建築(建物)に求められるSDGs実現への取り組みは?取り入れる効果やポイントを解説

SDGs

持続可能な社会の実現が求められる現代、建築業界においてもSDGsの実現が重要な課題となっています。建物の設計や建築プロセスが環境や社会に与える影響は非常に大きく、建築士や設計関係者にとって、SDGsに沿った取り組みは避けて通れないテーマです。

この記事では、これからの建築がどのように社会や環境に貢献していくかを考えるヒントになるよう、建築がSDGs達成に果たす役割や、具体的な取り組みのポイントを紹介します。

より良い社会を目指すSDGsとは?建築業界にできること

SDGsと建築(建物)の関係

SDGsの実現において、建築は重要な役割を果たします。ここでは、建築と特に関わりの深いSDGs目標11、12、13、15について解説します。

●SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」との関係

建築は、サステナブル(持続可能)かつレジリエント(強靭)な、住み続けられるまちづくりに不可欠です。都市の成長や環境問題に対応しつつ、人々が安全で快適に暮らせる建物やインフラの整備が求められます。

例えば、環境に配慮した設計や効率的なエネルギー利用、そして災害に強い建築物を作ることが、持続可能な都市の実現に貢献します。耐震性や耐火性を備えた建物は、自然災害から人々の生命や財産を守り、安心して住み続けられるまちづくりの一助となります。

●SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」との関係

建築において、資源の効率的な利用は環境負荷を大幅に軽減します。再利用可能な資源を用いたり、建物のリノベーションやコンバージョンを進めたりすることで、資源の浪費を防げるのです。

リノベーションとは、既存の建物を改修し、付加価値を加えることを指します。また、コンバージョンは、建物の用途を変更して再利用することで、新たな価値を生み出す建築手法です。

例えば、古いオフィスビルをリノベーションして集合住宅にすれば、都市部の住宅供給問題に対応しつつ、無駄な資源消費を抑えられます。また、使われなくなった倉庫などの施設を商業施設にコンバージョンすれば、資源の浪費を防ぎながら地域の経済発展につなげることができます。

●SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」との関係

建築業界には、気候変動への対策として再生可能エネルギーの導入や、建材のリサイクルを積極的に行うことが求められます。太陽光パネルの設置や、製造から廃棄・再利用の過程の中で環境への負荷に配慮した建材を選択すれば、温室効果ガスの排出削減にも寄与できるでしょう。

●SDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」との関係

建築に使用される木材も、持続可能な管理が必要です。過剰な伐採を避け、適切に管理された森林から供給される木材を使用することで、環境保全に貢献できます。

また、地域産材を活用した木造建築物の建築は、地域経済の活性化にも寄与します。木造建築は環境にやさしく、持続可能な建築手法として再評価されているのです。木材を適切に管理しながら利用することで、自然との調和を保ちながら、持続可能な建築を実現できます。

建築にSDGsを取り入れる効果

建築にSDGsを取り入れることは、環境や社会、経済に多くのメリットをもたらします。ここでは、具体的な効果を3つの側面から解説します。

●環境保護に貢献できる

SDGsに基づいた設計は、自然環境への負荷を減少させるための有効な手段です。資源の節約や再生可能エネルギーの活用、高効率設備の導入により、建物のライフサイクル全体で環境保護が実現できます。

例えば、リサイクル素材を使用することで廃棄物の削減が可能となり、資源の再利用が促進されます。これにより、資源の消費を抑え、循環型社会の形成にも寄与できるのです。環境負荷を軽減しつつ、質の高い建築を実現することが求められます。

●ランニングコストを抑えられる

サステナブルな建築は、建物の運用コストの削減にもつながります。耐久性の高い建材や省エネルギー技術を導入すれば、長期的にメンテナンス費用や光熱費を抑えることが可能です。

例えば、高性能な断熱材と太陽光発電を組み合わせることで、建物のエネルギー消費を大幅に削減し、ランニングコストを低減できます。これにより、建物のライフサイクル全体での経済的なメリットを享受でき、クライアントにも高い付加価値を提供できるでしょう。

●企業イメージの向上につながる

SDGsを取り入れた建築は、企業の社会的責任(CSR)を果たす手段としても効果的です。

SDGsを推進する企業として認知されればブランド力が強化され、市場での競争力を高めることが期待できます。サステナブルな建築に積極的に取り組み、環境や社会に配慮した姿勢が評価されることで、消費者や投資家からの信頼獲得につながるでしょう。

また、これらの取り組みは、将来的なパートナーシップの構築にもつながり、持続可能なビジネスモデルの確立にも寄与します。

建築業界がSDGsに取り組むポイント

建築業界は環境や社会に与える影響が大きいため、SDGsの実現に向けた取り組みが求められます。以下に、建築業界がSDGsに取り組む際のポイントを紹介します。

●SDGsの目標と建築業界の役割を理解する

SDGsは全部で17の目標を掲げており、建築業界はその中でも特に環境や資源の消費に関わる目標に大きく影響します。

例えば、前述した目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標12「つくる責任、つかう責任」は、建築士や設計関係者が積極的に取り組むべき課題です。

これらの目標を理解し、実際の設計プロセスに反映させることが、持続可能な今後に向けた一歩となります。持続可能な設計の基盤を築くことが、建築に関わる者としての責任といえます。

●SDGsに配慮した建材を積極的に採用する

持続可能な建築を実現するためには、使用する建材が重要です。建築士や設計関係者は、地球環境にやさしい建材を選ぶことが、SDGsの実現への貢献になります。

設計の際は、施主の希望をしっかりとヒアリングした上で、SDGsを考慮した建材を提案することを心掛けましょう。常に最新の技術や材料について情報収集を行い、提案力を高めることが大切です。

●建築業界の他社の事例を参考にする

他社のSDGsに対する取り組みを参考にすることは、自身が関わるプロジェクトにも役立ちます。例えば、グリーンビルディング認証(※)を取得した建築事例やZEB・ZEHなど、成功したプロジェクトから学ぶことで、提案の幅や質の向上につながるでしょう。
※グリーンビルディング認証とは、建物の環境負荷低減や快適性向上といった環境・社会への配慮について第三者が性能を保証するものです。

SDGsの実現に向けて適切な建材選びを

建築業界がSDGsに取り組むことは、持続可能な社会の実現に大きく貢献します。環境にやさしい設計や建材の選択は、自然環境への負荷を軽減し、エネルギー消費を抑えるだけでなく、ランニングコストの削減や企業の社会的責任(CSR)の向上にもつながります。

SDGsに配慮した建築は未来の都市づくりに欠かせない要素であり、建築士や設計関係者はその実現に向けて積極的に関わっていくことが求められます。持続可能な建築を実現するために常に最新の情報を収集し、自身の提案力を高めていきましょう。

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