火の用心を合言葉に 倉庫火災を起こさないための事前対策と設備投資

倉庫火災対策

ここ数年、物流拠点の集積化が進み、大規模な倉庫が増えています。物流倉庫の集積化・大規模化は配送効率の向上などに対するメリットがある一方、いったん火災が発生すると被害も甚大になりやすいという危険性をはらんでいます。
火災は自社の倉庫だけでなく、近隣の建物や住民への被害にもなりかねないため、なんとしても防ぎたいものです。
そこで、今回の記事では倉庫火災の特徴と問題点、火災が大規模化しやすい理由について解説します。また、倉庫火災を防ぐためのポイントもご紹介しますので、どうぞ最後までお読みください。

倉庫の構造的な特徴と火災の問題点

倉庫火災対策

倉庫は一般的な建物と違い、間仕切り壁や出入り口、窓が少なく、大きな空間が広がります。また、柱や梁なども現し仕上げが多いという特徴があります。建物面積の1平方メートルあたりに対する人員も少なく、倉庫によっては可燃物を保管している場合もあります。
倉庫火災における問題点は、十分な火災対策が施されていないと、地域を巻き込む大火災につながる可能性があるということです。倉庫の設計や運営は、構造を十分に理解した上で的確な防災計画を立てることが大切だといえます。

●倉庫は荷下し・荷積に使う開口部以外の窓や出入口が極端に少ない建物

倉庫に見られる構造上の特徴として、荷積用の大きな入口(開口部)や人員の出入り口、採光を目的とした窓がありますが、その数は一般的な建物に比べて極端に少なくなっています。倉庫は住宅系に属する建物と違って建築基準法による「採光」の規定がないことから窓の少ない構造となっているのです。
倉庫建築は建築主事による「建築確認」が必要ですが、人が居住しない空間ということが前提なので、開口部や窓の設置数は必要最低限となっています。

●建物の大きさに対する人の少なさ

倉庫は荷物の保管が主な目的であることから、建物の規模に対して常駐する人は少ないのが一般的です。
初期消火の遅れの原因は、大規模な倉庫の一部で火災が発生しても火災報知器等が作動するまで気づけない人員の少なさにあるといっても過言ではありません。
火災が発生しそうな箇所や可燃物の保管時は、人の数を増やしておくなど、事前の対策も必要なのです。

●建物内部に大量の可燃物を保管

倉庫火災対策

倉庫には食料や衣類など、衣食住に関する荷物なども保管されますが、その種類は多岐に渡ります。
可燃物は第一類~第六類まで区分され、中でも第四類の可燃物は引火性液体で、250℃未満でも引火や爆発を起こします。危険度が最も高いのは特殊引火物、第一~第四石油類、アルコール類などで、危険品の倉庫における注意の基準となっています。万一火災が発生した場合は排煙設備が不十分だと倉庫内に短時間で煙が充満したり、高熱によるバックドラフト現象を起こしたりする可能性もあります。

どのような荷物を倉庫に保管するのか、荷物に対する排煙設備は十分なのか、設計段階で防災計画をしっかり立てることが大切です。

過去の事例に見る倉庫火災が大規模化しやすい理由

倉庫火災対策

倉庫火災は一般的な建物の火事と異なり、近隣を巻き込む大火災に発展する可能性があります。

【倉庫大規模火災例】

・2009年 兵庫県神戸市
鉄骨準耐火構造三階建て、延べ面積4,715平方メートルのうち3,484平方メートルが火災により焼損。消防職員1名殉職。
・2019年 東京都大田区
冷凍冷蔵庫の配管作業中による引火で、逃げ遅れた人が死傷。

倉庫の火災が大規模化しやすい理由としては、防災設備の使用方法や荷物の不適正管理などがあることを認識しておきましょう。

●防火設備の不適切な使用

大規模倉庫では「防火シャッター」等の設備を設置することが義務化されていますが、シャッター付近に障害物があって火災の際に閉鎖できなかったという事例もあります。
倉庫火災はいつ発生するかわかりません。日常的に防火設備の作動テストや、障害物の有無をチェックしておくことが重要です。

●多くの物品が高密度で保管されている

倉庫の荷物には適正な区画分けや積載量が規定されていますが、利益のために過密保管されているケースがあります。保管効率を上げるために高密度で物品を保管していたことが原因となり、火災時にスプリンクラーが作動したにもかかわらず、火元まで水が届かずに初期消火が遅れて火災が拡大し、倉庫が全焼したという事例もあります。
これは保管効率を優先するあまり、人的な原因で発生した火災といえるでしょう。

倉庫の火災予防は建物と設備の整備から

倉庫火災は局所的な被害だけにとどまらず、地域一体を巻き込む可能性もあるため、建物の設備の整備を大きく見直す必要があります。

【倉庫における火の用心 建物設備の整備方法】

・建築基準法・消防法で規定された建材の使用と区画分け、防火設備の設置
・法律で定められた防火設備の設置やレイアウト
・消防設備のスムーズな作動

人命を優先して倉庫火災を防ぐための防災計画を立て、普段から防火設備の点検と周囲の環境整備を心掛けることが大切です。
また、火災による延焼を防ぐため、建物には法的に認定された耐火機能のある外壁材の使用を検討しましょう。

recomended item

おすすめ製品