りがあっても冷暖房効果が保たれることも採用の大きなポイントです。

「柴田町総合体育館」の施工事例を確認する

そのほかの「ユカリラ採用事例」はこちらから

輻射式冷暖房を取り入れて快適空間を設計

輻射式冷暖房は、赤外線などの輻射熱を利用して、室内の体感温度を均一に調整する冷暖房方式です。設置方式は「自立式」「壁式」「天井式」「床式」があり、用途や空間条件に応じて選択が必要です。体育館や文教施設、商業施設など、多様な施設に対応するため、空調方式を検討する際は、輻射式冷暖房を選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。

DAIKENの輻射式冷暖房『ユカリラ』の採用を検討している場合、ぜひ下記のパンフレットをご覧ください。

「ユカリラ総合パンフレット」を資料請求する

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