病院・クリニックのレイアウト計画には動線・裏動線が重要! スタッフの働きやすさも考慮した動線計画を

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病院・クリニックの印象は、内装デザインやスタッフの応対だけでなく、わかりやすく移動しやすいに動線になっているかによっても左右されます。
本記事では病院・クリニックの動線計画において、「患者様の利便性」と「スタッフの働きやすさ」の2つを意識し、院内の動線・裏動線を確保することの重要性と気を付けるべきポイントについてご紹介します。

病院・クリニックにおける動線と裏動線とは

院内で意識すべき動線は、患者様が使用する「患者動線」とスタッフが使用する「スタッフ動線」と「裏動線」です。
患者動線とは、来院された患者様が会計を終え、退出されるまでに通る経路を指し、スタッフ動線とは医師や看護士、受付事務などのスタッフが業務で移動する際に使用する動線のことです。裏動線はスタッフのみが使用するバックヤードでの動線です。
これらはすべて院内のレイアウト計画を考える上で重要な要素です。

●患者動線で注意すべきこと

病院・クリニックの動線で優先されるのは、患者様の利便性を考えた「患者動線」です。
来院される患者様は、何かしらの不調を抱えて医療機関を訪れます。そのため、あらゆる身体状況や年齢層の患者様が移動することを考慮して動線を計画することが重要です。不自由なく日常生活を送る人の目線で導線を設計すると、車椅子で移動される方や妊婦さんなどが行動しづらい病院・クリニックになってしまいます。
患者動線は待合室と診察室や処置室、検査室を行き来しやすいことが基本になりますので、初めて訪れる患者様でもどこに何があるのか明確でわかりやすく、広々とした動線を確保するようにしましょう。

●スタッフ動線で注意すべきこと

「スタッフ動線」を考える上で重要なことは、スタッフが業務を行う上で無駄な移動をしなくても良い設備配置にすると共に、動線中で患者様と接触する場所を必要最低限にすることです。
スタッフが診療スペース以外で患者様と接触する機会が多いと、接客対応の時間も必要以上に増えてしまい、本来優先すべき業務が滞ってしまうこともあるからです。
そのため、患者様と接触する場所は、なるべく受付や診療室や処置室、検査室などの診療スペースのみにすることが大切です。

●「裏動線」の重要性

スタッフが患者様と接触しないように、スタッフのみが利用する「裏動線」を配置することも重要です。
これによりスタッフが効率的に動けるだけでなく、患者様に忙しい様子を見せないことや、スタッフ同士の会話が聞こえないように配慮することにも繋がり、病院・クリニックに対する患者様の印象悪化のリスクを低減します。

また、院長室とスタッフルームが隣接していると、「会話が漏れるのでは」という懸念から、休憩時間中などにスタッフがリラックスして過ごせない可能性があります。多忙なスタッフのストレスをなるべく軽減するためにも、できれば院長室とスタッフルームを離して配置する配慮なども必要でしょう。

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病院・クリニックの裏動線計画のポイント

病院・クリニックにおける裏動線の重要性についてご紹介してきましたが、裏動線計画にあたり注意すべきポイントがいくつかあります。

●備品の収納・保管場所の計画

医療機器や消耗品など、多くの備品を必要とする病院・クリニックでは、そうした備品類の設置場所や収納・保管場所を設計の段階から検討しておくことが大切です。
収納・保管場所が不足してしまうと、備品を通路にも置かざるをえなくなるなど、動線や裏動線にも少なからず影響が出てしまいます。

●空間のバッファーも考慮

病院・クリニックにおいては書類や物品などの保管場所、掃除道具の収納スペース、スタッフ同士が会話するための場所など、倉庫・バックヤードに相当するような空間を確保することも重要です。病院・クリニックによっては、製薬会社や医療機器メーカーが頻繁に説明会を開くこともあるので、そういった用途が想定される場合は、空間のバッファーも考慮したレイアウト計画を行う必要があります。これらは裏動線上の活用しやすい場所に配置しましょう。

●カルテ棚もまだまだ必要

新たに開業される医療機関の95%が電子カルテを導入するというデータがある一方、令和2年時の一般診療所における電子カルテの普及率は49.9%となっており、全体的に見ると紙カルテを使用している医療機関は依然として数多く存在します。

出典:矢野研究所「新規開業クリニックにおける医療機器・サービス利用状況等に関する法人アンケート調査(2019年)」
厚生労働省「医療施設調査 電子カルテシステム等の普及状況の推移」

このため、他の医療機関とやり取りする際に紙のカルテが必要になったり、診察内容や病種によっては一部の記録を紙に印刷した上で保管したりといったことも想定されますので、カルテ棚を置くスペースもしっかり計画しておく必要があります。

動線上の防音対策も重要

動線計画のポイントについてご紹介してきましたが、患者様が医師や医療スタッフと交わす会話には、診療内容や病気の状態、今後の通院などに関わる家族との関係性といった他人に聞かれたくないプライベートな内容が多々含まれています。
そのため、院内の動線上の防音対策もしっかりと行う必要があります。

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居室や廊下の遮音性を高める工夫としては、可能な限り隙間をなくす、壁や天井の下地に遮音性能が高い材料を採用するなどが挙げられます。また、開口部となるドアも音漏れがしやすい部位ですが、隙間をふさぐシャッター装置や気密パッキンを備えた遮音性が高いタイプもあります。患者様が出入りする診察室などへの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

病院・クリニックの内装デザインやスタッフの接遇で好印象を与えることが出来たとしても、院内の動線計画や防音対策が不十分で患者様に不快な思いをさせてしまってはそれらの努力も台無しになってしまいます。病院・クリニックの設計の際には、動線・裏動線の在り方をしっかりと検討するとともに、動線上の防音対策についても意識しておきましょう。

動線と導線の違いについては下記の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
「動線と導線の違いとは  家事動線や作業動線は「動線」、百貨店では「導線」!?」

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