特養(特別養護老人ホーム)における尊厳の保持と自立支援を目指したユニットケアとは?

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超高齢社会が続く我が国では、今後も高齢者施設で介護を受けながら暮らす方が増えると予想されています。

高齢者施設で暮らす方の中には、病気や障がいの影響により体が自由に動けない方も珍しくありません。体が自由に動けないと、個人の尊厳が傷つく状況におちいりやすくなります。そのような状況を避けるために介護の現場では、介護を受ける人の尊厳の保持が重要視されているのです。

本記事では入居者の尊厳の保持と自立支援を目指し、近年、特養や老健(介護老人保健施設)で導入が進むユニットケアについてご説明します。加えて、環境づくりをサポートする建材についても言及しますので、ぜひご覧ください。

ユニットケアとは? その特徴は?

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ユニットケアとは、それぞれの利用者が自分の個性やペースで生活できるように支援する介護手法です。介護が必要な状態でも、ごく普通の生活を送ることが「その人らしい暮らしにつながる」と注目されています。

ユニットケアの特徴は、入所者を原則として10人以下のグループに分けて、少人数の入居者とユニット専属の介護スタッフが生活を共にすることです。専属の介護スタッフがいることで以下の2つのメリットがあります。

・入所者とスタッフが馴染みやすくなる
・スタッフは利用者のことを把握しやすくなる

またユニットケアの施設の特徴は、各利用者の個室と他の利用者やスタッフと交流するための共有スペースがあることです。自分だけのプライベート空間と共有空間が分かれていることで、尊厳を保持しやすい環境がつくりやすくなります。

これらの特徴からユニットケアの施設は、個別ケア(※)を提供しやすい高齢者施設といえます。 ※個別ケアとは、利用者個人の個性やニーズに対応した介護のこと

厚生労働省 老健局の調べによると、2020年における介護老人福祉施設のユニットケア導入率は47.1%でした。
国は2025年に特養のユニットケア導入率70%を目指しています。今後は特養に限らず老健などでも導入する施設が増加する見込みです。
※参考:厚生労働省 老健局「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進①

ユニットケアが尊厳の保持につながる理由

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ユニットケアは入所者の尊厳の保持、自立支援に役立つとされています。しかし、従来の介護施設よりも、なぜユニットケアが尊厳の保持につながるのか疑問に感じる方もいるでしょう。

従来の介護施設では、介護する側が効率的にケアできる集団ケアを行うのが一般的でした。集団ケアとは、入居者のそれまでの生活リズムとは関係なく、施設のスケジュールどおりに生活を送ることです。

例えば7時に起床し7時半に朝食、昼食は12時で14時からレクリエーション、18時に夕食といった具合です。

集団ケアは効率的なケアを提供できる一方で、高齢者からすると「これまでどおりの生活」が送れなくなります。

●ユニットケアは個別ケアで尊厳を保持できる

ユニットケアは個別ケアを提供することで、従来の集団ケアの課題を解決し、入所者の尊厳を保持できます。

例えば集団ケアにありがちな多床室ではなく、個室で入所者のプライバシーを確保している点です。プライバシーの保護は、尊厳の保持の基本ともいえるほど重要なポイントです。

また入所者が少ないため、一人ひとりのペースに合わせた生活も可能で、入所前と同じような生活リズムで生活することもできます。

さらに介護スタッフは利用者の状態をきめ細かく見て、自立支援につながる援助ができるのも特徴です。そのため、集団ケアからユニットケアへ移行すると、ADL(日常生活動作)の向上が期待できます。

(財)医療経済研究機構が実施したユニットケアに関する研究においても、個室・ユニット化をすることが入所者に様々な影響を及ぼすことが示されています。たとえば、6人部屋にいる入居者は、その多くが長時間ベッドの上にいてお互いの交流を避けてしまうケースが見られました。一方で個室にいる入居者には、部屋に自分の家具や日常生活品を持ち込み、絵や写真を飾るなどの個人的なスペースを作ったり、ベッドから離れて他人と交流を促す効果が見られるなどの結果が報告されています。

ただしユニットケアは、介護スタッフと入所者の関係性が深くなりやすい反面、過剰な介護で入所者の尊厳を傷つけないような配慮も必要です。

自立支援にも配慮した安心安全な環境づくり

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ユニットケアの環境づくりは安心安全に加えて、自立支援にも役立つように配慮するのがポイントです。基本的なバリアフリー設備は、設置方法や種類などの工夫次第で利用者が自分でできることを増やせます。

例えば手すりを途切れないように設置したり、ドアを車イス利用者や障がいがある方でも開閉しやすい吊り戸にしたりといった具合です。

手すりが途中で途切れてしまうと、手すりを使えば歩ける方も自分で行けない場所ができますし、開閉しにくい戸では、自分の部屋に自分で入りづらくなり、活動しよう、という気持ちをふいにしてしまう可能性があります。

また個室を、より自分の空間として活用してもらうために、収納を設置するのも良いでしょう。部屋を片付けたり、おしゃれを楽しんだりといった、生活意欲の向上に役立つはずです。

今回紹介したように、特養を中心にユニットケアの導入が進んでいます。しかしそもそも特養って何?という方もいるでしょう。そのような方は下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
⇒「特別養護老人ホーム(特養)とは?入居条件や特徴について

なお、どのような高齢者施設があるのか知りたい方は下記を参考にしてください。
⇒「高齢者施設の「特養」「老健」「サ高住」の特徴と違いについて

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