病院の待合室を患者にとって快適な空間にするには?設計のポイント

※掲載している画像は、記事の内容をわかりやすくするイメージであり、実在する製品や実現するものとは異なる場合があります。
病院や診療所の待合室は、患者が診察を待つ間に過ごす重要な空間です。快適な待合室を設計することは、患者の不安やストレスを軽減して満足度を向上させるだけでなく、病院全体の印象やイメージアップにも大きく影響します。
本記事では、病院の待合室をより快適な空間にするための設計のポイントを解説します。待合室の設計次第で患者の満足度が変わるだけでなく、病院の評判や信頼性にも影響を与える可能性があるため、ぜひ参考にしてください。
病院の待合室を快適な空間にすることによる効果
病院や診療所の待合室を快適な空間にすることで、主に3つの効果が期待できます。それぞれ、理由を含めて解説します。
●患者の不安やストレスの軽減
病院や診療所の待合室にいる患者は、診察を待つ間に不安やストレスを感じやすいものです。自身の体調不良による不安に加え、周囲の騒音や病院特有の消毒液の臭いなどが、患者に対してさらなる不快感を与える要因となります。特に長時間の待ち時間が発生する場合、これらの要素が積み重なり、患者の心理的負担が増してしまうかもしれません。
しかし、待合室の環境を快適に整えることで、来院した患者の不安やストレスを軽減する効果が期待できます。例えば音環境を整えて静かで落ち着いた待合室にしたり、病院特有の臭いを抑える建材を取り入れたりすれば、患者にとって快適な空間を実現できます。
●患者の満足度の向上
待合室での不安やストレスが軽減されると、患者が病院に対して抱く印象も大きく変わる可能性があります。快適な待合室であれば、診察までの順番待ちの時間を苦痛に感じにくくなり、患者の満足度が向上するでしょう。
病院に対する満足度が高まれば、何かあったら再び同じ病院を受診しようという意識が生まれ、かかりつけの病院として選ばれやすくなります。特に、慢性的な疾患を抱える患者や定期的に通院が必要な患者にとって、待合室の快適さは通院先を選ぶうえで大切な要素の一つです。
●病院のイメージアップ
快適な待合室は病院自体のイメージアップにもつながります。実際に利用した患者が待合室の環境について良い印象を持てば、それが口コミやSNSなどを通じて広まり、病院の評判向上につながるかもしれません。
病院のイメージが良くなることで、新規患者の増加やリピーターの確保にもつながります。地域の人々に「この病院は待合室が快適で過ごしやすい」という認識が広まることで、自然と集患効果が期待できるでしょう。そのため、病院の設計段階から待合室の環境づくりに力を入れることは、経営的な観点から見ても重要な施策の1つと言えます。
患者が病院の待合室で快適に過ごすための設計のポイント
患者が待合室で快適に過ごすためには、環境にも配慮することが大切です。いくつか具体的なポイントを紹介します。
●プライバシーに配慮する
待合室では、患者同士の視線が交わらないように配慮することが重要です。プライバシーの確保は、患者が落ち着いて診察を待つために欠かせない要素であり、ストレスの軽減にもつながります。
例えばソファやベンチなどの家具の配置を工夫すれば、対面にならない座席の並びを作れます。壁沿いに一方向に向くように座席を設置すると、他の患者と視線が合いにくくなるでしょう。
さらに、パーティションなどの仕切りの設置も有効な手段です。適度な高さの仕切りを設置すれば、開放感を損なわずにプライバシーを確保することができます。特に、受付や診察室の前の待機エリアでは診察を待つ患者が並ぶ場合が多いため、間仕切りのあるスペースがあると、安心して過ごせる環境になります。
●音環境を整える
病院の待合室では、話し声や電話の音、子どもの泣き声、診察室からの音漏れなど、さまざまな音が発生します。こうした音が過剰に響くと、患者のストレスを増大させる要因となり、診察を待つ時間がより長く感じられてしまう可能性があります。そのため、待合室の音環境を適切に整えることが重要です。患者がリラックスして診察を待つためには、適度な静寂が確保されていると良いでしょう。
特に診察室からの音漏れは、プライバシーの観点からも防止が必要です。対策としては、診察室のドアに高い遮音性を持つ製品を採用する方法が効果的です。例えば、DAIKENの『音配慮吊戸・片引』は一般的な吊戸よりも高い遮音性のある製品で、採用することで診察室からの音漏れを軽減させる効果が期待できます。
また、診察室と待合室を仕切る壁に遮音性の高い『遮音パネル18.5』のような下地材を採用すれば、音漏れをさらに小さくすることができます。
ほかにも、音の吸収効果(吸音性)のある天井材や壁材を待合室に使用すれば、音の反響を抑制できます。待合室内では人の話し声や移動音が響きやすいため、吸音性の高い建材の適切な利用が効果的です。
●空調が均一に利くように設計する
待合室内のどこに座っても室温が一定で、快適に過ごせるようにするため、空調設備の配置には工夫が必要です。温度ムラがあると、一部の患者が寒さや暑さを感じ、不快に思う原因となります。空調の設計段階で適切な風の流れを考慮し、エアコンなどの設置位置の最適化が必要です。
また、待合室の広さや天井の高さ、窓の配置なども温度分布に影響を与えます。ペリメーターゾーン(※)である窓際の席は直射日光の影響を受けやすく、夏場には暑くなりがちです。そのため、窓には遮熱フィルムやブラインドを設置し、日差しを調整する工夫が求められます。
※外気や日射などによって温度の変化が生じやすい場所のこと。
●照明と自然光をバランス良く取り入れる
適度な自然光を取り入れつつ人工照明の明るさを調整すると、居心地の良い待合室を実現できます。自然光は人の心を落ち着かせ、ストレスを軽減する効果があります。ただし、直射日光が強すぎる場合は、ブラインドや遮光フィルム等を使用して調整し、快適な光環境を作ることが重要です。
人工照明に関しては、明るさの調整機能を持たせると、時間帯や天候に応じた適切な照明環境を実現できます。朝や昼間は自然光を主に利用し、夕方以降は温かみのある照明を取り入れれば、患者がリラックスしやすい雰囲気を作り出せるでしょう。
●色や素材の心理効果を活用する
木質空間には、温かみや安心感を与える心理効果が期待できます。そのため、待合室に木目柄を取り入れると、患者が落ち着いて過ごせる環境をつくれるでしょう。木が持つ自然な風合いや視覚的な柔らかさが、患者の緊張感を和らげ、居心地の良い空間の演出につながります。
待合室に木の雰囲気を取り入れる方法としては、DAIKENの『グラビオLA 木目柄』の採用が一例です。本製品は木目柄を再現しており、傷や水にも強いことから、メンテナンスの手間を抑えながら温かみのあるデザインを実現できます。また、『コミュニケーションタフ バイオリーフ DW』は土足に対応したフローリングで、待合室の床材にもおすすめの製品です。傷がつきにくく、消毒によるお手入れも可能(※)です。
これらの製品を活用することで、デザイン性と機能性を両立しながら、長期間にわたって快適な環境の維持が可能です。
※長年のご使用により、表面が変質を起こす場合があります。また薬品の種類や放置時間によって、変色する場合があります。
●臭い対策をする
病院特有の臭いは、患者に不快感を与える可能性があります。病院の待合室では消毒液や医薬品、人から出る体臭などさまざまな臭いが充満しやすく、これが患者のストレスにつながる場合も少なくありません。
体調が優れない状態で診察を待つ患者にとって、強い臭いは気分を悪くする原因にもなります。そのため、待合室の臭い対策は、快適な環境を実現するうえで重要な要素です。
待合室の臭い対策としては、換気をするのがわかりやすい方法ですが、消臭効果のある建材を使用するのも有効です。
一例として、DAIKENの『ダイロートン メディカルトーン』は、吸音性能と消臭機能を持った天井材で、気になる臭いを抑えつつ音環境を整える効果も期待できるため、待合室を含めた病院の空間におすすめの建材です。
また、DAIKENの『エアヘルシー』のような、空気を清浄しつつ循環させる設備を取り入れるのも効果的です。『エアヘルシー』は空気中のさまざま臭気を取り除く機能を持っており、設置した空間の空気をきれいに保ってくれます。
●キッズスペースを設ける
子どもや子どもを連れた患者が快適に過ごせるよう、待合室内にキッズスペースを設置することも大切です。キッズスペースは、子どもが退屈せずに過ごせるだけでなく、親にとっても待ち時間のストレスを軽減する効果が期待できます。なお、キッズスペースを設ける場合は、子どもが遊ぶ際の声や走り回る音が院内に響き、他の患者に負担がかからないように配慮が必要です。
待合室内にキッズスペースを設ける際は、適切な場所選びが重要です。受付や診察室の近くではなく、できるだけ待合室の一角や別室に配置すると、騒音によって他の患者に影響を与えにくくなります。
また、壁などに吸音パネルを採用すれば、音の拡散を抑えて待合室の静けさを維持しやすくなります。DAIKENの『OFF TONE(オフトーン)』は、音環境を整える効果がある吸音パネルです。さまざまなカラーバリエーションがあるため、視覚的にも楽しいキッズスペースづくりに役立ちます。
待合室は病院の印象を左右する
病院の待合室は単なる待機スペースではなく、受診の満足度に影響する重要な空間です。待ち時間が長くなるほど、患者は不安やストレスを感じやすくなるため、快適な環境の整備が求められます。患者がリラックスしやすい環境を実現できれば、病院全体のイメージ向上にもつながります。快適な待合室を設計して、病院の信頼性向上に貢献しましょう。
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