午睡とお昼寝の違いは? その必要性とうつぶせ寝防止をはじめとした午睡チェック、見守り時の注意点

午睡

ほとんどの保育園で1日のカリキュラムに盛り込まれているお昼寝。保育園では午睡(ごすい)と呼ばれることも多く、乳幼児の心身を発達させるとても大切なものとされています。しかし、一方で午睡の時間には事故のリスクも潜んでおり、保育士による安全確認が欠かせません。
本記事では、保育園における午睡の必要性と適切な環境づくりについて解説します。加えて、午睡の時間が抱える事故のリスクとその防止策についてご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

午睡とは? 保育園にお昼寝の時間がある理由

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午睡とは保育園における睡眠時間を指し、子どもの健やかな成長を支える大事なものです。一般的にはお昼寝と同じ意味ですが、保育園では午睡という言葉が使われており、厚生労働省が告示している保育所保育指針では「午睡は生活のリズムを構成する要素」とされています。
午睡の目的は生活リズムを整えることや、適度な休息をとって心身ともにリフレッシュすることであり、子どもの集中力を回復させて転倒などの事故を防ぐことにもつながります。子どもにとって、午睡は心身の健康を保つためにも必要不可欠といえるでしょう。

子どもたちが快適にお昼寝できる環境とは?

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保育所保育指針には、午睡時間の長さや時間帯についての定めはありません。多くの保育園では、昼食後に2~3時間程度の午睡時間が確保されていますが、生活リズムや体力には個人差があるので適切な時間は異なるでしょう。そのため、保育士は保護者と連携を取りながら子どもの様子や体調などに合わせた睡眠時間のバランスを考えることが大切です。

併せて、子どもに心地良い睡眠をとらせるためには、保育室を快適な環境にすることが求められます。例えば、室内環境は下記のような温度や湿度に保つことが大切です。

【保育室の室温や湿度の目安】

室温……夏26~28℃/冬20~23℃
湿度……60%
※出典:こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)(令和5年5月一部改訂)7月一部修正」

また、季節や気候に合わせて衣類や掛け布団を調節することも欠かせません。子どもが眩しさを感じないように、照明を消してカーテンを引いておくのも良いでしょう。しかし、子どもの安全を守るためにも顔色の確認ができるような明るさを保つことが大切です。

子どもを安心して眠らせるためにはリラックスできるスペースの確保も大切です。例えば、子どもが寝る場所を固定して毎日同じ睡眠環境を整えれば、スムーズに眠ることができるでしょう。
同様に、一定の生活リズムや流れを作ると、子どもは安心感を持ち、眠りに入りやすくなります。保育士が側で子守唄を歌うことも、子どもの心を落ち着かせる効果が期待できるでしょう。

うつぶせ寝など、午睡中に見られる事故のリスクとその対策

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子どもにとって心身の健康に欠かせない午睡ですが、気をつけるべき事故のリスクがあります。中でもうつぶせ寝には窒息や乳幼児の突然死といった危険性があるため、定期的に子どもの呼吸と体勢をチェックすることが重要です。午睡時間には0歳が5分間隔、1~2歳児は10分間隔、3歳児以上は15分間隔のチェックが求められており、呼吸・姿勢・顔色などを記録するために、多くの保育園で午睡チェックシートが活用されています。

0~1歳児に多いSIDS(乳幼児突然死症候群)の事故を予防するためには、保育士による見守りが必要不可欠です。最近は体温や呼吸の変化を検知するためにICT(情報通信技術)システムによる午睡チェックセンサーを導入する園もあり、保育士の見守りと一緒に活用すれば、子どもがより安心して眠れる環境を整えることができるでしょう。
さらに、子どもの午睡を見守りやすい環境を作るためには、保育室の建具を変えることも有効です。例えば、保育室の扉を窓つきのものにすることで、部屋の外からもさりげなく午睡の様子を見守れるでしょう。

保育施設における午睡以外のリスクマネジメント

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保育施設内で注意すべき事故や健康被害のリスクがあるのは、午睡の時間だけではありません。保育士には子どもたちの安全を守る役割がありますが、事故は毎年全国的に発生しているのが現状です。保育園で起こりやすい事故の例は下記の通りです。

●保育施設内における事故リスクの例
・ドアに指や体を挟まれる、開閉による衝突
・室内を走りまわって人や物にぶつかる
・水はねした手洗い場で足を滑らせる
・おもちゃを誤飲する
・暖房設備によるやけど
・暖房の風による喉や肌の乾燥
・空調設備が効かないことによる熱中症や冷え性

物や人によって起こる事故もありますが、室内の不適切な温度・湿度管理による体調不良も見逃せません。例えば、室温が低いことで体温が下がると血流が悪くなり、免疫力が低下する可能性があります。また、湿度が低いと口や鼻の粘膜が乾燥し、体の防御機能が低下するおそれもあります。
関連した内容として、下記記事にて、子どもたちに増えている冷え性について詳しくまとめていますので、ぜひご参照ください。
⇒「冷え性の子どもが増加中? 幼稚園・保育施設に求められる安全な冷暖房設備

保育園は小さな子どもたちが生活しているので、事故が起きやすい環境を持った施設とも言えます。そのため、予想される危険に備えて計画を立てたり対処したりするリスクマネジメントの実施が必須です。
保育園における事故を防ぐためには、新人保育士からベテランの保育士まで、園全体でリスクマネジメントに取り組まなければなりません。経験が少ない保育士はもちろんのこと、ベテランであっても、「前は大丈夫だった」という思い込みや慣れは危険です。事故を防ぐためのマニュアルやチェックリストを使って安全対策を行いましょう。また、事故につながりそうだった出来事は、ヒヤリハットとして職員と共有します。
下記記事でも保育現場でのヒヤリハットについて詳しくまとめていますので、ぜひご参照ください。
⇒「保育現場のヒヤリハット! 子どもの1/3が遭遇する「ドア挟まれ事故」を防ぐ安全対策

保育施設の設計に当たっては、事故のリスク低減を考慮することが重要です。例えば、子どもや保育士が安全に移動できるような動線計画、死角の少ないレイアウトが必要です。また、調湿機能のある建材を使用することで快適な環境を整えることもできます。さらに、子どもの喉が乾燥しにくく肌に優しい、床から冷温風を送り出す設備の採用もおすすめです。子どもたちが健康で安全に過ごせるように、建材や設備から見直してみてはいかがでしょうか。

なお、関連した内容として、下記記事にて保育室の環境づくりについて詳しくまとめていますので、こちらもぜひご参照ください。
⇒「保育室の湿度を適正に 子どもが快適で健康的に過ごせる施設づくり

公開日:2023.06.19 最終更新日:2024.02.27

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