ユマニチュードを看護に取り入れる 認知症患者との信頼関係を築き、お互いの負担を軽減!

ユマニチュード

総務省が発表した2021年の調べによると、わが国では65歳以上が人口の29.1%を占め、すでに超高齢社会となっており、認知症患者は今後も増え続けると予想されています。認知症を患っている方との接し方は介護だけの問題ではなく、高齢者と接する機会の多い医療や看護の分野でも、どのように対応するのかは大きな課題です。

そこで、注目したいのがフランス生まれのケア手法「ユマニチュード」です。ユマニチュードとはどのようなものなのか、その理念と技法、看護に取り入れることで期待される効果について解説します。また、ユマニチュードをサポートする空間づくりについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ユマニチュードとは? ケアの本質を追求

ユマニチュード

ユマニチュードとはフランス生まれのケア手法で、「人間らしくある」を意味するフランス語の造語です。ケアの本質を追求して考案され、本人の能力をできる限り使って健康の維持・向上を目指す手法を指します。つまり、本人の能力を奪わないように「本人ができることまでケアしない」というのが基本的な考え方です。

ユマニチュードを実践するためには、「4つの柱」と「5つのステップ」を理解する必要があります。

4つの柱:見る・話す・触れる・立つ

5つのステップ
ステップ1)ケアの提供を事前に知らせる
ステップ2)ケアする前に同意を得る
ステップ3)4つの柱を利用する
ステップ4)ケアに対するポジティブな感情を固定させる
ステップ5)次回のケアを約束する

これらの詳しい内容は、下記の記事でご紹介しているのでこちらをご参照ください。
「認知症ケアで注目のユマニチュードとは? 人の尊厳を守るコミュニケーション方法と環境整備」

この4つの柱と5つのステップを繰り返すことで、利用者との信頼関係を構築していくのがユマニチュードというケア手法です。

ユマニチュードを看護に取り入れた際のメリット

ユマニチュード

ユマニチュードは誰でもできるケア手法で、ケアされる人だけでなく、する人にもメリットがあります。ユマニチュードを看護に取り入れた際の具体的なメリットは以下の通りです。

・看護師と患者の信頼関係構築に役立つ

「一人の人間」として患者と接する手法なので、患者との信頼関係を築きやすくなります。反対に、もし自分が「認知症の人」や「病気の人」と一括りにした対応をされたらどうでしょうか。「本当に自分のことを思っているの?」と感じるかもしれません。つまり、ユマニチュードを実践することで、このような無意識にしていた接し方が改善され、患者から信頼を得るのに役立つのです。

・看護師の負担を軽減させる

ユマニチュードは「できることは本人にしてもらう」ので、看護師の負担が軽減するというメリットをもたらします。例えば「立つ」場面で足に全く力が入っていない状態と、本人が立とうとして少し力を入れた状態では、看護師を必要とする介助の量が大きく異なります。このように、自分でできることをしてもらうことが、看護師の肉体的な負担軽減につながります。また、ユマニチュードの実践によって、患者との信頼関係が構築できれば、精神的な負担の軽減も可能でしょう。

・離職率が減る傾向にある

看護師の負担が軽減されると、離職率の減少も期待できるでしょう。ユマニチュードは人材確保の悩みを解消するためにも有効な手段といえます。

ユマニチュードの導入で期待できる患者側の効果

ユマニチュード

ユマニチュードは患者個人を尊重することで、「話を聞いてもらえる」「看護師を信頼できる」といった安心感や自己肯定感をもたらします。また、信頼関係が構築できることで、ケアや診療の拒否を減らす効果も期待できるでしょう。さらには患者本人の能力を活かすことで、症状の緩和や回復が早まるといった効果も期待できます。

介護の分野では認知症患者の攻撃的な行動・徘徊・身体拘束が減少したという報告もあります。

このように看護でもユマニチュードを導入することで、患者・医療従事者の双方にメリットがあるのです。

ユマニチュードの実践は、スキルや知識だけでなく、環境面からも看護師のサポートとなります。例えば4つの柱の「立つ」をサポートする環境をつくるため、滑りに配慮した安全性の高い床材や、使いやすい手すりを導入するなどです。患者が立ちやすいこのような環境を確保することで、本人も能力を最大限に発揮しやすくなり、効果的なケアが提供できるでしょう。

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