安全性を考えた病院・クリニックの廊下づくり 院内の移動をサポートし転倒リスクにも配慮

病院 廊下

高齢の入院患者の転倒・転落といった院内事故が起きやすい場所のひとつが廊下です。病院やクリニックの廊下には、病気やケガをしている人が安全に移動できるよう各種法律により幅員についての基準が定められています。
今回の記事では病院内の転倒事故対策の必要性と、病院・クリニックの廊下に関する法規制などについてお話しします。また、院内の安全な移動をサポートする内装材や設備についても解説していきます。

院内廊下での転倒リスクへの対策が必要

病院 廊下

病院では多くの患者が過ごしており、歩行が困難な方も大勢います。特に入院患者の高齢化にともない、院内での転倒・転落事故の増加が予想されます。患者が高齢になるほど転倒リスクは増加するため、多くの医療機関では院内の転倒・転落事故予防の取り組みを行っています。転倒事故はベッドサイドが最も多く、廊下・室内・トイレでの発生も多く見られます。
※参照:日本老年医学会「第52回日本老年医学会学術集会記録

病院内での転倒防止への実務的な対策が必要であるとともに、病院・クリニックでは設計において、廊下の安全性にあらためて注意する必要があります。
病院・クリニックは建築基準法で「特殊建築物」に該当する特殊な設備を持つ建築物と規定されており、避難経路の確保や内装制限の適用が求められます。また、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律であるバリアフリー法でも、出入り口に通ずる通路幅、駐車場、トイレ、廊下などのスムーズな通行・すれ違いのため、一定以上の幅が必要と規定されています。ほかにも、厚生労働省「医療法」で定められた病院・診療所の構造設備基準として、精神病床・療養病床、一般病床などにおいて室内廊下幅が規定されるなど、各種法律の基準を満たすことが条件とされています。

法律で定められた病院・クリニックの廊下の幅は?

病院 廊下

廊下幅などは建築基準法と医療法の基準を満たすことが必要で、病床の数、種類によっても基準が異なります。法律で定められている基準は次のようになっています。

●法律により求められる病院・診療所の廊下の幅
・病院(20床以上の病床を有する)
<精神病床・療養病床>片側居室 1.8m以上 両側居室 2.7m以上
<一般病床>片側居室1.8m以上 両側居室 2.1m以上

・診療所(19床以下の病床を有する)
片側居室 1.2m以上 両側居室 1.6m以上
※いずれも内法(壁の内側から内側まで)の計測
※出典:内閣府「医療法 病院の構造設備基準に関する関係法令」

病院・クリニックを設計の際、病床規模や診療科目、病床配置(片側もしくは両側)に留意し、廊下幅を決定することが重要です。
しかし、法律で定められた廊下幅を確保して設計しても、転倒を100%防ぐことはできません。高齢者や歩行困難者にとっての「歩行」は重労働であり、「足を思うように動かせない」「ちょっとしたことでもつまずく」という点を考慮し、安全に配慮した設計計画が不可欠です。

内装や設備の工夫でさらに安全に

病院 廊下

建築基準法や医療法などで規定されているのは、廊下を含んだ各所の基準寸法です。高齢者や療養者の安全性をさらに高めるために、規定の幅員に加えて内装や設備の工夫でより安全に移動をサポートする必要があります。

●安全性を高める方法
床には滑りにくい床材、壁には使いやすい手すりがおすすめです。一般的に病院・クリニックで使用される床材は耐薬品性・耐水性・耐摩耗性が高い塩化ビニル樹脂製シート床材が使用され、ノンスリップシートは滑りにくく、安全に歩行できるのが特徴です。フローリングの場合、表面加工により滑りに配慮した床材を使用するのも良いでしょう。また、防音床下地材の中には、防音性能だけでなく、転倒時の衝撃吸収性能を有しているものもあるため、下地材でのケアを考えるのも良いでしょう。

歩行をサポートする手摺は重要な設備です。高齢者の中には、手や肘を摺りながら移動される方もいるため、身体をあずけやすい広くてフラットな形状が好ましいでしょう。

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